木村牧場 木村誠
栃木県 那須塩原市 搾乳牛:60頭、経産牛:60頭 取材日:2023年11月29日
カビ毒問題への挑戦
記者「以前、カビ毒による問題に直面していたとお聞きしましたが、その時の具体的な状況やエピソードを教えていただけますか?」
木村さん「実際にカビ毒の問題に直面した時は、牛たちが軟便や食滞に悩まされていました。この問題に対処するために、アソードを導入しました。当初はカビ毒サプリを毎日50グラム程度使用していましたが、現在は10グラムに減らし、それでも効果的です。この変更により、毎月の使用量も減り、コストも毎月15万ほど抑えられるようになりました。」 記者「アソードの導入が牛たちの健康にどのような影響を与えましたか?」 木村さん「アソードを使い始めてから、軟便や食滞の問題が大幅に減少しました。すぐに効果が出たわけではありませんが、長い目で見ると、牛たちの健康が大きく改善されていることに気づきます。病気が減り、獣医を呼ぶ必要が少なくなったのは大きなメリットです。」 記者「導入するきっかけは何だったのですか?」 木村さん「導入のきっかけは、牛が砂利などを舐める行動が多く見られたことでした。鉱塩やミネラルの増量も効果がありませんでした。近隣の農家さんがアソードを使っていると聞き、導入を決めました。長い目で見て効果が出ることを理解していたので、根気よく続けることができました。」 記者「農業経営や牛の飼育にどのような変化がありましたか?」 木村さん「コマーシャルではないんですが、アソードをやるようになってから牛の異常や変化が少なくなってきてるのは間違いはないと思います。また、これによりコスト削減が実現しました。牛の健康状態が安定すると、牧草以外の飼料を減らすことが可能になり、経営の効率化に貢献しています。観察力を高めることが重要で、異常を早期に発見することで対処できるようになりました。」 自己評価は低く見積もれ
記者「木村さんは今の自分に足りない部分があると感じているそうですが、具体的にはどのような点ですか?」
木村さん「そうですね、私は常に自分に何が足りないかを考えています。特に、コロナ禍を経験してから、人との接触の大切さがより鮮明になりました。コロナの隔離状況は、私たちに多くのことを見直す機会を与えたんです。人間関係の重要性を再認識し、これからの農業経営にも大きな影響を与えています。」 記者「コロナ禍を経験して、農業経営における人との繋がりについてどのように考えが変わりましたか?」 木村さん「コロナ禍を通して、人との繋がりが情報の源泉であることを強く実感しました。インターネット情報だけでは不十分で、直接の人間関係から得られる情報の価値は計り知れないです。特に、農業の世界では、他の農家との情報交換が非常に重要で、互いに学び合うことで、全体の知識や技術が向上します。」 記者「農業経営において、自分の現在の取り組みに何点をつけるとしたら、どう評価しますか?」 木村さん「もし自分の牛舎の運営に点数をつけるなら、40点くらいかもしれません。理想にはまだまだ遠いです。自己評価を低く見積もることで飼料や牛の管理について、常に改善の余地を探し続ける意識が生まれます。」 記者「その残りの60点分、つまり改善の余地について具体的に教えていただけますか?」 木村さん「現在は特に自家飼料の質を上げることに力を入れており、最適な飼料を作るために試行錯誤しています。より良い飼料を作ることで、牛の健康と生産性を高めたいと考えています。近隣の農家さんで和泉さんという方は、牧草の質やデントコーンの栄養価を最大化する方法を模索しており、私もそのような高い目標を掲げています。しかし、気候の変動や収穫時期の管理など、難しい課題も多くあります。」 現実と向き合う農家の教訓
記者「木村さんにとって、農業や酪農に関する知識や技術を学んだ師匠はどなたですか?」
木村さん「私の師匠は一人ではありません。那須拓陽高校の斎藤達夫先生は、私の恩師の一人で、担任ではなかったものの、農業に対する考え方や生き方を学びました。また、酪農ヘルパーとして始めた際の先輩も師匠のような存在でした。彼らは私に厳しくも貴重な教えを授けてくれ、今の私の基礎を作り上げました。」 記者「斎藤達夫先生や酪農ヘルパーの先輩から、具体的にどのようなことを学びましたか?」 木村さん「斎藤達夫先生は、ただの教師ではなく、農業における真の理解者でした。彼からは、牛の飼育管理はもちろん、仕事の進め方や重要性について学びました。ヘルパーの先輩からは、農家がいない時に代わりに働くことで、実際の仕事の厳しさや農業の現実を学びました。彼らから学んだ知識と経験が今の私を形成しています。」 記者「新規就農者に向けて、農業における重要なメッセージは何ですか?」 木村さん「新規就農者へのメッセージは、夢を追う前に現実をしっかり見ることです。農業の世界は理想だけでは生きていけません。私たち長年の農家は、農業の厳しい現実を知っています。新しい農家は、夢を持つ前に、現実の農業の状況を理解し、それに基づいて計画を立てるべきです。これが農業で成功するための鍵です。」 アソード
アソードの多孔質形状がカビの吸着をするためカビ毒に悩まされることが減りました。
今では獣医代やその他の添加剤にかかる費用を大幅に減らすことができ経費削減に役立っているそうです。
Writer_T.Shimomuro
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須藤牧場 須藤晃
群馬県 前橋市 成牛:120頭、搾乳牛:95頭、育成牛全頭預託:40頭(北海道) 取材日:2023年11月28日
牧場とホテルの融合
記者「牧場とホテルの組み合わせは非常にユニークですね。この斬新なアイデアを思いついた背景について教えていただけますか?」
須藤さん「実は、このアイデアは私一人のものではないんです。ある日、異業種の方たちとの会話の中で、“須藤さんの活動ってホテルマンみたいですよね!”という話が出ました。それが「須藤牧場」の新たなる名称となったんです。」 記者「須藤牧場が持つ"酪農とホテル"というブランディングは経営においてどのような効果をもたらしていますか?」 須藤さん「最初からそのようにコンセプトが固まっていると従業員の教育がやりやすいというメリットがあります。自分たちはホテルマンであるという意識があれば牛に暴力を振るったりすることはもちろんないですし、ホテルマンとしての行動が芽生えていきます。また、うちの牧場では定期的にチェアリングや、イベントにスタッフ全員連れて行くようにしています。そうすると、直接お客さんと触れ合うことができ、感謝されたりリアルなコミュニケーションを取ることができホテルマンとしての心を育てるようにしています。」 群馬の未来を耕す
記者「須藤牧場といえば群馬トランスフォームプロジェクトというイメージがありますがその取り組みについて詳しく教えていただけますか?」
須藤さん「群馬トランスフォームプロジェクトは私と農事組合法人元気ファーム20の関根さん、そして群馬の稲作農家の方々と取り組んでいる耕畜連携のことを指します。飼料を作ってくれるのは稲作農家の方になるので最初は牛のお腹を満たせればいいという感覚になることは仕方ないところでした。しかし、私たちはホテルマン。ホテルマンとしてお客様である牛たちにより良い飼料を提供するべきだという思いのもと様々な試行錯誤、稲作農家の方々との積極的なコミュニケーションの果てに信頼を得ることができ良質なサイレージにする技術を得ることができました。直接牛の健康と乳量、乳質にはまだ反映されてはいないのですが、2週間ごとに飼料を調整し、常に最適な状態を保つことでより良い牛乳を作り出せるように努めています。」 記者「群馬トランスフォームプロジェクトロゴにはどのような想いが込められていますか?」 須藤さん「このロゴデザインは田んぼの田の字がモチーフになっています。田んぼの農家さんの考え方や意識を変えていこう、田んぼの使い方を変えていこう。そしてその想いが周りに広がって行くと農業自体がもっと良くなって行くという想いでつくっています。」
須藤さん「こちらのロゴは今ではとても有名な"農業をデザインする"という株式会社ファームステッドさんにデザインして頂きました。」
記者「事業展開についての今後の計画はどのようにお考えですか?」
須藤さん「当牧場の今後の展望は、まず継続が最優先で、そのためには法人化が不可欠だと思っています。法人化をすることで第三者にもスムーズに事業を引き継げるようになります。さらに、牧場の第三者継承も視野に入れています。継承するにあたり後継者育成は切っても切り離せないので、ここで経験を積んだ従業員たちが須藤牧場の第一牧場、第二牧場、第三牧場のように牧場を分けてそれぞれの牧場を経営してもらおうと考えています。」 記者「従業員の給料に関して、経営者と従業員の間に感じられる認識のズレについてどのようにお考えですか?」 須藤さん「給料に関する認識のズレは、確かに深刻な問題です。私たちは従業員に対して給料を1万円増やしたことを大きな努力と捉えていますが、従業員から見ればそれは些細なことに過ぎないかもしれません。このような感覚の違いは、事業の背景や経営の困難さを知らないことから生じるものです。そこは従業員との信頼関係が必要であり、信頼を築いていくためにはビジョンや理念が必要になってくるんだろうなと思います。」 他者のために生きる
記者「現代の若者とのコミュニケーションにおいて、どのような点を意識していますか?」
須藤さん「現代の若者は、環境意識が高く、社会的な価値観も大きく異なります。彼らは、単に給料の多寡だけでなく、仕事がどのように地球環境や社会に貢献しているかを重視します。私たちも、このような価値観を理解し、リスペクトすることが重要です。彼らがテクノロジーと共に育った世代であることを理解し、その視点から牧場経営に新たなアイデアや発想を取り入れることが、若者との良好な関係構築につながります。」 記者「障害者を雇用したことで、牧場の仕事のシステムや雰囲気にどのような変化がありましたか?」 須藤さん「障害者を雇用することで、私たちの牧場の仕組みやチームワークに大きな変化がありました。障害を持つ従業員を適切にサポートするために、より明確なコミュニケーションが取れるような工夫を行いました。これにより、他の従業員も自分たちの作業プロセスを再考し、改善に取り組むようになりました。障害者ができる仕事を基準にすることで、全員がより効率的に動くようになり、意外にも生産性が向上しました。このような変化は、牧場全体の働き方にプラスの影響を与えています。」
記者「社長が経営方針を決定し、現場は従業員に任せるスタイルについて、その効果について教えてください。」
須藤さん「社長が経営方針を決定し、従業員に現場を任せることで、従業員は自立して働く機会を得ています。例えば従業員を雇う場合、自分たちが採用を決めるようにするとその社員を大事に育てようという気持ちが芽生えるんです。 逆にここで社長が出て行ってしまうと、"社長が勝手に雇ったヤツじゃん"という感覚になってしまいます。現場は従業員に任せることで、物事を自分ごととして考えながら、組織全体の成長に寄与することができます。この経営スタイルは、従業員が主体的に行動する気持ちを育て、組織全体の成長を促進しています。」 記者「須藤さんが大切にしている「為に生きる」という座右の銘について、その具体的な意味とビジネスや私生活における影響について教えてください。」 須藤さん「「為に生きる」という座右の銘は、他人を最優先にするという考え方を指します。これは、ビジネスにおいて目先の利益を追いかけるのではなく、相手に勝たせ利益をもたらすことを重視する姿勢を意味します。私生活においても、家族やパートナーへの思いやりや感謝の心を大切にし、常に他者の幸せを考えることが重要です。この姿勢は、ビジネスの成功だけでなく、個人生活においても深い充実感と満足をもたらします。」 アソード
アソードを使うようになって当時悩んでいたガスだまりによる事故が激減したそうです。
その他にも牛の健康状態の改善に寄与し、今では須藤牧場にはなくてはならない愛用品です。
Writer_T.Shimomuro
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