田上牧場 田上直人
熊本県 菊池郡 搾乳牛:38頭、乾乳牛:5頭、子牛:9頭 取材日:2024年2月29日
骨から皮膚まで、牛の選び方完全ガイド
記者「宮本牧場での修行を通じて、どのような知識や技術を得られましたか?」
田上さん「宮本牧場での修行は、本当に基礎から学ぶことができました。最初は牛の扱い方や機械の操作方法など、基本的なスキルを身につけることから始まりました。それから徐々に、飼料の混ぜ方、TMR(全混合飼料)の配合、さらには飼養管理や繁殖技術についても学び、実際に人工授精を行う機会もありました。」 記者「牛の選び方について詳しく教えてください。どのようなポイントに注目すればいいのですか?」 田上さん「牛を選ぶ際は、まず皮膚の質感が大切です。皮膚を引っ張ったときに、柔らかくて伸びる「シーツのような」皮膚を持つ牛と、硬くて伸びない「毛布のような」皮膚を持つ牛がいます。宮本さんからは、常にシーツのような柔らかい皮膚を持つ牛を選ぶようにと教わりました。この質感は触ることで判断でき、牛の健康状態や飼料の吸収率にも関連しています。」 記者「それ以外にも選び方のポイントはありますか?」 田上さん「はい、乳頭の形状も重要なチェックポイントです。小指のような形をした乳頭が理想的で、これは搾乳性にも影響を及ぼします。さらに、骨格に注目し、角が尖っているような、カクカクした骨格の牛を選ぶことが重要です。」 記者「腹がしっかりしているかどうかも選び方の一つとして挙げられていましたが、その見分け方はありますか?」 田上さん「腹がしっかりしているかどうかは、肋骨の開き具合や腹部の形状で判断します。例えば、前から見てリンゴのように肋骨が張っている牛は、飼料の食い込みが良い傾向があると言われています。反対に、洋梨のような形の牛は食い込みが悪いとされます。このように、見た目からも牛の健康状態や飼料の食い込みを判断することが大切です。」 カウコンフォートの改善を求めて
記者「自分の牛の状態に点数をつけるとしたら、どのように評価しますか?」
田上さん「カウコンフォートは比較的できていると思うので70点くらいだと考えています。その理由は、主に牛舎の環境や飼育方法にあると思います。強いて言うなら牛舎が狭く、牛たちがストレスを感じやすい環境にあるため、マイナスポイントとして30点引いています。また、一部の牛が若干痩せ気味で、エネルギー不足に陥っている点も改善が必要です。」 記者「その改善点について、具体的にどのような対策を考えていますか?」 田上さん「12月から飼料の調整を始めて、少しずつ状態が改善してきています。飼料の量を増やし、乾物摂取量も上げることで、牛たちの体調を良好に保とうとしています。これにより、牛たちのエネルギー不足を解消し、体がふっくらしてくることを目指しています。」 記者「配合飼料を増やすことに関連するリスクはありますか?」 田上さん「はい、配合飼料を急に増やすことにはリスクが伴います。特に足の健康や胃の酸性度、下痢のリスクが上がる可能性があります。ですから、増やす際には慎重に行い、牛たちの健康状態を細かく観察しながら調整しています。配合飼料を増やした結果、足の裏が赤くなったり、鼻水が出たりするサインを見逃さないようにしています。これらはアシドーシスの兆候であり、早期に対処することが重要です。」 記者「100点満点に向けてどのような取り組みが必要だと思いますか?」 田上さん「100点に近づけるためには、まずは飼料の質と量の最適化から始めています。そして、牛舎の環境改善を進めて、牛たちがストレスなく生活できる空間を作ることも重要です。これらの基本的な条件が整えば、牛たちの健康はもちろん、乳量や繁殖能力にも良い影響を与えることができると考えています。常に牛たちの状態を観察し、適切なケアを行うことが、目標達成には不可欠です。」 STEP by STEP
記者「牧場経営において、おすすめのアイテムや道具はありますか?」
田上さん「私たちの牧場では、特にロータリーとトラクターを重宝しています。特にロータリーは、コンポストバンを毎日2回耕すために必須です。それによって、発酵を促進させ、熱を使って病原菌を殺すことができるのです。また、これを使用することで、牛の寝床をふかふかに保ち、高齢牛でもストレスなく過ごせる環境を提供できます。これは乳房炎の抑制や体細胞数の低下にもつながり、牛の健康維持に非常に効果的です。」 記者「尊敬されている宮本さんについてもっと詳しく教えてください。彼の人となりや、あなたが目標としている理由は何ですか?」 田上さん「宮本さんの最も印象的な点は、彼の牛に対する飼養管理の技術や、見る目の鋭さです。彼ほど牛のことを深く理解している人は他にいないと思います。また、宮本さんは新規の牧場経営者として、自分自身で牧場を立ち上げ、多くの成功を収めてきました。彼の経営技術や牛への深い理解は、私が学びたいと思う大きな理由です。宮本さんから学んだことは、私の経営のベースになっています。」 記者「座右の銘について教えてください。」 田上さん「私の座右の銘は、『STEP by STEP』です。これは、ゆっくりでもいいので一歩一歩前進し続けようという意味です。しかし、同時に停滞を許さない、現状維持は後退だという強い意志を持っています。農業の現状は厳しいものがありますが、その中でいかに自分の牧場を成長させ、収入を上げていけるか、常に挑戦する心が大切です。失敗を恐れず、挑戦し続けることで、失敗から学び、それが結果的に成功へとつながると信じています。」 ロータリー
このロータリーを使うことで堆肥の発酵を促進させ、熱を使って病原菌を殺すことができるそうです。それ以外にも牛の寝床をふかふかに保ち、高齢牛でもストレスなく過ごせる環境を作ることができます。カウコンフォートにとことんこだわった田上さんならではのアイテムです。
Writer_T.Shimomuro
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