齋藤牧場 齋藤潤也
熊本県 菊池市 搾乳牛:68頭、乾乳牛:5頭、育成牛:7頭、預託牛:30頭 取材日:2024年4月22日
乳房炎ゼロへの道: 齋藤牧場の革新的対策
記者「齋藤さん、まずは牧場での乳房炎予防に対する基本戦略について教えていただけますか?」
齋藤さん「当牧場では、乳房炎、特に急性のものを防ぐことに最大限の注力をしています。乳房炎の大きな原因は、乳頭孔からの原因菌の侵入です。特に搾乳後は乳頭孔が開いているため、その時間が最もリスクが高くなります。ですので、搾乳直後の乳頭管理には特に気を使っています。」 記者「具体的な対策として、どのようなことを行っているのでしょうか?」 齋藤さん「まず、搾乳直後に牛に最良の餌を与えることで、牛がすぐに横になることなく活動的に留まるよう促します。これにより、乳頭が床に接触し原因菌が侵入するリスクを著しく減少させています。また、搾乳前には飼槽通路を徹底的に掃除し、牛がリラックスして反芻できる環境を整えることで、ストレスの管理にも力を入れています。」 記者「搾乳後の乳頭孔の保護についても興味があります。具体的にどのような方法を取り入れているのですか?」 齋藤さん「搾乳後に高品質な餌を与えることで、牛が食べている間に乳頭孔が自然に塞がるよう工夫しています。これにより、開いた乳頭孔から原因菌が侵入するリスクを減らすことができ、乳房炎の発生を効果的に防ぐことが可能です。」 記者「万が一乳房炎が発生した場合の対応についても教えてください。」 齋藤さん「乳房炎の初期発見時には、すぐに抗生物質を使用するのではなく、まずは乳房内の毒素を排出させることに注力します。また、生理食塩水を使用して乳頭内を洗い流すことで、問題を根本から解決しようと努力しています。これにより、牛の健康を守りながら、乳房炎のリスクを最小限に抑えています。」 牛たちの幸福設計
記者「牧場における牛の健康管理について、現在の評価はどうですか?」
齋藤さん「私たちの牧場では、牛の健康状態に80点の評価を与えています。この点数は主に自給飼料を中心にした餌管理によるもので、乳成分の変動がこの評価に影響を与えることがあります。この変動に対応するため、必要に応じて餌の配分を調整し、乳成分の値を改善する取り組みをしています。」 記者「牧場運営で直面している主な課題とその対策について教えてください。」 齋藤さん「現在、最大の課題は人手不足です。牧場は私と妻の二人で運営しており、労働力が足りない状況です。また、資材の高騰も大きな負担となっています。ですので人手を増やしたり、効率的な作業というのが解決策になってくると思います。また、牛の状態に関してはベッド数を増やし、1頭あたりの広さを9平米以上に拡張することで、より多くの牛を健康的に管理する方針です。牧場の空いたスペースを有効活用し、拡張して効率的な管理を目指しています。」 記者「斎藤さんのおすすめのアイテムや道具はありますか?」 齋藤さん「私たちのオススメは「リーシュア」というコリン製品です。これは端的に説明すると「脂肪肝」を防ぐ商品になります。脂肪肝は酪農家が直面するトラブルの中でもトップクラスに多く、お産事故や食欲不振、衰弱につながります。そういった分娩時のトラブルを防ぎ、肝臓に脂肪が溜まるのを防ぐことで牛がエネルギー源として体脂肪を使用する際のリスクを大幅に減らすことができます。」 人生楽ありゃ苦もあるさ
記者「齋藤さん、牧場運営で特に影響を受けた師匠や尊敬する人物はいらっしゃいますか?」
齋藤さん「いえ、私たちは特定の師匠や模範とする人物を持たず、多くの先輩や他人の失敗から学ぶことを重視しています。真似をするのではなく、失敗談を共有してもらうことで、何をすべきでないかを学ぶのです。」 記者「失敗から学ぶというのは、具体的にどのような影響が牧場運営にありますか?」 齋藤さん「たとえば新しい飼料の導入時に問題が発生した経験から、新しい試みを行う前にはより慎重になりました。良かった情報だけ聞いて試してもその農家ごとに結果は変わってくるものです。ですが、よくなかったこと、失敗はどの農家も共通することで、それから学び同じようにならないためにはどうしたらいいかを考えることの方が価値があります。ですので私たちの牧場では失敗から悪かった部分を分析し、将来の対策に役立てるようにしています。」 記者「日々の運営で、どのような座右の銘を持っていますか?」 齋藤さん「私の座右の銘は『人生楽ありゃ苦もあるさ』です。これは多くの失敗を経験してきたことと、成功よりもその過程を楽しむことの重要性を示しています。楽しいと感じることが、日々の仕事のモチベーションにつながっているんです。だからいつも完璧な目標は立てません。大ざっぱな目標を立てて少しずつ改善をしていくことでモチベーションを保ちながら、常に完成に向けて段階的に改善しています。このアプローチが、持続可能な成長と楽しい経営を支えているのです。」 リーシュア
脂肪肝を予防する酪農用コリン製品です。脂肪肝を防ぐことによって分娩時のトラブルや食欲不振、牛の衰弱を防ぐことで、酪農家が直面する問題を大幅に軽減すると話していました。
Writer_T.Shimomuro
0 コメント
有限会社ビーユーファーム 宇藤文三
熊本県 阿蘇郡 搾乳牛:180頭、乾乳牛:20頭、育成子牛:90頭 取材日:2024年4月8日
効率と持続可能性を追求する
記者「宇藤さんが牧場運営について特に力を入れていることを教えていただけますか?」
宇藤さん「はい、私たちは特に飼料供給の最適化に力を入れています。例えば、穀物の年間消費量に基づいた飼料計算を行い、飼料の最適化を図っています。また、消化率を高めるために、繊維質を豊富に含んだカシューセルミールを導入して、健康的な牛の育成に努めていますね。」 記者「そのカシューセルミールの使用はどのような効果がありましたか?」 宇藤さん「カシューセルミールの導入によって、牛の消化率が向上し、糞の質も良くなりました。結果として、牛たちはより健康になり、乳量の増加にもつながっています。これにより、生産効率が格段に上がり、経済的な利益も増えています。」 記者「リストラクチャーサポートによるコンサルティングはどのようなものでしたか?」 宇藤さん「リストラクチャーサポートからは、繁殖台帳の整理や、牛の健康状態を把握する方法など、具体的な管理技術のアドバイスを受けています。これにより、日々の管理がより効率的に、かつ詳細に行えるようになりました。」 改善への道:牛たちの障害と闘う
記者「自分の牛の状態に点数をつけるとしたら、何点ですか?」
宇藤さん「うちの牛たちは全体として見て50点ですね。まだまだ改善の余地がありますが、一定の質は保っています。」 記者「その50点の理由は具体的にどのようなところにありますか?」 宇藤さん「50点の大きな理由は、個々の牛に対するケアの必要性です。特に障害がある牛が年間で約1割おり、これが総合評価を下げています。ただ、育成や種付けは順調に進んでいるため、基本的な管理はうまくいっていると言えます。」 記者「障害を持つ牛が増える原因は何だと考えていますか?」 宇藤さん「障害の増加は、集団での飼育が一因かと考えています。それによるストレスや、遺伝的な問題も無視できません。これには、もっと個別に対応する育成方法の見直しが必要です。」 記者「では、そのような課題を解決するために具体的にどのような改善策を考えていますか?」 宇藤さん「改善策としては、牛一頭一頭に合わせたケアを徹底し、可能な限り個別での注意深い管理を行うことです。また、監視カメラの導入で夜間の分娩など、見逃しがちな問題にも迅速に対応できるようになりました。これにより、手遅れになるケースを減らし、全体の健康を向上させたいと考えています。」 牧場運営の成功への鍵
記者「新規就農者の方々へのアドバイスとして、過去の失敗から得た教訓を教えていただけますか?」
宇藤さん「私の失敗の一つに、発情の兆候を見逃すことがありました。これは非常に重要で、見逃すと繁殖サイクル全体が乱れてしまいます。普段から牛の様子にしっかり目を配り、繁殖のタイミングを逃さないようにすることが肝心ですね。発情の見逃しは、結果として乳量の低下や牛の健康問題を引き起こしました。さらに、繁殖サイクルが遅れると、結果的には牛の入れ替えや高額な費用が必要になるなど、経営にも大きな負担がかかります。」 記者「では、これから牧場を始める新規就農者への具体的なアドバイスは何ですか?」 宇藤さん「新規就農者の方は特に、繁殖サイクルの管理に細心の注意を払うことが重要です。万が一のためにも、発情の兆候を正確に捉えるためのツールやシステムの導入をお勧めします。これが牧場の安定した運営に直結します。」 記者「宇藤さんの経験から、牧場経営の成功の鍵は何だと思いますか?」 宇藤さん「成功の鍵は、日々の努力と細かな観察です。毎日の管理と観察を怠らず、牛一頭一頭の健康や状態を正確に把握することが、高い生産性と効率的な牧場運営につながります。」 監視カメラ
夜間に気付かない出産が頻繁に起きていましたが、監視カメラの導入でそれが解消されたと話していました。
出産のタイミングにとても役立っています。 また、昼間に誰もいない時でも牛を遠隔で見られるためとても便利です。
Writer_Y.Eguchi
|