株式会社アドバンス 永田浩徳
熊本県 菊池市 預託牛:220頭 取材日:2024年3月26日
地域を支える力―アドバンス社の畜産業革命
記者「アドバンス社は畜産業界でどのような役割を果たしていると思いますか?」
永田さん「私たちアドバンス社は、畜産業界において、まさに中心的な役割を担っております。地域畜産業の基盤となる大規模自給飼料生産を通じて、酪農家の経営改善を実現しているんです。約600筆の農地でトウモロコシを栽培し、高品質で安価な飼料を製造しています。さらに、地域連携を深め、酪農家だけでなく、和牛産業の振興にも寄与しています。女性の活躍も促進し、地域全体の畜産業を支える基盤を築いているんですよ。」 記者「アドバンス社の取り組みで、具体的にどのような成果がありますか?」 永田さん「具体的な成果としては、まず、我々の活動により飼料コストの削減と生産性の向上を実現しています。例えば、地域の酪農家には、年2回、ニーズに合わせた発酵TMRを提供し、それにより平均して1頭当たりの日乳量を県平均より1割増加させることに成功しました。さらに、育成牧場を併設することで、酪農家の負担軽減に貢献しており、和牛の子牛供給を開始することで、地域の和牛生産者へのサポートも行っています。女性の活躍に関しては、事務作業から生産管理まで、多岐にわたって女性を積極的に採用し、職場での多様性を実現している点も大きな成果の一つです。」 地域と共に育む、畜産業の新たな価値
記者「永田さん、今回の天皇杯受賞を受けて、今後の農家の経営や技術向上に向けた取り組みについて教えてください」
永田さん「この受賞は私たちだけでなく、地域全体の努力の結晶です。今後は、新規就農者への飼料供給をはじめ、経営の効率化や技術の向上を図りながら、より多くの農家が持続可能な経営を行えるようサポートしていく計画です。さらに、地域の自給飼料基盤の強化や畜産業の発展に貢献していくことで、地域農業全体の競争力を高めていきたいと考えています」 記者「永田さんの取り組みで注目される点は何ですか?」 永田さん「私たちの取り組みの最大の特徴は、大規模な自給飼料生産を通じて、高品質で安価な飼料を提供し、農家の経営改善に貢献している点です。さらに、ICT技術を活用した効率的な農地管理や、地域連携を強化することで、酪農だけでなく和牛産業の振興にも寄与しています。これらの取り組みが地域畜産業の持続性向上に貢献していると自負しています」 記者「地域や他の農家との連携についての具体的な例を教えてください」 永田さん「具体的な例としては、地域のキャトルブリーディングセンターと連携し、黒毛和種の受精卵を移植した和牛子牛の供給を行っていることが挙げられます。これにより、地域の和牛生産者に対して高品質な子牛を安定供給し、地域畜産業の振興に貢献しています。また、新規就農者への支援や農地集積による耕作放棄地の解消など、地域全体の農業基盤を強化するための取り組みも積極的に行っています」 記者「アドバンス社の今後の展望について教えてください。」 永田さん「当社の今後の展望は、さらなる地域畜産業の発展への貢献にあります。具体的には、作業受託面積およびTMR製造量の拡大、育成牧場の預託頭数の増加を図り、さらに新規就農者への飼料供給による支援を強化していきます。これにより、酪農家の経営延長への支援が可能となり、地域の畜産業全体の持続可能な発展を促進していきたいと考えています。地域での耕作放棄地を減らし、地域農業の活性化にも寄与していく予定です。」 真剣に生き、知恵を絞る農業
記者「永田さんが尊敬する師匠や目標としている方について教えてください。」
永田さん「私の農業における指針となる人物は、糸岡敏治さんと元JA職員の中村さんです。糸岡さんは、私たちの世代が皆尊敬する大先輩で、農業技術だけでなく、人間としても大きな影響を受けました。中村さんに至っては、JA職員でありながら、私たち農家の身近な存在として、常に支援を惜しまず、新しい挑戦を後押ししてくれました。彼らのおかげで、私たちは地域農業の活性化だけでなく、日々の業務においても多大な進歩を遂げることができました。」 記者「最後に、永田さんの座右の銘や、日々の業務を行う上で心がけていることはありますか?」 永田さん「私の座右の銘は、「真剣だと知恵が出る」です。農業を行う上で、日々様々な困難に直面しますが、真剣に取り組むことで、これまで見えなかった解決策や新たなアイデアが浮かんでくるんです。この言葉は、私たちの牧場で働くすべての人々にとっても共有される価値観であり、一生懸命に仕事に取り組むことの大切さを示しています。成功した時はみんなのおかげ、失敗した時は自分の責任と捉え、常に前向きに努力を続けることが、私たちの牧場を支える基本的な姿勢です。」 記者「その座右の銘を選んだ理由は何ですか?」 永田さん「この言葉を選んだのは、農業においても、生活においても、真剣に取り組む姿勢が最も重要だと考えるからです。農業は予測不可能な要素が多く、計画通りに進まないこともしばしばあります。しかし、真剣に取り組むことで、思わぬ知恵やアイデアが生まれ、困難を乗り越えることができるんです。この座右の銘は、私自身の経験に基づいており、日々の業務で直面する様々な課題に立ち向かう勇気とインスピレーションを与えてくれます。」 記者「永田さんが考える農業の未来についてはどうでしょうか?」 永田さん「農業の未来は、革新的な技術の導入と、地域社会や消費者との連携強化にかかっています。私たちは、持続可能な農業を目指し、エコフレンドリーな方法で生産活動を行っていく必要があります。また、消費者に対して、私たちがどのように食材を生産しているのかを透明に伝え、信頼を築いていくことも重要です。真剣に農業に取り組むことで、新しい挑戦を乗り越え、より良い未来を築いていくことができると信じています。」 ワイヤーメッシュ
イノシシや鹿などの鳥獣害対策として使用しています。
近辺での鹿の被害問題が頻発し困っていたので導入しました。 まだ使用して間もないため今後の鳥獣害の対策状況に期待していると話されていました。
Writer_T.Shimomuro
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風間牧場 風間健太
熊本県 菊池郡 経産牛:40頭、未経産牛:4頭、預託牛:7頭、F1:7頭 取材日:2024年3月19日
健康管理から生まれる、高繁殖成績の秘訣
記者「風間さんの牧場の繁殖成績が優れていると聞きましたが、具体的にどのような技術や工夫をしているのですか?」
風間さん「私たちの牧場では、分娩後の牛の健康管理に特に力を入れています。特に、分娩後すぐの立ち上がりを良くするために、分娩後の一般的な病気を未然に防ぐ予防策を施しています。例えば、適切な栄養管理と予防的な薬の投与を行い、病気のリスクを極力減らしています。これにより、牛が健康で生産性が高まり、結果として繁殖成績を向上させています。」 記者「分娩後の健康管理で特に注意している病気はありますか?」 風間さん「はい、分娩後によく見られる病気には、低カルや変胃、ケトーシスがあります。これらの病気にかかると、牛が立ち上がれなくなったり、餌を食べなくなることがあります。これらの病気を事前に防ぐために、カルシウムや酸化マグネシウムを適切に投与しています。分娩前後にこれらの栄養素をしっかりと管理することで、病気の発生率を下げ、牛の健康を守っています。」 記者「オール購入についてはどのような理由からですか?」 風間さん「私たちの牧場では、労働力と餌を生産するための土地が限られているため、全ての飼料を外部から購入しています。これにより、より専門的な管理に集中することができ、牛の健康と生産性の向上に直結しています。飼料購入には確かにコストがかかりますが、私たちの牧場では、生産性の向上に成功しています。例えば、年間の乳量平均が36kg出ており、また繁殖成績もほぼ一年一産できてきています。このように、初期投資は大きいものの、結果として高い生産性を実現しているため、経済的にも成り立っています。」 繁殖と乳量のバランス:90点からの挑戦と進化
記者「自分の牛の状態に点数をつけるなら、何点になりますか?」
風間さん「私は自信を持って90点と評価します。繁殖がうまく回っている点と、安定した乳量を維持できていることが大きな理由です。分娩後の健康管理や栄養管理に力を入れ、予防的な対策を徹底しています。このような取り組みが、良好な繁殖成績と乳量を支えています。」 記者「その90点を100点にするためには、どういう点が改善される必要がありますか?」 風間さん「さらなる改善点としては、特に乳量の向上が挙げられます。最近、飼料の質の見直しや、より能力の高い牛を導入することで、乳量を増やす基盤が整ってきました。今は、この土台の上でさらに乳量を上げていく段階にあります。繁殖成績を落とさずに乳量を増やすことが、今後の大きな挑戦です。」 記者「おすすめのアイテムや道具はありますか?」 風間さん「暑熱対策として高圧洗浄機が非常に役立っています。夏場に牛に直接水をかけることで、涼しさを提供しています。また、屋根には遮熱塗料を塗ることで、上からの熱を軽減し、牛が快適に過ごせるようにしています。これらの対策は、牛のストレスを減らし、健康を維持するのに重要です。」 調子に乗らず、めんどくさがらず
記者「新規就農者へのメッセージや、過去に失敗した経験から学んだ教訓を教えてください。」
風間さん「やらかした経験はありますね。特に、乳量を増やそうとして調子に乗り過ぎた結果、牛が痩せてしまったことがあります。大切なのは、牛の健康を最優先に考えること。つまり、カウコンフォート、牛への配慮を怠らないことが重要です。そして、牛の日々の状態を見極める観察力を磨くこと。細かい変化に気づき、適切な対応をすることが、良い繁殖成績への道です。」 記者「地域との関係構築についてはどう感じていますか?」 風間さん「地域の人々との関係も非常に大切にしています。新規就農者にとって、地域との良好な関係は、様々な支援や協力を得る上で不可欠です。農業は個人の努力だけではなく、周囲の人々との協力が成功への鍵となります。」 記者「風間さんの座右の銘や仕事に対する姿勢を教えてください。」 風間さん「私の座右の銘は「めんどくさがらずにやる」です。宮崎駿監督が言っていたことで「いいアニメを作るためにはものすごくめんどくさい作業がたくさんある。それを1つ1つきっちりやっていくことがいいアニメを作る秘訣」と言っていて、仕事も一緒だと思ったんですよね。農業には地道で、時にはめんどくさいと感じる作業もたくさんあります。しかし、その一つ一つを丁寧にこなすことで、良い結果が得られます。例えば、分娩後の管理など、大変な作業も念入りに行うことが、牧場全体の品質を高め、良い繁殖成績につながります。」 記者「新規就農者に伝えたいことはありますか?」 風間さん「はい、飼料に関してです。経費節約のために飼料をケチることは絶対に避けるべきです。良質な飼料を十分に与えることで、牛は健康を維持し、良い成績を返してくれます。結局、良い繁殖成績を維持するためには、牛の健康が土台になります。」 高圧洗浄機
暑熱対策として夏場に高圧洗浄機で牛に直接水をかけるそうです。
こうすることで牛の暑熱によるストレスを減らし、健康を維持できています。 堆肥場に追いやって行うのでソーカーや細霧よりもベッドに細菌が繁殖せず清潔さを保てると話していました。
Writer_Y.Eguchi
宮本牧場 宮本晴二郎
熊本県 玉名市 搾乳牛:156頭、乾乳牛:19頭、育成牛:25頭 取材日:2024年3月7日
小さな調整で大きな改善を
記者「宮本さんの牧場でのバランスに重きを置く飼育方法について、具体的な取り組みはありますか?」
宮本さん「はい、うちの牧場では、全てがバランスが鍵となります。牛の健康状態、乳量、そして繁殖能力のバランスを見極め、必要に応じて調整を加えることで最適な状態を保っています。乳成分や体調、乳量、さらには便の状態や食事の選り好みまで、全ての要素を総合的に評価し、細かな調整を行うことで、牛たちの健康を維持し続けています。特別な魔法のようなことはしていませんが、日々の観察と調整がうちの強みです。」 記者「最近、牛の状態が改善された具体的な例を教えていただけますか?」 宮本さん「今年は特に、乳量の増加に成功しました。春になると乳量が一気に増える傾向にあり、それに対応するため飼料のメイズ(とうもろこし)の割合を増やすなど、エネルギーの補給を意識しています。その結果、嚢腫が大幅に減少し、繁殖も順調に行われています。毎年のように試行錯誤していますが、今年は過去最高の成果を実感しております。」 記者「飼料にメイズを使用する理由は何ですか?」 宮本さん「メイズはエネルギーが豊富で、牛たちにとっても大変良い飼料です。また、輸入品であることから価格は多少上がることもありますが、品質が安定しており、鮮度が落ちたりカビが生える心配が少ない点も大きなメリットです。」 記者「最近、獣医からの指摘で改善したことはありますか?」 宮本さん「実は、直接的な獣医からの指摘での改善は少ないです。しかし、獣医とは密接に連携を取りながら、特に繁殖に関しては共に取り組んでいます。例えば、受精卵移植の際には獣医の専門的な意見を仰ぎながら進めています。目から鱗のような大きな発見は少ないですが、日々の細かな連携が大きな力となっています。」 バランスを求めて
記者「自分の牛の状態に点数をつけるとしたら、いくつですか?」
宮本さん「私たちの牧場の牛たちは、全体的に60点くらいだと思います。これは決して完璧ではないですが、平均よりは上だと自負しています。その理由は、うちの牧場が常にバランスを考えた飼育を心がけているからです。しかし、まだまだ改善の余地は大きく、他の牧場から学ぶべき点も多いですね。」 記者「今後、どのようにして残りの40点を獲得しようと考えていますか?」 宮本さん「残りの40点を目指すには、まずは知らないこと、まだ実践していない新しい技術や方法を学ぶ必要があります。たとえば、平均よりも高い乳量を実現している牧場の例を参考にし、彼らがどのようにバランスを取っているのかを理解することが鍵になります。常に学び続け、試し続ける必要があるのです。」 記者「効率化や作業の簡素化に役立つおすすめのアイテムはありますか?」 宮本さん「はい、我々が大変役立っているのが、ロールを簡単に切断できる装置です。これはトラクターの前に取り付けて使用し、特に水分量が少ない飼料を扱う際に大変便利です。手で裂くのが難しいとき、この装置を使うことで、効率的に飼料をミキサーに供給することができます。また、この装置のおかげで、トラクターへの負担も減り、作業効率が大幅に向上しました。これは私たちにとって、非常に価値のある投資でした。」 情熱と適度な怠けの間で
記者「師匠や目標にしている人物はいますか?」
宮本さん「私の目標としているのは父です。父は牛に関しては、とても情熱的で、そのために「変態」と表現することもありますが、その一途さは理解できます。実は、北海道の牧場で修行を積んでから熊本で牧場を立ち上げた経歴を持っており、そうした経験を通じて培った知識と技術を、私は尊敬しています。私は父のようになりたいわけではありませんが、彼から多くを学び、自分なりの飼育方法を見つけていきたいですね。」 記者「今後の目標や目指している点はありますか?」 宮本さん「私の座右の銘は「適度に怠ける」ことです。必要な時には全力を尽くしますが、人生や仕事においてはバランスが大切だと考えています。仕事だけでなく家族との時間や自分の趣味にも時間を割くことで、充実した生活を送ることが目標です。私は美容師を経験した後に牧場経営に携わるようになりましたが、その多様な経験が今の私を形作っています。挫折や挑戦を経て、現在に至るまでの経験は、牧場運営においても柔軟な考え方を持つことに役立っています。まわりには多くの人たちが支えてくれているおかげで、今があります。」 McHale
トラクターの前に取り付けて使用し、ロールの裁断に使用します。以前はミキサーにペットボトルなどの混合物が含まれてエサに混入する危険性や故障の原因になっていましたがこれを使うようになってリスクが激減しました。宮本さん愛用の重機です。
Writer_T.Shimomuro
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