中村牧場
熊本県 人吉市 搾乳牛:100頭 取材日:2023年8月28日
はじめに
一頭一頭の牛が健康であるためには、日々のケアが欠かせません。さらに、そのケアを担当するのは人間であり仲間です。この仲間たちがどのように連携し、どう情報交換と切磋琢磨を重ねているのか。仲間の存在というのがこの畜産という大変な仕事を頑張るモチベーションとなるのです。
この記事では、日常のルーティンワーク、暑熱対策、そして最も大切な「仲間」について紹介していきます。 日常と牛たちの微細なシグナル
ーー中村さんは日常におけるルーティンワークではどのようなことに気を付けていますか?
牛たちの異変にいち早く気付くよう心がけています。たとえば、牛が首を地面につけて寝ている場合、何か異常が起きている可能性が高いです。さらに、耳垂れが起きていると、マイコプラズマ(中耳炎)の可能性ががあります。 また反芻をあまり行わない牛がいたら要注意ですね。夏場の暑い季節では暑熱によるストレスで反芻の回数が減る牛もいたりするので。反芻がうまく行われないとルーメン内の微生物の活動効率が下がりうまく栄養を摂ることができないのです。熱を測ったり、考えられることをやって解決しないようだったら獣医さんを呼んで対処しています。 こうしたルーティンワークは、牛たちに起きる数々の問題に対して適切な処置を行うために不可欠です。 暑熱対策〜ソーカー〜
ーー牛たちが暑さにどのように対処しているのか教えてもらえますか?
牛舎の暑熱対策は非常に重要で、うちではソーカーと呼ばれる装置を10年前から使っています。ソーカーとは首元に水をかけて体温を下げる機械のことですね。人間は肌が露出しているので水にぬれて風が当たると涼しく感じますが、牛は毛で覆われているため体温調節が難しいんです。 5月くらいから10月くらいまで、特に気温が高い時期には、このソーカーを使用しています。 一般に使われる細霧は使い方が難しく、季節やタイミングを見て使わないと、湿度が上がりすぎるなど逆効果になってしまうこともあります。その点、ソーカーはタイマー式で調整可能なのでそういった心配がありません。ですから、牛舎環境を良好に保ちながら、暑熱対策しています。 仲間の力と至福のひととき
ーー畜産経営において「仲間」とどのように協力しているのかお聞かせください。
畜産経営は、一人では困難な作業がたくさんあります。だからこそ、情報交換や切磋琢磨が欠かせません。私の住んでいるこの木上地区は仲がいいと周りから言われていて、牧草の収穫など大きな作業が終わるたびに、打ち上げがてらみんなで集まって飲んでいます。これが仲間との絆を深める大事な時間です。 仲間と一緒に働き、共に問題を解決していく過程が、この仕事のやりがいなのかなぁと思いますね。 編集後記
個々のスキルや知識はもちろん重要ですが、それを高め合い、集結させて初めて大きな力となります。中村さんが語る「幸せ」とは、仲間とともに過ごす時間や、大きな作業を終えた後の打ち上げでみんなで笑い合っている瞬間です。この取材では、そのような独特の絆と共同体の美学が垣間見れました。おそらくこれが、農家の方々がこの厳しい仕事を続ける原動力であり、私たちが美味しい牛乳や肉を食べられる秘訣なのだと思いました。
ソーカー
ソーカーはタイマー式の噴水装置のことで牛の暑熱対策に用いられます。温度センサーも付いており設定の切り替えも自動でできるため気温の状態に合わせて最適な暑熱対策が行えるのだそうです。
Writer_T.Shimomuro
0 コメント
|