有限会社もりもと牧場
熊本県阿蘇市 搾乳牛:130頭 取材日:2021年6月10日
酪農家牛舎は驚くほどきれいで、不思議と家畜臭が感じられず、森本さんに育てられた牛たちは毛づやがよく人懐っこい印象を受けました。
写真からも伝わってくるほど柔らかい雰囲気をお持ちのおふたりはどのような育て方をしているのでしょうか。森本さんの座右の銘は「愛」。牛が好きだから愛情をもって接するようにしているとのこと。今回は、そんな愛情あふれる森本夫妻にお話を伺いました。 ①ストレスなく健康に過ごせる環境づくりこだわっていることは特にないですが、強いて言うなら「健康」なのだと思います。「病気にさせないこと」には気を付けています。 病気にさせないために、まず「密飼い」をしないようにしています。牛も人間と同じで、狭いところに詰め込まれるとストレスを感じてしまい、よくわからない病気になって死んでしまうことがあるからです。また、経済面で見ても、頭数が多ければ多いほど良いというわけではなく、「密飼い」で20kgしか乳量が出ないより、適正量で30kg出たほうがいいですよね。それぐらい、畜産農家にとって「健康」に育てることはメリットがあるのです。 次に、餌に関しても強いこだわりがあるわけではありませんが、自分のところで育てた牧草をベースに鉄分やミネラル、ビタミンなどを適正量ブレンドして与えるようにしています。これも人間と同じで、過剰摂取してしまうと悪影響があるので、適正量を心がけています。 最後に、牛舎の環境ですが、自分がきれいな状態を保ちたいというのもありますが、酪農を始めた当初から、機械が入れないような区画は毎日、手作業で掃除をするようにしています。少ない量を毎日掃除するほうが、作業をする人の負担を減らすことにもつながりますし、牛たちにとっても清潔でストレスが少ない環境になっていると思います。 ②昨日との変化に気づくこれも病気にさせないということに繋がるのですが、牛たちに「目をみはらす」ようにしています。牛たちが人間の言葉を使って話してくれたら楽なのですが、言葉を話せるわけではないので、見ることに尽きますね。これは自分だけではなくて、一緒に働く人みんなで意識していることです。例えば、搾乳を担当している人は、「今日はこの牛が5kgしか出なかった」と報告をしてくれたり、掃除をしてくれている人が「この牛は下痢になっている」と気づいてくれたりします。こういったときに病気を疑い、すぐに対策をとるのです。 また、発情がきているかを見抜くことも大事な仕事の一つです。牛にも個性があって、発情が分かりにくい牛もいるので、それぞれの牛に対して、昨日と変化があるかを目で見て確認するように心がけています。 ③畜産のイメージを変えたい畜産には「3K」と言われる言葉があります。3Kとは「汚い・きつい・臭い」。私が嫁いだ時もそのようなイメージでした。ある日、自分と同じような酪農家の奥さんが、とても綺麗な身なりをしていて、そのことに衝撃を受けました。その方からは一切3Kをイメージすることがなく、自分もこういう風にきれいでいようと心に決めました。酪農家の奥さんである自分がいつも綺麗な身なりをしていくことで、畜産のイメージを変えていきたいと考えています。 また、畜産農家の中でも特に酪農家には、「酪友(ラクユウ)」と呼ばれる言葉があるほど、酪農家同士のつながりが強いです。このような繋がりがあることは良い伝統ですし、酪農家として、決して途絶えさせないようにしたいと思っています。 最後に、運営するうえで大事なことは?
仕事をするときには、怒らないようにしています。もちろん、従業員が危ないことをしていたら叱りますが、後から怒らなければよかったと後悔してしまうので。
いつもニコニコとしているほうが、相手にとっても自分にとっても気持ちがいいですからね。 育てる側が幸せでないと牛も健康に育たないと思います。 総合的な「愛」ですね。 ただ好きというだけではダメなのだと思いますが、やっぱり、「牛が好き」なのだろうと思います。
Witer:市木 美帆
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