株式会社ミルクる 宮崎孝
佐賀県 唐津市 搾乳牛:80頭、乾乳牛:15頭、育成牛:8頭、子牛:5頭、預託牛:30頭 取材日:2024年6月26日
放牧と地元愛が育む強健な牛たち
記者「宮崎さんの畜産や農業に関して、技術的なこだわりを教えていただけますか?」
宮崎さん「うちのこだわりは放牧ですね。父が作った広大な放牧場で牛を自由に動き回らせることで、ストレスを軽減しています。これにより、穏やかな性格で足腰の強い牛が育ちます。ストレスの少ない環境で育つことで、牛たちの健康状態も非常に良好です。」 記者「放牧場はどれくらいの大きさですか?また放牧をすることで見て取れる牛の変化などはありますか?」 宮崎さん「1町歩くらいの広さがあります。雑草が生え、丘や山道のような地形もあるので、平坦ではなく変化に富んだ環境です。このような環境で牛を放牧することで、より自然に近い形で牛が成長します。その甲斐もあってか、牛の動きを見ていると足腰が非常に強くなっているのがわかります。また、牛たちは穏やかで落ち着いた雰囲気を持っており、それが放牧の効果だと感じています。」 記者「他にこだわっているポイントはありますか?」 宮崎さん「餌の設計にもこだわっています。地元の副産物である醤油かすや酒かす、豆かすなどを利用しています。これにより、コストを抑えつつ地元の業者さんにも貢献できる形にしています。自分で配合飼料を使うよりも経済的で、地元とのつながりを大切にした経営を行っています。」 阿蘇の赤土が繋ぐ酪農の奇跡
記者「自分の牛の状態に点数をつけるなら、何点くらいでしょうか?」
宮崎さん「自分としては70点くらいかなと思います。以前から比べると種付けが良くなってきたので、そういう面を評価しています。飼料設計も見直し、乳量だけでなく種付けを重視するようになってから、徐々に改善が見られるようになりました。」 記者「70点から100点に近づけるためには、どのような改善が必要だと思いますか?」 宮崎さん「体細胞数が高くなってペナルティを受けることがあるので、そこを改善したいですね。古くなった牛床の交換や、添加剤を使って牛の免疫強化を図ることが必要です。これらを進めることで、より健康で質の高い牛を育てたいと思っています。」 記者「最近おすすめのアイテムや道具があれば教えてください。」 宮崎さん「最近使い始めたアソードは良い感じです。阿蘇で採れる赤土なのですが、使い始めて種付けがうまくいかなかった牛が種付けできるようになり、体細胞数も20万台に落ち着いてきました。地元の酪農家であるミルン牧場の横尾さんに勧められて使い始めたのですが、横尾さん自身も使いだしてすぐ牛の状態が急に良くなったと言っていました。今後もっと良い結果が出るのではと期待しています。」 継続とゆとりが生む、宮崎さんの畜産の知恵
記者「新規就農者の方へのメッセージをお願いします。」
宮崎さん「酪農は毎日生き物が相手なので時間に追われがちです。自分の時間を作り、牛の管理に追われないようにすることが大切です。最初は少ない数から始めて、ゆとりを持つことで牛を大事に育てられると思います。例えば家族との時間や自分の趣味に使えるようになります。私は釣りやゴルフが趣味なのですが趣味の時間が持てると、仕事のストレスも軽減され、より充実した生活が送れます。」 記者「他に時間に追われない生活を送るための考え方やこだわりがあれば教えてください。」 宮崎さん「牛が不健康だと時間が取られるので、牛を健康に保つことが重要です。牛に無理をさせないようにし、健康管理を徹底することで、結果的に自分たちの時間も確保できます。」 記者「最後に、座右の銘を教えてください。」 宮崎さん「私の座右の銘は『継続は力なり』です。嫌なことや辛いことがあっても、諦めずに続けることで、自然と結果が出てくると思います。経験から、続けることで身につくものが多いと感じています。例えば、体細胞数を減らす取り組みも、色々と試行錯誤しながら続けていますが、少しずつ改善が見られます。諦めずに取り組むことで、良い結果が出ると信じています。」 アソード
アソードは、阿蘇地方で採れる赤土を利用した100%天然のA飼料です。使用開始後、種付けが悪かった牛が種付けに成功するようになったり、これまで30万ほど出てペナルティを受けていた体細胞数も安定して20万台に落ち着きました。地元の酪農家であるミルン牧場の横尾さんも愛用しており、牛の健康状態が急速に改善したと高く評価しています。今後さらに良い結果を期待して使っていきたいと話していました。
Writer_Y.Eguchi
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株式会社ハマンダ D.F. 松本浩文・裕子
佐賀県 唐津市 搾乳牛:105頭、乾乳牛:15頭、未経産牛:7頭、子牛:13頭、預託牛:25頭 取材日:2024年6月25日
乾物摂取改善の極意と自然体の運営
記者「まずは松本さんの牧場でこだわっているポイントを教えていただけますか?」
松本浩文さん「とにかく牛の乾物摂取量を最大化することです。牛がたくさん食べることが健康の鍵だと考えています。牛が健康でいられるためには、まずしっかり食べてもらうことが重要です。そのため、草の質や飼料のレシピに工夫を凝らし、食い込み量を最大限に引き上げるよう努めています。結果として、うちの牧場の牛の乾物摂取量は他の牧場よりも高い実績を持っています。これは私たちのこだわりであり、成功の要因だと思います。」 記者「その食い込みについて、具体的な比率や方法を教えていただけますか?」 松本浩文さん「一般的には配合飼料と草の比率が6:4と言われていますが、うちの場合は5:5、場合によっては草の比率がもっと多くなることもあります。飼料を薄くたくさん与えることで、牛が自然に多くの草を摂取できるようにしています。この方法により、牛の健康状態が向上し、特に下痢の減少などの改善が見られます。」 記者「この方法で牛の健康状態にどのような改善が見られましたか?」 松本浩文さん「昔からこの方法で飼育しているため、急激な変化は感じませんが、病気の発生は少ないと感じています。特に分娩前後の疾病の数や出費が少ない傾向にあります。事故率も低く、これは自然な飼い方が影響しているのではないかと思っています。経営診断でも、事故率の低さが評価されています。」 記者「奥様の方ではこだわっている運営方法などございますか?」 松本裕子さん「私自身、45歳で牧場に入り、前職の経験を生かして運営を行っています。現在は技能実習生もいるため、全体の運営が円滑に進むように心がけています。実習生が休みの日には私も作業に参加し、牧場全体の運営を見渡しながら、スタッフが安心して働ける環境作りを大切にしています。アイス工房も含め、全体がうまく回るように常に心がけています。」 ファームノートで見える化
記者「自分の牛の状態に点数をつけるなら、何点ですか?」
松本浩文さん「70点ですね。数字自体に特別な意味はありませんが、特に悪い点がないから70点としました。病気も少なく、牛乳の出も平均以上ですし、品質も悪くありません。また、先ほど話したように、食い込み量もしっかり確保できているので、全体的に大きな問題がないからこの点数です。」 記者「この70点を100点にするためには、どのような改善が必要ですか?」 松本浩文さん「繁殖成績の向上が鍵ですね。発情の発見率や受胎率、妊娠率などの数字を改善することで100点に近づけたいと考えています。具体的には、獣医さんに定期的に繁殖検診をしてもらい、特に卵巣の状態を詳しくチェックしてもらうようにしています。それに基づいて、飼料の大幅な変更は避けつつ、少しずつ調整を加えています。」 記者「今後の繁殖改善のために、具体的にはどのような取り組みを考えていますか?」 松本浩文さん「現在はAI(人工授精)を中心に行っていますが、最近ではホルスタインの受精卵移植にも手を付け始めました。これにより、ミルク代にもならないオスが生まれるリスクを減らし、経営効率を高めることを目指しています。また、繁殖農家さんと連携し、地域全体での取り組みを進めています。」 記者「おすすめのアイテムや道具について教えてください。」 松本浩文さん「ファームノートカラーというアプリを使っています。これまでは手書きの繁殖台帳で管理していましたが、見づらくて把握が難しい部分がありました。ファームノートカラーを使うことで、データが見やすくなり、グラフや表で一目で状態を把握できるようになりました。これにより、経営判断や改善点の把握が格段にしやすくなりました。」 『成せば成る』精神で切り開く酪農の未来
記者「奥様に質問です。酪農の方々の働き方についての考え方を教えていただけますか?」
松本裕子さん「それは私が特に力を入れて伝えたい部分です。今年、全国酪農青年女性会議で九州代表に選ばれ、7月に名古屋で発表させていただきます。テーマは主に女性の働き方ですが、畜産全体に携わる方々に向けたメッセージです。牛飼いは常に牛舎にいることが理想ですが、365日24時間の忙しさは異常です。私はサラリーマン経験があるので、酪農家の働き方がいかに過酷か理解しています。酪農家がこのような働き方を続けていては、次の世代が酪農を志望することはありません。だからこそ、酪農家でも楽しんでいる姿を見せることが大切です。リフレッシュの時間を持ち、他の畜産仲間と勉強し合うことで、仕事のモチベーションを保つサイクルを作るべきです。ワークライフバランスを整え、酪農家が持続可能な働き方を目指していくことが必要だと思います。」 記者「最後に、座右の銘を教えてください。」 松本浩文さん「『成せば成る』という言葉が私の座右の銘です。今はそこそこの成績を上げていますが、昔はそうでもありませんでした。あちこち視察に行き、他の農家の成功を見て、『この人ができるなら、俺にもできる』と思っていました。目標を明確に決めていたわけではありませんが、『やればできる』という気持ちで取り組んできました。その結果、20年、30年後には成績が上がっていました。常に自分より上の人を見て、『この人ができるなら、俺にもできる』と思いながら努力してきました。」 記者「具体的な成功体験やエピソードがあれば教えてください。」 松本さん「はっきりとした目標は設定していませんでしたが、『絶対に良くなる』と思って努力を続けました。例えば、地域全体の底上げを目指して、協議会の役員として活動したり、他の地域から技術支援を受けたりしてきました。自分だけでなく、地域全体の繁殖成績や経営の改善に取り組んできました。これらの取り組みが、『成せば成る』という座右の銘に繋がっていると思います。」 ファームノートカラー
ファームノートカラーは、畜産経営を効率化するアプリです。データを見やすいグラフや表で表示し、一目で状態を把握できるため、経営判断や改善点の把握が格段に容易になります。
Writer_T.Shimomuro
齋藤牧場 齋藤潤也
熊本県 菊池市 搾乳牛:68頭、乾乳牛:5頭、育成牛:7頭、預託牛:30頭 取材日:2024年4月22日
乳房炎ゼロへの道: 齋藤牧場の革新的対策
記者「齋藤さん、まずは牧場での乳房炎予防に対する基本戦略について教えていただけますか?」
齋藤さん「当牧場では、乳房炎、特に急性のものを防ぐことに最大限の注力をしています。乳房炎の大きな原因は、乳頭孔からの原因菌の侵入です。特に搾乳後は乳頭孔が開いているため、その時間が最もリスクが高くなります。ですので、搾乳直後の乳頭管理には特に気を使っています。」 記者「具体的な対策として、どのようなことを行っているのでしょうか?」 齋藤さん「まず、搾乳直後に牛に最良の餌を与えることで、牛がすぐに横になることなく活動的に留まるよう促します。これにより、乳頭が床に接触し原因菌が侵入するリスクを著しく減少させています。また、搾乳前には飼槽通路を徹底的に掃除し、牛がリラックスして反芻できる環境を整えることで、ストレスの管理にも力を入れています。」 記者「搾乳後の乳頭孔の保護についても興味があります。具体的にどのような方法を取り入れているのですか?」 齋藤さん「搾乳後に高品質な餌を与えることで、牛が食べている間に乳頭孔が自然に塞がるよう工夫しています。これにより、開いた乳頭孔から原因菌が侵入するリスクを減らすことができ、乳房炎の発生を効果的に防ぐことが可能です。」 記者「万が一乳房炎が発生した場合の対応についても教えてください。」 齋藤さん「乳房炎の初期発見時には、すぐに抗生物質を使用するのではなく、まずは乳房内の毒素を排出させることに注力します。また、生理食塩水を使用して乳頭内を洗い流すことで、問題を根本から解決しようと努力しています。これにより、牛の健康を守りながら、乳房炎のリスクを最小限に抑えています。」 牛たちの幸福設計
記者「牧場における牛の健康管理について、現在の評価はどうですか?」
齋藤さん「私たちの牧場では、牛の健康状態に80点の評価を与えています。この点数は主に自給飼料を中心にした餌管理によるもので、乳成分の変動がこの評価に影響を与えることがあります。この変動に対応するため、必要に応じて餌の配分を調整し、乳成分の値を改善する取り組みをしています。」 記者「牧場運営で直面している主な課題とその対策について教えてください。」 齋藤さん「現在、最大の課題は人手不足です。牧場は私と妻の二人で運営しており、労働力が足りない状況です。また、資材の高騰も大きな負担となっています。ですので人手を増やしたり、効率的な作業というのが解決策になってくると思います。また、牛の状態に関してはベッド数を増やし、1頭あたりの広さを9平米以上に拡張することで、より多くの牛を健康的に管理する方針です。牧場の空いたスペースを有効活用し、拡張して効率的な管理を目指しています。」 記者「斎藤さんのおすすめのアイテムや道具はありますか?」 齋藤さん「私たちのオススメは「リーシュア」というコリン製品です。これは端的に説明すると「脂肪肝」を防ぐ商品になります。脂肪肝は酪農家が直面するトラブルの中でもトップクラスに多く、お産事故や食欲不振、衰弱につながります。そういった分娩時のトラブルを防ぎ、肝臓に脂肪が溜まるのを防ぐことで牛がエネルギー源として体脂肪を使用する際のリスクを大幅に減らすことができます。」 人生楽ありゃ苦もあるさ
記者「齋藤さん、牧場運営で特に影響を受けた師匠や尊敬する人物はいらっしゃいますか?」
齋藤さん「いえ、私たちは特定の師匠や模範とする人物を持たず、多くの先輩や他人の失敗から学ぶことを重視しています。真似をするのではなく、失敗談を共有してもらうことで、何をすべきでないかを学ぶのです。」 記者「失敗から学ぶというのは、具体的にどのような影響が牧場運営にありますか?」 齋藤さん「たとえば新しい飼料の導入時に問題が発生した経験から、新しい試みを行う前にはより慎重になりました。良かった情報だけ聞いて試してもその農家ごとに結果は変わってくるものです。ですが、よくなかったこと、失敗はどの農家も共通することで、それから学び同じようにならないためにはどうしたらいいかを考えることの方が価値があります。ですので私たちの牧場では失敗から悪かった部分を分析し、将来の対策に役立てるようにしています。」 記者「日々の運営で、どのような座右の銘を持っていますか?」 齋藤さん「私の座右の銘は『人生楽ありゃ苦もあるさ』です。これは多くの失敗を経験してきたことと、成功よりもその過程を楽しむことの重要性を示しています。楽しいと感じることが、日々の仕事のモチベーションにつながっているんです。だからいつも完璧な目標は立てません。大ざっぱな目標を立てて少しずつ改善をしていくことでモチベーションを保ちながら、常に完成に向けて段階的に改善しています。このアプローチが、持続可能な成長と楽しい経営を支えているのです。」 リーシュア
脂肪肝を予防する酪農用コリン製品です。脂肪肝を防ぐことによって分娩時のトラブルや食欲不振、牛の衰弱を防ぐことで、酪農家が直面する問題を大幅に軽減すると話していました。
Writer_T.Shimomuro
有限会社ビーユーファーム 宇藤文三
熊本県 阿蘇郡 搾乳牛:180頭、乾乳牛:20頭、育成子牛:90頭 取材日:2024年4月8日
効率と持続可能性を追求する
記者「宇藤さんが牧場運営について特に力を入れていることを教えていただけますか?」
宇藤さん「はい、私たちは特に飼料供給の最適化に力を入れています。例えば、穀物の年間消費量に基づいた飼料計算を行い、飼料の最適化を図っています。また、消化率を高めるために、繊維質を豊富に含んだカシューセルミールを導入して、健康的な牛の育成に努めていますね。」 記者「そのカシューセルミールの使用はどのような効果がありましたか?」 宇藤さん「カシューセルミールの導入によって、牛の消化率が向上し、糞の質も良くなりました。結果として、牛たちはより健康になり、乳量の増加にもつながっています。これにより、生産効率が格段に上がり、経済的な利益も増えています。」 記者「リストラクチャーサポートによるコンサルティングはどのようなものでしたか?」 宇藤さん「リストラクチャーサポートからは、繁殖台帳の整理や、牛の健康状態を把握する方法など、具体的な管理技術のアドバイスを受けています。これにより、日々の管理がより効率的に、かつ詳細に行えるようになりました。」 改善への道:牛たちの障害と闘う
記者「自分の牛の状態に点数をつけるとしたら、何点ですか?」
宇藤さん「うちの牛たちは全体として見て50点ですね。まだまだ改善の余地がありますが、一定の質は保っています。」 記者「その50点の理由は具体的にどのようなところにありますか?」 宇藤さん「50点の大きな理由は、個々の牛に対するケアの必要性です。特に障害がある牛が年間で約1割おり、これが総合評価を下げています。ただ、育成や種付けは順調に進んでいるため、基本的な管理はうまくいっていると言えます。」 記者「障害を持つ牛が増える原因は何だと考えていますか?」 宇藤さん「障害の増加は、集団での飼育が一因かと考えています。それによるストレスや、遺伝的な問題も無視できません。これには、もっと個別に対応する育成方法の見直しが必要です。」 記者「では、そのような課題を解決するために具体的にどのような改善策を考えていますか?」 宇藤さん「改善策としては、牛一頭一頭に合わせたケアを徹底し、可能な限り個別での注意深い管理を行うことです。また、監視カメラの導入で夜間の分娩など、見逃しがちな問題にも迅速に対応できるようになりました。これにより、手遅れになるケースを減らし、全体の健康を向上させたいと考えています。」 牧場運営の成功への鍵
記者「新規就農者の方々へのアドバイスとして、過去の失敗から得た教訓を教えていただけますか?」
宇藤さん「私の失敗の一つに、発情の兆候を見逃すことがありました。これは非常に重要で、見逃すと繁殖サイクル全体が乱れてしまいます。普段から牛の様子にしっかり目を配り、繁殖のタイミングを逃さないようにすることが肝心ですね。発情の見逃しは、結果として乳量の低下や牛の健康問題を引き起こしました。さらに、繁殖サイクルが遅れると、結果的には牛の入れ替えや高額な費用が必要になるなど、経営にも大きな負担がかかります。」 記者「では、これから牧場を始める新規就農者への具体的なアドバイスは何ですか?」 宇藤さん「新規就農者の方は特に、繁殖サイクルの管理に細心の注意を払うことが重要です。万が一のためにも、発情の兆候を正確に捉えるためのツールやシステムの導入をお勧めします。これが牧場の安定した運営に直結します。」 記者「宇藤さんの経験から、牧場経営の成功の鍵は何だと思いますか?」 宇藤さん「成功の鍵は、日々の努力と細かな観察です。毎日の管理と観察を怠らず、牛一頭一頭の健康や状態を正確に把握することが、高い生産性と効率的な牧場運営につながります。」 監視カメラ
夜間に気付かない出産が頻繁に起きていましたが、監視カメラの導入でそれが解消されたと話していました。
出産のタイミングにとても役立っています。 また、昼間に誰もいない時でも牛を遠隔で見られるためとても便利です。
Writer_Y.Eguchi
株式会社アドバンス 永田浩徳
熊本県 菊池市 預託牛:220頭 取材日:2024年3月26日
地域を支える力―アドバンス社の畜産業革命
記者「アドバンス社は畜産業界でどのような役割を果たしていると思いますか?」
永田さん「私たちアドバンス社は、畜産業界において、まさに中心的な役割を担っております。地域畜産業の基盤となる大規模自給飼料生産を通じて、酪農家の経営改善を実現しているんです。約600筆の農地でトウモロコシを栽培し、高品質で安価な飼料を製造しています。さらに、地域連携を深め、酪農家だけでなく、和牛産業の振興にも寄与しています。女性の活躍も促進し、地域全体の畜産業を支える基盤を築いているんですよ。」 記者「アドバンス社の取り組みで、具体的にどのような成果がありますか?」 永田さん「具体的な成果としては、まず、我々の活動により飼料コストの削減と生産性の向上を実現しています。例えば、地域の酪農家には、年2回、ニーズに合わせた発酵TMRを提供し、それにより平均して1頭当たりの日乳量を県平均より1割増加させることに成功しました。さらに、育成牧場を併設することで、酪農家の負担軽減に貢献しており、和牛の子牛供給を開始することで、地域の和牛生産者へのサポートも行っています。女性の活躍に関しては、事務作業から生産管理まで、多岐にわたって女性を積極的に採用し、職場での多様性を実現している点も大きな成果の一つです。」 地域と共に育む、畜産業の新たな価値
記者「永田さん、今回の天皇杯受賞を受けて、今後の農家の経営や技術向上に向けた取り組みについて教えてください」
永田さん「この受賞は私たちだけでなく、地域全体の努力の結晶です。今後は、新規就農者への飼料供給をはじめ、経営の効率化や技術の向上を図りながら、より多くの農家が持続可能な経営を行えるようサポートしていく計画です。さらに、地域の自給飼料基盤の強化や畜産業の発展に貢献していくことで、地域農業全体の競争力を高めていきたいと考えています」 記者「永田さんの取り組みで注目される点は何ですか?」 永田さん「私たちの取り組みの最大の特徴は、大規模な自給飼料生産を通じて、高品質で安価な飼料を提供し、農家の経営改善に貢献している点です。さらに、ICT技術を活用した効率的な農地管理や、地域連携を強化することで、酪農だけでなく和牛産業の振興にも寄与しています。これらの取り組みが地域畜産業の持続性向上に貢献していると自負しています」 記者「地域や他の農家との連携についての具体的な例を教えてください」 永田さん「具体的な例としては、地域のキャトルブリーディングセンターと連携し、黒毛和種の受精卵を移植した和牛子牛の供給を行っていることが挙げられます。これにより、地域の和牛生産者に対して高品質な子牛を安定供給し、地域畜産業の振興に貢献しています。また、新規就農者への支援や農地集積による耕作放棄地の解消など、地域全体の農業基盤を強化するための取り組みも積極的に行っています」 記者「アドバンス社の今後の展望について教えてください。」 永田さん「当社の今後の展望は、さらなる地域畜産業の発展への貢献にあります。具体的には、作業受託面積およびTMR製造量の拡大、育成牧場の預託頭数の増加を図り、さらに新規就農者への飼料供給による支援を強化していきます。これにより、酪農家の経営延長への支援が可能となり、地域の畜産業全体の持続可能な発展を促進していきたいと考えています。地域での耕作放棄地を減らし、地域農業の活性化にも寄与していく予定です。」 真剣に生き、知恵を絞る農業
記者「永田さんが尊敬する師匠や目標としている方について教えてください。」
永田さん「私の農業における指針となる人物は、糸岡敏治さんと元JA職員の中村さんです。糸岡さんは、私たちの世代が皆尊敬する大先輩で、農業技術だけでなく、人間としても大きな影響を受けました。中村さんに至っては、JA職員でありながら、私たち農家の身近な存在として、常に支援を惜しまず、新しい挑戦を後押ししてくれました。彼らのおかげで、私たちは地域農業の活性化だけでなく、日々の業務においても多大な進歩を遂げることができました。」 記者「最後に、永田さんの座右の銘や、日々の業務を行う上で心がけていることはありますか?」 永田さん「私の座右の銘は、「真剣だと知恵が出る」です。農業を行う上で、日々様々な困難に直面しますが、真剣に取り組むことで、これまで見えなかった解決策や新たなアイデアが浮かんでくるんです。この言葉は、私たちの牧場で働くすべての人々にとっても共有される価値観であり、一生懸命に仕事に取り組むことの大切さを示しています。成功した時はみんなのおかげ、失敗した時は自分の責任と捉え、常に前向きに努力を続けることが、私たちの牧場を支える基本的な姿勢です。」 記者「その座右の銘を選んだ理由は何ですか?」 永田さん「この言葉を選んだのは、農業においても、生活においても、真剣に取り組む姿勢が最も重要だと考えるからです。農業は予測不可能な要素が多く、計画通りに進まないこともしばしばあります。しかし、真剣に取り組むことで、思わぬ知恵やアイデアが生まれ、困難を乗り越えることができるんです。この座右の銘は、私自身の経験に基づいており、日々の業務で直面する様々な課題に立ち向かう勇気とインスピレーションを与えてくれます。」 記者「永田さんが考える農業の未来についてはどうでしょうか?」 永田さん「農業の未来は、革新的な技術の導入と、地域社会や消費者との連携強化にかかっています。私たちは、持続可能な農業を目指し、エコフレンドリーな方法で生産活動を行っていく必要があります。また、消費者に対して、私たちがどのように食材を生産しているのかを透明に伝え、信頼を築いていくことも重要です。真剣に農業に取り組むことで、新しい挑戦を乗り越え、より良い未来を築いていくことができると信じています。」 ワイヤーメッシュ
イノシシや鹿などの鳥獣害対策として使用しています。
近辺での鹿の被害問題が頻発し困っていたので導入しました。 まだ使用して間もないため今後の鳥獣害の対策状況に期待していると話されていました。
Writer_T.Shimomuro
風間牧場 風間健太
熊本県 菊池郡 経産牛:40頭、未経産牛:4頭、預託牛:7頭、F1:7頭 取材日:2024年3月19日
健康管理から生まれる、高繁殖成績の秘訣
記者「風間さんの牧場の繁殖成績が優れていると聞きましたが、具体的にどのような技術や工夫をしているのですか?」
風間さん「私たちの牧場では、分娩後の牛の健康管理に特に力を入れています。特に、分娩後すぐの立ち上がりを良くするために、分娩後の一般的な病気を未然に防ぐ予防策を施しています。例えば、適切な栄養管理と予防的な薬の投与を行い、病気のリスクを極力減らしています。これにより、牛が健康で生産性が高まり、結果として繁殖成績を向上させています。」 記者「分娩後の健康管理で特に注意している病気はありますか?」 風間さん「はい、分娩後によく見られる病気には、低カルや変胃、ケトーシスがあります。これらの病気にかかると、牛が立ち上がれなくなったり、餌を食べなくなることがあります。これらの病気を事前に防ぐために、カルシウムや酸化マグネシウムを適切に投与しています。分娩前後にこれらの栄養素をしっかりと管理することで、病気の発生率を下げ、牛の健康を守っています。」 記者「オール購入についてはどのような理由からですか?」 風間さん「私たちの牧場では、労働力と餌を生産するための土地が限られているため、全ての飼料を外部から購入しています。これにより、より専門的な管理に集中することができ、牛の健康と生産性の向上に直結しています。飼料購入には確かにコストがかかりますが、私たちの牧場では、生産性の向上に成功しています。例えば、年間の乳量平均が36kg出ており、また繁殖成績もほぼ一年一産できてきています。このように、初期投資は大きいものの、結果として高い生産性を実現しているため、経済的にも成り立っています。」 繁殖と乳量のバランス:90点からの挑戦と進化
記者「自分の牛の状態に点数をつけるなら、何点になりますか?」
風間さん「私は自信を持って90点と評価します。繁殖がうまく回っている点と、安定した乳量を維持できていることが大きな理由です。分娩後の健康管理や栄養管理に力を入れ、予防的な対策を徹底しています。このような取り組みが、良好な繁殖成績と乳量を支えています。」 記者「その90点を100点にするためには、どういう点が改善される必要がありますか?」 風間さん「さらなる改善点としては、特に乳量の向上が挙げられます。最近、飼料の質の見直しや、より能力の高い牛を導入することで、乳量を増やす基盤が整ってきました。今は、この土台の上でさらに乳量を上げていく段階にあります。繁殖成績を落とさずに乳量を増やすことが、今後の大きな挑戦です。」 記者「おすすめのアイテムや道具はありますか?」 風間さん「暑熱対策として高圧洗浄機が非常に役立っています。夏場に牛に直接水をかけることで、涼しさを提供しています。また、屋根には遮熱塗料を塗ることで、上からの熱を軽減し、牛が快適に過ごせるようにしています。これらの対策は、牛のストレスを減らし、健康を維持するのに重要です。」 調子に乗らず、めんどくさがらず
記者「新規就農者へのメッセージや、過去に失敗した経験から学んだ教訓を教えてください。」
風間さん「やらかした経験はありますね。特に、乳量を増やそうとして調子に乗り過ぎた結果、牛が痩せてしまったことがあります。大切なのは、牛の健康を最優先に考えること。つまり、カウコンフォート、牛への配慮を怠らないことが重要です。そして、牛の日々の状態を見極める観察力を磨くこと。細かい変化に気づき、適切な対応をすることが、良い繁殖成績への道です。」 記者「地域との関係構築についてはどう感じていますか?」 風間さん「地域の人々との関係も非常に大切にしています。新規就農者にとって、地域との良好な関係は、様々な支援や協力を得る上で不可欠です。農業は個人の努力だけではなく、周囲の人々との協力が成功への鍵となります。」 記者「風間さんの座右の銘や仕事に対する姿勢を教えてください。」 風間さん「私の座右の銘は「めんどくさがらずにやる」です。宮崎駿監督が言っていたことで「いいアニメを作るためにはものすごくめんどくさい作業がたくさんある。それを1つ1つきっちりやっていくことがいいアニメを作る秘訣」と言っていて、仕事も一緒だと思ったんですよね。農業には地道で、時にはめんどくさいと感じる作業もたくさんあります。しかし、その一つ一つを丁寧にこなすことで、良い結果が得られます。例えば、分娩後の管理など、大変な作業も念入りに行うことが、牧場全体の品質を高め、良い繁殖成績につながります。」 記者「新規就農者に伝えたいことはありますか?」 風間さん「はい、飼料に関してです。経費節約のために飼料をケチることは絶対に避けるべきです。良質な飼料を十分に与えることで、牛は健康を維持し、良い成績を返してくれます。結局、良い繁殖成績を維持するためには、牛の健康が土台になります。」 高圧洗浄機
暑熱対策として夏場に高圧洗浄機で牛に直接水をかけるそうです。
こうすることで牛の暑熱によるストレスを減らし、健康を維持できています。 堆肥場に追いやって行うのでソーカーや細霧よりもベッドに細菌が繁殖せず清潔さを保てると話していました。
Writer_Y.Eguchi
宮本牧場 宮本晴二郎
熊本県 玉名市 搾乳牛:156頭、乾乳牛:19頭、育成牛:25頭 取材日:2024年3月7日
小さな調整で大きな改善を
記者「宮本さんの牧場でのバランスに重きを置く飼育方法について、具体的な取り組みはありますか?」
宮本さん「はい、うちの牧場では、全てがバランスが鍵となります。牛の健康状態、乳量、そして繁殖能力のバランスを見極め、必要に応じて調整を加えることで最適な状態を保っています。乳成分や体調、乳量、さらには便の状態や食事の選り好みまで、全ての要素を総合的に評価し、細かな調整を行うことで、牛たちの健康を維持し続けています。特別な魔法のようなことはしていませんが、日々の観察と調整がうちの強みです。」 記者「最近、牛の状態が改善された具体的な例を教えていただけますか?」 宮本さん「今年は特に、乳量の増加に成功しました。春になると乳量が一気に増える傾向にあり、それに対応するため飼料のメイズ(とうもろこし)の割合を増やすなど、エネルギーの補給を意識しています。その結果、嚢腫が大幅に減少し、繁殖も順調に行われています。毎年のように試行錯誤していますが、今年は過去最高の成果を実感しております。」 記者「飼料にメイズを使用する理由は何ですか?」 宮本さん「メイズはエネルギーが豊富で、牛たちにとっても大変良い飼料です。また、輸入品であることから価格は多少上がることもありますが、品質が安定しており、鮮度が落ちたりカビが生える心配が少ない点も大きなメリットです。」 記者「最近、獣医からの指摘で改善したことはありますか?」 宮本さん「実は、直接的な獣医からの指摘での改善は少ないです。しかし、獣医とは密接に連携を取りながら、特に繁殖に関しては共に取り組んでいます。例えば、受精卵移植の際には獣医の専門的な意見を仰ぎながら進めています。目から鱗のような大きな発見は少ないですが、日々の細かな連携が大きな力となっています。」 バランスを求めて
記者「自分の牛の状態に点数をつけるとしたら、いくつですか?」
宮本さん「私たちの牧場の牛たちは、全体的に60点くらいだと思います。これは決して完璧ではないですが、平均よりは上だと自負しています。その理由は、うちの牧場が常にバランスを考えた飼育を心がけているからです。しかし、まだまだ改善の余地は大きく、他の牧場から学ぶべき点も多いですね。」 記者「今後、どのようにして残りの40点を獲得しようと考えていますか?」 宮本さん「残りの40点を目指すには、まずは知らないこと、まだ実践していない新しい技術や方法を学ぶ必要があります。たとえば、平均よりも高い乳量を実現している牧場の例を参考にし、彼らがどのようにバランスを取っているのかを理解することが鍵になります。常に学び続け、試し続ける必要があるのです。」 記者「効率化や作業の簡素化に役立つおすすめのアイテムはありますか?」 宮本さん「はい、我々が大変役立っているのが、ロールを簡単に切断できる装置です。これはトラクターの前に取り付けて使用し、特に水分量が少ない飼料を扱う際に大変便利です。手で裂くのが難しいとき、この装置を使うことで、効率的に飼料をミキサーに供給することができます。また、この装置のおかげで、トラクターへの負担も減り、作業効率が大幅に向上しました。これは私たちにとって、非常に価値のある投資でした。」 情熱と適度な怠けの間で
記者「師匠や目標にしている人物はいますか?」
宮本さん「私の目標としているのは父です。父は牛に関しては、とても情熱的で、そのために「変態」と表現することもありますが、その一途さは理解できます。実は、北海道の牧場で修行を積んでから熊本で牧場を立ち上げた経歴を持っており、そうした経験を通じて培った知識と技術を、私は尊敬しています。私は父のようになりたいわけではありませんが、彼から多くを学び、自分なりの飼育方法を見つけていきたいですね。」 記者「今後の目標や目指している点はありますか?」 宮本さん「私の座右の銘は「適度に怠ける」ことです。必要な時には全力を尽くしますが、人生や仕事においてはバランスが大切だと考えています。仕事だけでなく家族との時間や自分の趣味にも時間を割くことで、充実した生活を送ることが目標です。私は美容師を経験した後に牧場経営に携わるようになりましたが、その多様な経験が今の私を形作っています。挫折や挑戦を経て、現在に至るまでの経験は、牧場運営においても柔軟な考え方を持つことに役立っています。まわりには多くの人たちが支えてくれているおかげで、今があります。」 McHale
トラクターの前に取り付けて使用し、ロールの裁断に使用します。以前はミキサーにペットボトルなどの混合物が含まれてエサに混入する危険性や故障の原因になっていましたがこれを使うようになってリスクが激減しました。宮本さん愛用の重機です。
Writer_T.Shimomuro
田上牧場 田上直人
熊本県 菊池郡 搾乳牛:38頭、乾乳牛:5頭、子牛:9頭 取材日:2024年2月29日
骨から皮膚まで、牛の選び方完全ガイド
記者「宮本牧場での修行を通じて、どのような知識や技術を得られましたか?」
田上さん「宮本牧場での修行は、本当に基礎から学ぶことができました。最初は牛の扱い方や機械の操作方法など、基本的なスキルを身につけることから始まりました。それから徐々に、飼料の混ぜ方、TMR(全混合飼料)の配合、さらには飼養管理や繁殖技術についても学び、実際に人工授精を行う機会もありました。」 記者「牛の選び方について詳しく教えてください。どのようなポイントに注目すればいいのですか?」 田上さん「牛を選ぶ際は、まず皮膚の質感が大切です。皮膚を引っ張ったときに、柔らかくて伸びる「シーツのような」皮膚を持つ牛と、硬くて伸びない「毛布のような」皮膚を持つ牛がいます。宮本さんからは、常にシーツのような柔らかい皮膚を持つ牛を選ぶようにと教わりました。この質感は触ることで判断でき、牛の健康状態や飼料の吸収率にも関連しています。」 記者「それ以外にも選び方のポイントはありますか?」 田上さん「はい、乳頭の形状も重要なチェックポイントです。小指のような形をした乳頭が理想的で、これは搾乳性にも影響を及ぼします。さらに、骨格に注目し、角が尖っているような、カクカクした骨格の牛を選ぶことが重要です。」 記者「腹がしっかりしているかどうかも選び方の一つとして挙げられていましたが、その見分け方はありますか?」 田上さん「腹がしっかりしているかどうかは、肋骨の開き具合や腹部の形状で判断します。例えば、前から見てリンゴのように肋骨が張っている牛は、飼料の食い込みが良い傾向があると言われています。反対に、洋梨のような形の牛は食い込みが悪いとされます。このように、見た目からも牛の健康状態や飼料の食い込みを判断することが大切です。」 カウコンフォートの改善を求めて
記者「自分の牛の状態に点数をつけるとしたら、どのように評価しますか?」
田上さん「カウコンフォートは比較的できていると思うので70点くらいだと考えています。その理由は、主に牛舎の環境や飼育方法にあると思います。強いて言うなら牛舎が狭く、牛たちがストレスを感じやすい環境にあるため、マイナスポイントとして30点引いています。また、一部の牛が若干痩せ気味で、エネルギー不足に陥っている点も改善が必要です。」 記者「その改善点について、具体的にどのような対策を考えていますか?」 田上さん「12月から飼料の調整を始めて、少しずつ状態が改善してきています。飼料の量を増やし、乾物摂取量も上げることで、牛たちの体調を良好に保とうとしています。これにより、牛たちのエネルギー不足を解消し、体がふっくらしてくることを目指しています。」 記者「配合飼料を増やすことに関連するリスクはありますか?」 田上さん「はい、配合飼料を急に増やすことにはリスクが伴います。特に足の健康や胃の酸性度、下痢のリスクが上がる可能性があります。ですから、増やす際には慎重に行い、牛たちの健康状態を細かく観察しながら調整しています。配合飼料を増やした結果、足の裏が赤くなったり、鼻水が出たりするサインを見逃さないようにしています。これらはアシドーシスの兆候であり、早期に対処することが重要です。」 記者「100点満点に向けてどのような取り組みが必要だと思いますか?」 田上さん「100点に近づけるためには、まずは飼料の質と量の最適化から始めています。そして、牛舎の環境改善を進めて、牛たちがストレスなく生活できる空間を作ることも重要です。これらの基本的な条件が整えば、牛たちの健康はもちろん、乳量や繁殖能力にも良い影響を与えることができると考えています。常に牛たちの状態を観察し、適切なケアを行うことが、目標達成には不可欠です。」 STEP by STEP
記者「牧場経営において、おすすめのアイテムや道具はありますか?」
田上さん「私たちの牧場では、特にロータリーとトラクターを重宝しています。特にロータリーは、コンポストバンを毎日2回耕すために必須です。それによって、発酵を促進させ、熱を使って病原菌を殺すことができるのです。また、これを使用することで、牛の寝床をふかふかに保ち、高齢牛でもストレスなく過ごせる環境を提供できます。これは乳房炎の抑制や体細胞数の低下にもつながり、牛の健康維持に非常に効果的です。」 記者「尊敬されている宮本さんについてもっと詳しく教えてください。彼の人となりや、あなたが目標としている理由は何ですか?」 田上さん「宮本さんの最も印象的な点は、彼の牛に対する飼養管理の技術や、見る目の鋭さです。彼ほど牛のことを深く理解している人は他にいないと思います。また、宮本さんは新規の牧場経営者として、自分自身で牧場を立ち上げ、多くの成功を収めてきました。彼の経営技術や牛への深い理解は、私が学びたいと思う大きな理由です。宮本さんから学んだことは、私の経営のベースになっています。」 記者「座右の銘について教えてください。」 田上さん「私の座右の銘は、『STEP by STEP』です。これは、ゆっくりでもいいので一歩一歩前進し続けようという意味です。しかし、同時に停滞を許さない、現状維持は後退だという強い意志を持っています。農業の現状は厳しいものがありますが、その中でいかに自分の牧場を成長させ、収入を上げていけるか、常に挑戦する心が大切です。失敗を恐れず、挑戦し続けることで、失敗から学び、それが結果的に成功へとつながると信じています。」 ロータリー
このロータリーを使うことで堆肥の発酵を促進させ、熱を使って病原菌を殺すことができるそうです。それ以外にも牛の寝床をふかふかに保ち、高齢牛でもストレスなく過ごせる環境を作ることができます。カウコンフォートにとことんこだわった田上さんならではのアイテムです。
Writer_T.Shimomuro
田中牧場 田中栄一
熊本県 菊池市 経産牛:65頭、肥育牛:30頭、子牛:30頭 取材日:2024年1月31日
牛たちの健康を第一に
記者「田中さんの牧場で自分の牛の状態に点数をつけるなら、何点ですか?」
田中さん「私たちの牧場での牛たちの状態は、全体的に70点くらいかなと思います。なぜ70点かというと、一番の自慢は、牛たちが比較的清潔に保たれている点です。常に清潔さを保つことで、牛たちの健康を守り、病気のリスクを減らし、牛たちの快適さの確保に努めています。」 記者「プラス30点を得るためにはどのような工夫や改善が考えられていますか?」 田中さん「私たちは、受胎率の向上に注力しています。具体的には、発情周期が不明瞭な牛が少なくなるように管理を徹底しています。空胎日数を短縮し、分娩間隔を最適化することで、生産性を向上させ、牧場全体のパフォーマンスを高めることを目指しているんです。このような綿密な管理により、結果的に牛乳の生産量を増やし、牧場の収益性を高めることを目指しているんです。」 リラックスと栄養の融合
記者「他の牧場とは異なる、特別な育て方をしている点があれば教えてください。」
田中さん「独自の取り組みとして、私たちは牛たちに音楽を聴かせています。音楽をBGMのように流すことで、牛たちがリラックスできるように心がけています。牛は非常に敏感な生き物で、周囲の環境変化に対してすぐに反応します。たとえば、雷が鳴ったり、工事の音がしたりすると、牛たちはすぐにそれを察知し、ストレスを感じやすいんです。だからこそ、穏やかな音楽を流すことで、そのような外部からのストレスを軽減しようとしています。」 記者「牛が感じるストレスにどのように対処していますか?」 田中さん「牛たちが感じるストレスを最小限に抑えるために、日常的に彼らがリラックスできる環境を作ることが重要です。音楽はその一環として非常に効果的で、特に近くで雷が鳴ったり、大きな音がしたりするときに、牛たちが落ち着いて過ごせるようにしています。また、音楽を流すことで、牛たちの心地よい状態を保つことにもつながります。私たちは、牛たちが快適に過ごせる環境を提供することで、ストレスによる影響を最小限に抑えることを目指しています。」 記者「快適さを保つために、具体的にどのような対策を講じていますか?」 田中さん「快適さを確保するために、私たちは牛舎の風通しの良さや、牛床の乾燥を重視しています。風通しを良くすることで、夏場の暑さ対策として効果的であり、牛床を乾燥させることで、牛たちがベタベタすることなく清潔な環境で休めるようにしています。これらの対策は、牛たちがストレスを感じることなく、健康的に過ごせるようにするためのものです。快適な環境を提供することは、牛たちの健康だけでなく、生産性の向上にも直接的につながるため、非常に重要な取り組みなんです。」 記者「その他、牛たちが快適に過ごせるようにするために心がけていることはありますか?」 田中さん「牛たちが快適に過ごせるようにするためには、日々の細かな気配りが必要です。例えば、気候や天気の変化に応じて、牛舎内の環境を調整します。寒い日は防寒対策を強化し、暑い日は風通しを良くして熱中症を防ぎます。また、牛床の清潔さを常に保つことで、乳房炎などの病気の予防にも努めています。これらの取り組み全てが、牛たちがストレスなく健康的に過ごすための基盤となっています。」 誠心誠意に全力投球
記者「座右の銘はありますか?」
田中さん「私が日々心に留めているのは、「誠心誠意」です。この言葉は、どんな時も誠実さをもって全力を尽くすことの大切さを示しています。現代の社会では、経済状況が不安定で何が起こるか予測が難しい時代です。そんな中で生きていくためには、仕事はもちろんのこと、人との関わりにおいても、誠実さと真摯な姿勢が非常に重要になってきます。この精神を持って日々を送ることで、どんな困難も乗り越えられると信じています。」 記者「誠心誠意を大切にする理由をもう少し詳しく教えてください。」 田中さん「誠心誠意という言葉は、単に仕事に対する姿勢だけではなく、人生のあらゆる面での基本姿勢を示しています。現在のように不確実性が高い時代では、この誠実さが人との信頼関係を築き、さまざまなチャンスを引き寄せる鍵となります。以前は形式的な関係や表面的なやり取りでも成果を出せたかもしれませんが、今は人々が心の奥底からの誠実さを重視するようになりました。誠心誠意を持って接することで、仕事だけでなく人間関係においても、より深い信頼と絆を築くことができるのです。」 ビタコーゲン
牛のエサをTMRで混ぜて与えているため通常は消化が悪いそうです。
そのため消化のサポート役としてビタコーゲンを使用していると話していました。
Writer_Y.Eguchi
有限会社ミルン牧場 横尾文三
佐賀県 佐賀市 搾乳牛:25頭 子牛:8頭 取材日:2024年1月23日
味わい深き低温殺菌牛乳
記者「横尾さんの牧場で、35年にわたってこだわり続けていることは何ですか?」
横尾さん「35年間、私は低温殺菌牛乳にこだわってきました。アメリカやフランスなど海外では一般的ですが、日本ではまだ珍しいですね。この方法で、牛乳本来の風味や栄養を守りながら、安全にお客様に提供することに尽力しています。」 記者「日本の牛乳産業と低温殺菌の関係について教えてください。」 横尾さん「戦後、日本の牛乳産業は急速に発展しましたが、低温殺菌の技術は導入されにくかったです。私たちは65度30分の低温で牛乳を処理し、高温殺菌がもたらす栄養価の損失や風味の変化を最小限に抑えています。」 記者「低温殺菌に固執する理由は何ですか?」 横尾さん「低温殺菌は牛乳の自然な風味や栄養素を保ちます。高温殺菌に比べて、消化しやすく、カルシウムなどの栄養素の吸収も良いんです。消費者にとって最も健康的で美味しい牛乳を提供するため、この方法を選んでいます。」 記者「牛乳の質について、どのように保証していますか?」 横尾さん「品質保証には細心の注意を払っています。低温殺菌により、牛乳の新鮮さと栄養価を保ちながら、体細胞数を30万以下に抑え、品質の高い牛乳を安定して供給しています。これにより、消費者に信頼される製品を提供できると確信しています。」 雪深き牧場の発酵の奇跡
記者「横尾さんが特におすすめする商品は何ですか?」
横尾さん「私たちの牧場では、特にビタコーゲンという発酵促進剤をおすすめしています。これは、動物にとって良い菌がブレンドされたもので、消化を助け、臭いを減少させる効果があります。実際、これを使用しない時期があったのですが、牛の調子が良くないと感じ、再び使用を始めると健康に戻りました。」 記者「その他にも最近出会ったA飼料があるとお聞きしましたがどのような効果があったのでしょうか?」 横尾さん「1か月ほど前にサンプルをもらい使った「アソード」というA飼料ですがあれは驚きました。過去にも見たことがないくらい子牛の毛ヅヤが良くなって輝いているように感じました。下痢も締まって目で見て健康になっていっていることが実感できました。また、カビ毒の吸着効果があるにも関わらず驚くほど価格が安価で、試算したら大きくコストカットできたためぜひ他の農家の方にも紹介したいと思った商品でした。」 記者「牛の日常のケアにおいて、どのような工夫をしていますか?」 横尾さん「私たちは、牛にとって最適な飼料の混合を常に心がけています。特に、冬は牛のカロリー消費が増えるため、適切な栄養を提供することが重要です。また、牛舎では、牛が快適に過ごせるように温度管理にも気を配っています。冬の寒さは牛にとっても大きなストレスですが、適切なケアによって健康を維持しています。」 記者「厳しい冬の環境の中でも、牛の健康を守るために特に注意していることはありますか?」 横尾さん「冬は特に厳しい季節で、気温がマイナスになることも珍しくありません。しかし、私たちは、牛がストレスを感じないように最善を尽くしています。例えば、雪が多い時期は牛舎の清掃や牛の体調管理にさらに注意を払います。経験を活かして、牛たちが健康で快適に過ごせるように日々努力しています。」 少量でも本物を!
記者「尊敬する農家の方はいらっしゃいますか?」
横尾さん「はい、何人かいますね。特に熊本の山田政晴さんを尊敬しています。彼は独自のオリジナル牛乳を作っており、委託販売に頼らずに自分の牛乳を消費者に届けたいという強い思いがあります。それぞれの農家が自分の個性を生かした牛乳を作り、多様性を持った農業経営を行っているのを見ると、私も大いに刺激を受けます。」 記者「山田政晴さんの取り組みの詳細について教えてください。」 横尾さん「山田政晴さんは、既存のやり方にとらわれず、自分の作った牛乳を個性的に売り出すことに成功しています。市場には同じような牛乳が溢れている中で、自分だけのオリジナル牛乳の質とこだわりを消費者に伝えることで、自らの牧場を際立たせています。それが山田政晴さんのすごいところです。」 記者「山田政晴さん以外にも、尊敬する農家はいますか?」 横尾さん「はい、古川牧場さんもとても尊敬しています。特に牛の改良に関しては国内でもトップクラスです。彼らは体格検査で高い点数を取る牛を多く育て、品質の高い牛乳を生産しています。また、松本牧場も経営の面で非常に優れており、厳しい状況の中でも安定した経営を続けている点に大きな敬意を抱いています。」 記者「座右の銘や、牧場経営における信念について教えてください。」 横尾さん「私の座右の銘は「少量でも本物を!」です。大量生産ではなく、質にこだわった本物の牛乳をお客様に提供したいという思いで経営しています。例えばJR九州の高級宿泊施設で私たちの牛乳が採用されるなど、本物志向の消費者に認められるように努力しています。小規模でも、真心を込めた良質な牛乳を届けることで、牛乳全体の消費を底上げし、本物の良さを広めることが私たちの使命だと思っています。」 ビタコーゲン
乳酸菌を含む多種多様な有益な菌がブレンドされており、牛の胃腸の健康を維持し第1胃の発酵を促進します。
これにより、ガスの蓄積やその他の消化器官の問題を防ぐことができるのだそうです。 牧場では、これを飼料に混ぜて毎日牛に与えています。 アソード
サンプルを1㎏使っただけで驚くほど子牛の毛ヅヤが良くなり健康状態が目に見えて改善されているように感じたそうです。また、牧草にカビが発生することが多くカビ毒吸着剤の使用頻度も多かったそうですが、アソードにはカビ毒吸着効果もあり、なおかつ価格がとても安かったことから今では愛用の商品なのだそうです。
Writer_T.Shimomuro
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