須藤牧場 須藤晃
群馬県 前橋市 成牛:120頭、搾乳牛:95頭、育成牛全頭預託:40頭(北海道) 取材日:2023年11月28日
牧場とホテルの融合
記者「牧場とホテルの組み合わせは非常にユニークですね。この斬新なアイデアを思いついた背景について教えていただけますか?」
須藤さん「実は、このアイデアは私一人のものではないんです。ある日、異業種の方たちとの会話の中で、“須藤さんの活動ってホテルマンみたいですよね!”という話が出ました。それが「須藤牧場」の新たなる名称となったんです。」 記者「須藤牧場が持つ"酪農とホテル"というブランディングは経営においてどのような効果をもたらしていますか?」 須藤さん「最初からそのようにコンセプトが固まっていると従業員の教育がやりやすいというメリットがあります。自分たちはホテルマンであるという意識があれば牛に暴力を振るったりすることはもちろんないですし、ホテルマンとしての行動が芽生えていきます。また、うちの牧場では定期的にチェアリングや、イベントにスタッフ全員連れて行くようにしています。そうすると、直接お客さんと触れ合うことができ、感謝されたりリアルなコミュニケーションを取ることができホテルマンとしての心を育てるようにしています。」 群馬の未来を耕す
記者「須藤牧場といえば群馬トランスフォームプロジェクトというイメージがありますがその取り組みについて詳しく教えていただけますか?」
須藤さん「群馬トランスフォームプロジェクトは私と農事組合法人元気ファーム20の関根さん、そして群馬の稲作農家の方々と取り組んでいる耕畜連携のことを指します。飼料を作ってくれるのは稲作農家の方になるので最初は牛のお腹を満たせればいいという感覚になることは仕方ないところでした。しかし、私たちはホテルマン。ホテルマンとしてお客様である牛たちにより良い飼料を提供するべきだという思いのもと様々な試行錯誤、稲作農家の方々との積極的なコミュニケーションの果てに信頼を得ることができ良質なサイレージにする技術を得ることができました。直接牛の健康と乳量、乳質にはまだ反映されてはいないのですが、2週間ごとに飼料を調整し、常に最適な状態を保つことでより良い牛乳を作り出せるように努めています。」 記者「群馬トランスフォームプロジェクトロゴにはどのような想いが込められていますか?」 須藤さん「このロゴデザインは田んぼの田の字がモチーフになっています。田んぼの農家さんの考え方や意識を変えていこう、田んぼの使い方を変えていこう。そしてその想いが周りに広がって行くと農業自体がもっと良くなって行くという想いでつくっています。」
須藤さん「こちらのロゴは今ではとても有名な"農業をデザインする"という株式会社ファームステッドさんにデザインして頂きました。」
記者「事業展開についての今後の計画はどのようにお考えですか?」
須藤さん「当牧場の今後の展望は、まず継続が最優先で、そのためには法人化が不可欠だと思っています。法人化をすることで第三者にもスムーズに事業を引き継げるようになります。さらに、牧場の第三者継承も視野に入れています。継承するにあたり後継者育成は切っても切り離せないので、ここで経験を積んだ従業員たちが須藤牧場の第一牧場、第二牧場、第三牧場のように牧場を分けてそれぞれの牧場を経営してもらおうと考えています。」 記者「従業員の給料に関して、経営者と従業員の間に感じられる認識のズレについてどのようにお考えですか?」 須藤さん「給料に関する認識のズレは、確かに深刻な問題です。私たちは従業員に対して給料を1万円増やしたことを大きな努力と捉えていますが、従業員から見ればそれは些細なことに過ぎないかもしれません。このような感覚の違いは、事業の背景や経営の困難さを知らないことから生じるものです。そこは従業員との信頼関係が必要であり、信頼を築いていくためにはビジョンや理念が必要になってくるんだろうなと思います。」 他者のために生きる
記者「現代の若者とのコミュニケーションにおいて、どのような点を意識していますか?」
須藤さん「現代の若者は、環境意識が高く、社会的な価値観も大きく異なります。彼らは、単に給料の多寡だけでなく、仕事がどのように地球環境や社会に貢献しているかを重視します。私たちも、このような価値観を理解し、リスペクトすることが重要です。彼らがテクノロジーと共に育った世代であることを理解し、その視点から牧場経営に新たなアイデアや発想を取り入れることが、若者との良好な関係構築につながります。」 記者「障害者を雇用したことで、牧場の仕事のシステムや雰囲気にどのような変化がありましたか?」 須藤さん「障害者を雇用することで、私たちの牧場の仕組みやチームワークに大きな変化がありました。障害を持つ従業員を適切にサポートするために、より明確なコミュニケーションが取れるような工夫を行いました。これにより、他の従業員も自分たちの作業プロセスを再考し、改善に取り組むようになりました。障害者ができる仕事を基準にすることで、全員がより効率的に動くようになり、意外にも生産性が向上しました。このような変化は、牧場全体の働き方にプラスの影響を与えています。」
記者「社長が経営方針を決定し、現場は従業員に任せるスタイルについて、その効果について教えてください。」
須藤さん「社長が経営方針を決定し、従業員に現場を任せることで、従業員は自立して働く機会を得ています。例えば従業員を雇う場合、自分たちが採用を決めるようにするとその社員を大事に育てようという気持ちが芽生えるんです。 逆にここで社長が出て行ってしまうと、"社長が勝手に雇ったヤツじゃん"という感覚になってしまいます。現場は従業員に任せることで、物事を自分ごととして考えながら、組織全体の成長に寄与することができます。この経営スタイルは、従業員が主体的に行動する気持ちを育て、組織全体の成長を促進しています。」 記者「須藤さんが大切にしている「為に生きる」という座右の銘について、その具体的な意味とビジネスや私生活における影響について教えてください。」 須藤さん「「為に生きる」という座右の銘は、他人を最優先にするという考え方を指します。これは、ビジネスにおいて目先の利益を追いかけるのではなく、相手に勝たせ利益をもたらすことを重視する姿勢を意味します。私生活においても、家族やパートナーへの思いやりや感謝の心を大切にし、常に他者の幸せを考えることが重要です。この姿勢は、ビジネスの成功だけでなく、個人生活においても深い充実感と満足をもたらします。」 アソード
アソードを使うようになって当時悩んでいたガスだまりによる事故が激減したそうです。
その他にも牛の健康状態の改善に寄与し、今では須藤牧場にはなくてはならない愛用品です。
Writer_T.Shimomuro
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