田中牧場 田中栄一
熊本県 菊池市 経産牛:65頭、肥育牛:30頭、子牛:30頭 取材日:2024年1月31日
牛たちの健康を第一に
記者「田中さんの牧場で自分の牛の状態に点数をつけるなら、何点ですか?」
田中さん「私たちの牧場での牛たちの状態は、全体的に70点くらいかなと思います。なぜ70点かというと、一番の自慢は、牛たちが比較的清潔に保たれている点です。常に清潔さを保つことで、牛たちの健康を守り、病気のリスクを減らし、牛たちの快適さの確保に努めています。」 記者「プラス30点を得るためにはどのような工夫や改善が考えられていますか?」 田中さん「私たちは、受胎率の向上に注力しています。具体的には、発情周期が不明瞭な牛が少なくなるように管理を徹底しています。空胎日数を短縮し、分娩間隔を最適化することで、生産性を向上させ、牧場全体のパフォーマンスを高めることを目指しているんです。このような綿密な管理により、結果的に牛乳の生産量を増やし、牧場の収益性を高めることを目指しているんです。」 リラックスと栄養の融合
記者「他の牧場とは異なる、特別な育て方をしている点があれば教えてください。」
田中さん「独自の取り組みとして、私たちは牛たちに音楽を聴かせています。音楽をBGMのように流すことで、牛たちがリラックスできるように心がけています。牛は非常に敏感な生き物で、周囲の環境変化に対してすぐに反応します。たとえば、雷が鳴ったり、工事の音がしたりすると、牛たちはすぐにそれを察知し、ストレスを感じやすいんです。だからこそ、穏やかな音楽を流すことで、そのような外部からのストレスを軽減しようとしています。」 記者「牛が感じるストレスにどのように対処していますか?」 田中さん「牛たちが感じるストレスを最小限に抑えるために、日常的に彼らがリラックスできる環境を作ることが重要です。音楽はその一環として非常に効果的で、特に近くで雷が鳴ったり、大きな音がしたりするときに、牛たちが落ち着いて過ごせるようにしています。また、音楽を流すことで、牛たちの心地よい状態を保つことにもつながります。私たちは、牛たちが快適に過ごせる環境を提供することで、ストレスによる影響を最小限に抑えることを目指しています。」 記者「快適さを保つために、具体的にどのような対策を講じていますか?」 田中さん「快適さを確保するために、私たちは牛舎の風通しの良さや、牛床の乾燥を重視しています。風通しを良くすることで、夏場の暑さ対策として効果的であり、牛床を乾燥させることで、牛たちがベタベタすることなく清潔な環境で休めるようにしています。これらの対策は、牛たちがストレスを感じることなく、健康的に過ごせるようにするためのものです。快適な環境を提供することは、牛たちの健康だけでなく、生産性の向上にも直接的につながるため、非常に重要な取り組みなんです。」 記者「その他、牛たちが快適に過ごせるようにするために心がけていることはありますか?」 田中さん「牛たちが快適に過ごせるようにするためには、日々の細かな気配りが必要です。例えば、気候や天気の変化に応じて、牛舎内の環境を調整します。寒い日は防寒対策を強化し、暑い日は風通しを良くして熱中症を防ぎます。また、牛床の清潔さを常に保つことで、乳房炎などの病気の予防にも努めています。これらの取り組み全てが、牛たちがストレスなく健康的に過ごすための基盤となっています。」 誠心誠意に全力投球
記者「座右の銘はありますか?」
田中さん「私が日々心に留めているのは、「誠心誠意」です。この言葉は、どんな時も誠実さをもって全力を尽くすことの大切さを示しています。現代の社会では、経済状況が不安定で何が起こるか予測が難しい時代です。そんな中で生きていくためには、仕事はもちろんのこと、人との関わりにおいても、誠実さと真摯な姿勢が非常に重要になってきます。この精神を持って日々を送ることで、どんな困難も乗り越えられると信じています。」 記者「誠心誠意を大切にする理由をもう少し詳しく教えてください。」 田中さん「誠心誠意という言葉は、単に仕事に対する姿勢だけではなく、人生のあらゆる面での基本姿勢を示しています。現在のように不確実性が高い時代では、この誠実さが人との信頼関係を築き、さまざまなチャンスを引き寄せる鍵となります。以前は形式的な関係や表面的なやり取りでも成果を出せたかもしれませんが、今は人々が心の奥底からの誠実さを重視するようになりました。誠心誠意を持って接することで、仕事だけでなく人間関係においても、より深い信頼と絆を築くことができるのです。」 ビタコーゲン
牛のエサをTMRで混ぜて与えているため通常は消化が悪いそうです。
そのため消化のサポート役としてビタコーゲンを使用していると話していました。
Writer_Y.Eguchi
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有限会社ミルン牧場 横尾文三
佐賀県 佐賀市 搾乳牛:25頭 子牛:8頭 取材日:2024年1月23日
味わい深き低温殺菌牛乳
記者「横尾さんの牧場で、35年にわたってこだわり続けていることは何ですか?」
横尾さん「35年間、私は低温殺菌牛乳にこだわってきました。アメリカやフランスなど海外では一般的ですが、日本ではまだ珍しいですね。この方法で、牛乳本来の風味や栄養を守りながら、安全にお客様に提供することに尽力しています。」 記者「日本の牛乳産業と低温殺菌の関係について教えてください。」 横尾さん「戦後、日本の牛乳産業は急速に発展しましたが、低温殺菌の技術は導入されにくかったです。私たちは65度30分の低温で牛乳を処理し、高温殺菌がもたらす栄養価の損失や風味の変化を最小限に抑えています。」 記者「低温殺菌に固執する理由は何ですか?」 横尾さん「低温殺菌は牛乳の自然な風味や栄養素を保ちます。高温殺菌に比べて、消化しやすく、カルシウムなどの栄養素の吸収も良いんです。消費者にとって最も健康的で美味しい牛乳を提供するため、この方法を選んでいます。」 記者「牛乳の質について、どのように保証していますか?」 横尾さん「品質保証には細心の注意を払っています。低温殺菌により、牛乳の新鮮さと栄養価を保ちながら、体細胞数を30万以下に抑え、品質の高い牛乳を安定して供給しています。これにより、消費者に信頼される製品を提供できると確信しています。」 雪深き牧場の発酵の奇跡
記者「横尾さんが特におすすめする商品は何ですか?」
横尾さん「私たちの牧場では、特にビタコーゲンという発酵促進剤をおすすめしています。これは、動物にとって良い菌がブレンドされたもので、消化を助け、臭いを減少させる効果があります。実際、これを使用しない時期があったのですが、牛の調子が良くないと感じ、再び使用を始めると健康に戻りました。」 記者「その他にも最近出会ったA飼料があるとお聞きしましたがどのような効果があったのでしょうか?」 横尾さん「1か月ほど前にサンプルをもらい使った「アソード」というA飼料ですがあれは驚きました。過去にも見たことがないくらい子牛の毛ヅヤが良くなって輝いているように感じました。下痢も締まって目で見て健康になっていっていることが実感できました。また、カビ毒の吸着効果があるにも関わらず驚くほど価格が安価で、試算したら大きくコストカットできたためぜひ他の農家の方にも紹介したいと思った商品でした。」 記者「牛の日常のケアにおいて、どのような工夫をしていますか?」 横尾さん「私たちは、牛にとって最適な飼料の混合を常に心がけています。特に、冬は牛のカロリー消費が増えるため、適切な栄養を提供することが重要です。また、牛舎では、牛が快適に過ごせるように温度管理にも気を配っています。冬の寒さは牛にとっても大きなストレスですが、適切なケアによって健康を維持しています。」 記者「厳しい冬の環境の中でも、牛の健康を守るために特に注意していることはありますか?」 横尾さん「冬は特に厳しい季節で、気温がマイナスになることも珍しくありません。しかし、私たちは、牛がストレスを感じないように最善を尽くしています。例えば、雪が多い時期は牛舎の清掃や牛の体調管理にさらに注意を払います。経験を活かして、牛たちが健康で快適に過ごせるように日々努力しています。」 少量でも本物を!
記者「尊敬する農家の方はいらっしゃいますか?」
横尾さん「はい、何人かいますね。特に熊本の山田政晴さんを尊敬しています。彼は独自のオリジナル牛乳を作っており、委託販売に頼らずに自分の牛乳を消費者に届けたいという強い思いがあります。それぞれの農家が自分の個性を生かした牛乳を作り、多様性を持った農業経営を行っているのを見ると、私も大いに刺激を受けます。」 記者「山田政晴さんの取り組みの詳細について教えてください。」 横尾さん「山田政晴さんは、既存のやり方にとらわれず、自分の作った牛乳を個性的に売り出すことに成功しています。市場には同じような牛乳が溢れている中で、自分だけのオリジナル牛乳の質とこだわりを消費者に伝えることで、自らの牧場を際立たせています。それが山田政晴さんのすごいところです。」 記者「山田政晴さん以外にも、尊敬する農家はいますか?」 横尾さん「はい、古川牧場さんもとても尊敬しています。特に牛の改良に関しては国内でもトップクラスです。彼らは体格検査で高い点数を取る牛を多く育て、品質の高い牛乳を生産しています。また、松本牧場も経営の面で非常に優れており、厳しい状況の中でも安定した経営を続けている点に大きな敬意を抱いています。」 記者「座右の銘や、牧場経営における信念について教えてください。」 横尾さん「私の座右の銘は「少量でも本物を!」です。大量生産ではなく、質にこだわった本物の牛乳をお客様に提供したいという思いで経営しています。例えばJR九州の高級宿泊施設で私たちの牛乳が採用されるなど、本物志向の消費者に認められるように努力しています。小規模でも、真心を込めた良質な牛乳を届けることで、牛乳全体の消費を底上げし、本物の良さを広めることが私たちの使命だと思っています。」 ビタコーゲン
乳酸菌を含む多種多様な有益な菌がブレンドされており、牛の胃腸の健康を維持し第1胃の発酵を促進します。
これにより、ガスの蓄積やその他の消化器官の問題を防ぐことができるのだそうです。 牧場では、これを飼料に混ぜて毎日牛に与えています。 アソード
サンプルを1㎏使っただけで驚くほど子牛の毛ヅヤが良くなり健康状態が目に見えて改善されているように感じたそうです。また、牧草にカビが発生することが多くカビ毒吸着剤の使用頻度も多かったそうですが、アソードにはカビ毒吸着効果もあり、なおかつ価格がとても安かったことから今では愛用の商品なのだそうです。
Writer_T.Shimomuro
株式会社昇成龍 豊永誠
熊本県 球磨郡 経産牛:180頭、育成牛:80頭、子牛:40頭 取材日:2024年1月10日
昇成龍の経営哲学
記者「豊永さんが経営において最も大事にしていることやこだわりについて教えてください。」
豊永さん「当然ですが、私たちの経営の柱は、売上の増加と無駄の削減です。特に、不必要なコストを抑えることに力を入れています。例えば、獣医に頼む治療費など、以前は無駄だと考えていました。自分でできることは自分で行うことで、コスト削減につながっています。」 記者「規模の拡大に伴い、経営方針に変化はありましたか?」 豊永さん「確かに、規模が大きくなると経営の方針も変わります。最初は私と妻の二人で、90頭の牛を育てるのが限界でしたが、従業員を雇うことで頭数を増やせるようになりました。増やす基準としては”今年度はいくら売り上げたので来年度は例えば2000万売り上げましょう、3000万売り上げましょうという売り上げの目標を立てて、それに見合った頭数を導入する”という形で売上を軸に計画を立てていきました。」 記者「従業員との関係や労働環境についてはどのように考えていますか?」 豊永さん「従業員は非常に大切です。彼らが牛の管理方法をしっかり学ぶことで、大きなトラブルは防げます。また、労働環境にも気を配っています。例えば、夏場は熱中症対策として、1時間に10分の休憩を取るようにしています。昼食は会社から提供し、コミュニケーションも大切にしています。」 記者「経営者として、全体を俯瞰する視点と従業員への信頼についてどう思われますか?」 豊永さん「経営者としては、全体を大まかに見ることが重要です。一方で、従業員一人ひとりの仕事を詳細に見るのではなく、彼らを信頼し、大事にすることが大切です。特に新人教育には力を入れており、段階的に責任を任せていきます。これにより、経営者としての視野を広げつつも、従業員一人ひとりの成長を促進しています。」 自給自足の精神
記者「豊永さんは資金面でのやりくりにどのようなテクニックを用いていますか?」
豊永さん「私たちの基本方針は、必要のないところにはお金をかけないことです。例えば、建物に関しては、屋根さえあれば十分。私自身が建屋の建設や電気水道の設置を手掛けています。これにより、トラブルがあった際にも、原因を素早く特定し、迅速に対応できます。また、子牛の販売収入を資材購入に充てることで、建物関係の借入はありません。自分でできることは、できる限り自分で行い、それ以外は専門家に頼むスタイルをとっています。」 記者「情報収集や活用に関してはどのように行っていますか?」 豊永さん「情報収集は、今のネット社会を活かしています。例えば、建設作業の方法はYouTubeなどで学んでいます。また、北海道の同級生と連絡を取り合って、畜産業界の現状や情勢を把握しています。これにより、牛の購入タイミングや飼料の価格変動を理解し活用しています。要は、情報を仕入れて、それを実務に役立てることが大切ですね。」 記者「経営におけるコスト管理や効率化のための具体的な取り組みはありますか?」 豊永さん「はい、例えば、餌の購入に関しては、価格変動を考慮し、最も経済的なタイミングで購入します。牛の仕入れも同様で、季節によって価格が異なるため、最もコストが下がる時期を狙って購入しています。一年を通して見ると、これらの取り組みにより、平均的にかなりのコスト削減が可能になっています。常に市場の動きを注視し、適切なタイミングでの購入を心掛けています。」 目標を追い越せ!
記者「豊永さんにとって師匠としている人物はいますか?」
豊永さん「師匠というよりは、目標としている人物がいますね。それは高塚牧場の中村さんや大坪上原牧場の上原さんなど、身近な成功している農家の方々です。彼らは私が小さな規模の時から注目してくれていました。彼らの経験談やアドバイスは、私にとって非常に大きな助けとなっています。特に、困難な時期を乗り越えた彼らの話は、私自身にも深く共感でき、大きな刺激になっています。」 記者「豊永さんが彼らから学んだことで、特に印象に残っているアドバイスはありますか?」 豊永さん「はい、彼らも厳しい時期を経験しているので、その話を聞くことができたのは本当に大きかったです。自分と似た境遇を持つ人からのアドバイスは、とても心に響きます。彼らの話を聞いて、”きつい時でも諦めずに続けること”の重要性を学びました。また、彼らの経験を通じて、自分がどう進むべきかの方向性を見つけることができました。」 記者「今後の豊永さんの農場の展望について教えてください。」 豊永さん「将来的には、私が目標としている人々を追い越すことが最大の目標です。現在は150頭の乳牛を育てていますが、2~3年後には200頭を超える規模を目指しています。また、牛だけでなく、土地や資産も増やしていきたいと考えています。大きな牛舎で管理しやすい数の牛を飼うことが理想です。そして、それぞれの小屋を従業員に任せる体制を作り上げ、より効率的な運営を目指します。」 インパクトドライバー
酪農の仕事になぜ?と思うかもしれませんが毎日3台は使うくらい豊永さんの必需品なのだそうです。
これがあればネジ締め、穴あけ何でもできるそうです。 誰よりもコスト意識を持ち、無駄をなくすべく工夫を凝らす豊永さんに相応しいアイテムです。
Writer_T.Shimomuro
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