有限会社 宮崎参協グループ 代表 細野修二
宮崎県児湯郡川南町 母豚:460頭 取材日:2021年12月22日
宮崎県児湯郡川南町、国道10号線沿いにたたずむお肉屋さん「さんきょうみらい豚本店」。店内にずらっと陳列された「さんきょうみらい豚」は、川南町・都農町の3戸の生産者によって生産されている。精肉をはじめ、餃子やハンバーグといった加工品も充実しており、その品数に驚かされる。ショーケースに並ぶサンドイッチやメンチカツなどの惣菜は、華やかな見た目とどこか落ち着く優しい味が老若男女問わず多くの人に愛されている。客足が途絶えない賑わいに、このお店が地域に欠かせない存在になっていることがわかる。
①子どもたちの味蕾に恥じない豚肉を届けるー『さんきょうみらい豚』誕生のきっかけは? きっかけは先代・中瀬邦芳さんの声掛けです。中瀬さんは本当にエネルギーに溢れた方で、「子どもたちに安心して食べてもらえる豚肉をつくりたい」「僕が思う美味しい豚肉をつくれば必ずうける」とおっしゃっていました。私にも同じ想いがあり、お互いにそこを目指しましょうということで、中瀬さんの熱い想いに賛同した3人の生産者で「参協グループ」がスタートしました。平成12年ということは…もう22年経ちますね。 ーブランド名『さんきょうみらい豚』の由来は? 最初は「生産流通・販売店・そしてお客様が参加、協力し、美味しい豚肉を届けよう」という“参協運動”をグループで謳っていました。ちょうどその頃、中瀬さんがたまたまテレビ番組で見た“味蕾細胞”というワードに、これだ!と思ったそうです。”味蕾”とは、舌にある味細胞の集まりで、食べ物の味を感じる器官です。つまり、味蕾のおかげで人はおいしさを楽しむことができます。これらのワードを合わせて『さんきょうみらいとん(参協味蕾豚)』が誕生し、『子どもたちの味蕾に恥じない豚肉を届ける』という想いが込められています。 ②飼料にとことんこだわるー飼料について教えてください! 美味しい豚肉を届けるために、まずは飼料中の「とうもろこし」を抜きました。豚肉は「脂身」が命だと思っています。とうもろこしは消化率も良く、家畜の飼料にはよく使われていますが、「脂身」には邪魔な存在です。そこで中瀬さんが代替品として注目したのが「マイロ」でした。「マイロ」は要求率も悪く、高価なため、経営の足を引っ張ります。しかし、豚肉の味が劇的に違いました。 ー「マイロ」のどのような特徴が脂身に影響するのでしょうか? まずは、脂身の色です。とうもろこしは黄色いため、どうしても脂身に黄色味が出てしまいます。しかし、マイロは白いため、脂身が純白になり見た目が全然違います。また、とうもろこしは要求率が良い分、どうしても脂身が緩くなってしまいますが、マイロはしっかりとした脂身をつくってくれます。 ーしかし、経営面で見ると厳しいのでは…? 良いものを使えば美味しい豚肉をつくれますが、経営面を考えるとやはり厳しいです。中瀬さんが亡くなる前、最後に相談したことが「消化率の良い加熱飼料に変えてもいいですか」ということでした。加熱飼料に変えると、要求率も良くなり、飼料代も改善されました。飼料の中身は変わっていないので、味には問題ありませんでした。このような変化はありましたが、飼料の内容は約20年間変わっていません。 ー飼料は変えていないのに年々品質が良くなっているのはなぜでしょうか? やはり環境が大きいと思います。病気を入れないこと、これで豚の太りも変わってきます。例えば、敷地外に出荷場を作り、外部車両が農場に入ることはありません。外から入れないないことを徹底しています。 ③地元で食べてもらうー「さんきょうみらい豚本店」をオープンしたきっかけは? 川南町と都農町で生産していますが、さんきょうみらい豚を販売している場所は宮崎市内の「スーパーまつの」さんだけでした。やはり、生産している場所=地元で食べていただきたいという想いはずっとありました。 そんなときに”口蹄疫”が発生したんです。スーパーに迷惑をかけるわけにはいきませんので、一日でも早く豚を戻さなければと必死でした。無事に復活した際には、スーパーまつのさんで一番に復活祭をしていただき、大変感謝しています。しかし現実は厳しく、取り扱っていただける場所はなかなかありませんでした。 そうこう悩んでいるときに目をつけたのが”真空パック”でした。その当時、真空パックの加工品はあまり出回っていませんでしたので、ふるさと納税に出したところ大好評だったんです。最初は事務所の隅で加工していたんですが、追い付かなくなり部屋を借りて…という感じです。 一方で、引き続き販売先を探して走り回っていました。大阪の阪急の料理長さんを訪ねたこともありましたね。その方に「細野さん、さんきょうみらい豚は宮崎で有名なんですか?」と言われて、あっ…と思いました。もしかして宮崎では誰も知らないんじゃないか?宮崎と言えば「さんきょうみらい豚だよね」と言ってもらえるようにしなければと強く思いました。 最初の頃はガソリンスタンドの跡地という印象が強く、お店だと気づいてもらえなかったのですが、改装してからは認知していただけるようになり多くのお客様に足を運んでいただけるようになりました。 ー「養豚業」と「お店の経営」には違った難しさがあると思うのですが… 直売所をするにあたって私たちが重要としているのが、”セットで売り切る”ということです。どうしても部位によって需要が異なり、人気の差があります。需要がないからといって余った肉を廃棄することはできませんので、スーパーさんにもセット(全部位)で卸しています。もちろん売れる部位だけをくれという要望もありますし、セットを売り切ることがどれだけ難しいかわかります。スーパーさんに難題を出している以上、私たち(直売所)もセットで売り切らなければなりません。そこは守らなければならないと思っています。 ーそういった理由もあって、餃子やハンバーグといった加工品が充実しているのですか? そうですね。加工品が充実していかないとセットで売り切るというのは無理なんです。少しずつではありますが、年々商品は増えています。お店にはパートさんも含めて10人の従業員さんがいますが、商品の案はほとんど従業員さんが出してくれて、試作を重ねて販売に至っています。来年もとっておきの新作が出る予定ですので、楽しみにしていてください♪
ー最後に、今後の展望を教えてください!
農場は安心して後継者に任せています。販売の方では、コロナが落ち着いたら、量販店に行きたいですね。そのためにパンフレットを一新したりと準備を進めています。定期的に肉質検査もしていますが、どんどん良くなっています。まだ、消費者の方にこの良さを上手く伝えることができていないもどかしさもありますが、飼料メーカーさんをはじめ多くの方のお力を借りながら頑張っているところです。
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