赤尾牧場 赤尾信一
熊本県 阿蘇市 親牛:11頭、子牛:9頭 取材日:2024年1月30日
ささやかな幸せを守る
記者「赤尾さんの畜産で特に重視されている技術や注意点について教えてください。」
赤尾さん「私たちの牧場では、牛たちの日々の様子を細かく観察することに最も重点を置いています。毎日の観察を通じて、彼らの健康状態や気分を把握し、最適なケアを提供することが私たちの技術の核心です。特に、便の状態や動きの活発さをチェックし、これらの細かな観察から健康な牛とそうでない牛を見分けています。」 記者「観察の中で最も注意を払っているポイントは何ですか?」 赤尾さん「私たちは、便の状態を最も重要な健康指標の一つと見なしています。便の様子から牛の健康状態を判断し、必要に応じて食事の調整やケアを行います。また、牛の動きや行動パターンの変化にも敏感で、これらの細かい変化を捉えることで、早期に健康問題に対処することができます。」 記者「下痢を防ぐために特に心がけていることはありますか?」 赤尾さん「下痢予防には、餌の質と与え方に細心の注意を払っています。牛の体調を日々観察し、その時々の健康状態に合わせて餌を調整しています。特に、ストレスを最小限に抑えることが重要で、それには適切な餌やりや、必要に応じて環境の調整を行うことが含まれます。下痢を防ぐために、日々のケアと観察に注力しています。」 記者「ストレスを管理するために工夫していることは?」 赤尾さん「ストレス管理には、牛が自由に過ごせる環境を整えることが最も効果的だと考えています。私たちの牧場では、牛たちが自由に動き回れる運動場を設け、彼らが自然な状態で生活できるようにしています。朝、気温が上がり始めた頃には、彼らを外に出して新鮮な空気を吸わせ、自然と触れ合う機会を提供しています。このようにして、牛たちがストレスなく健康的に過ごせるよう心がけています。」 祖父の遺産を受け継ぐ
記者「赤尾さんのおすすめする畜産に関するアイテムや道具があれば教えてください。」
赤尾さん「普段あまり添加剤などは使用しないのですが、おすすめするとしたら阿蘇の赤土の商品である”アソード”ですね。アソードは鉄分を適切に摂取させるための商品です。使い始めて子牛の軟便に締まりが出てきました。まだ使い始めて間もないですが健康的でストレスない赤牛を育てるためにしっかり与えていこうと思っています。」 記者「尊敬している方や師匠はいらっしゃいますか?」 赤尾さん「私の畜産への情熱は、祖父から受け継いだものです。祖父は赤牛の品種改良に成功し現在の赤牛の品質を確立させました。元は井芹系と赤尾系の2種類の赤牛がいて、その赤尾系は私の祖父が育てた系統になります。赤牛の礎を築き、牛の改良に尽力した姿は尊敬に値すると思っています。その精神は今も私たちの仕事の中心にあり、彼の教えを受け継ぎながら、牛たちの健康と幸せを追求しています。祖父の努力と献身は、私たちが今日持っている赤牛の品質の高さに大きく貢献しており、私にとって大きな尊敬の対象です。」 記者「赤尾さんが目指す畜産の未来像とは何ですか?」 赤尾さん「私たちの目指す未来像は、牛たちがより自然に近い環境で健康的に育つことです。そのためには、日々の観察とケアをさらに細やかに行い、牛一頭一頭のニーズに応えていくことが重要です。また、祖父から受け継いだ改良への努力を続けながら、持続可能で動物福祉に配慮した畜産を実現していきたいと考えています。」 観察から生まれる信頼
記者「赤牛を育てる際のポイントや、黒毛和牛との違いについて教えていただけますか?」
赤尾さん「赤牛と黒毛和牛の間には、確かに少々の違いがあります。赤牛は比較的育てやすいとされています。それに対し、黒毛和牛は少しデリケートで、体調面で弱いところがあるため、より細やかなケアが必要になることがあります。赤牛の方が、少し強健で、日々の管理がしやすい傾向にあります。」 記者「赤尾さんの座右の銘は何ですか?」 赤尾さん「私が最も大切にしているのは「観察力」です。毎日の観察を通して牛の健康状態を把握することが、畜産業で成功するための鍵です。観察力があれば、牛の小さな変化も見逃さず、適切な対応をとることができます。」 記者「観察力を養うために重要なポイントはありますか?」 赤尾さん「観察力を養う上で最も大切なのは、牛の目の輝きや動きを日々チェックすることです。生き生きとした目、活発な動作は健康の証。逆に、何か異常があれば、目の輝きが失われたり、動きが鈍くなったりします。これらの細かな変化に気づくことが、牛の健康管理には不可欠です。」 アソード
アソードの持つ腸内の硫化水素ガスを吸着する効果で腸内環境が良くなり、子牛の軟便に締まりが出てきたそうです。
今後は毛並みの変化や状態の改善を見ていきたいと話していました。
Writer_T.Shimomuro
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徳田牧場 徳田俊一
佐賀県 唐津市 親牛:43頭 子牛:36頭 取材日:2024年1月24日
愛情の追加哺乳
記者「徳田さんの牧場では、追加哺乳というユニークな方法を採用しているそうですが、その詳細について教えていただけますか?」
徳田さん「私が追加哺乳を始めて約3年になります。これは、母親からの哺乳だけでは十分でないと判断した場合に行います。生後1週間から10日頃から始め、子牛の成長や母牛の状態に合わせて調整します。特に、母牛が痩せ気味で子牛が栄養不足に見える場合は、1日2回、4~5リットルのミルクを追加で与えています。この方法は、子牛の健全な成長を促し、将来的には健康な牛に育てるための重要なステップなのです。」 記者「追加哺乳を行うことで得られるメリットについて教えてください。」 徳田さん「追加哺乳の最大のメリットは、母親から十分に栄養を得られない子牛に必要な栄養を供給できることです。これにより、子牛の成長に必要な栄養のばらつきを補い、予防的に健康を維持します。もちろん、これは私たちの試行錯誤の結果であり、常に最適な量を模索しています。この方法は、子牛の発育だけでなく、将来の健康な骨格形成にも寄与していると考えています。」 記者「追加哺乳によるデメリットはありますか?」 徳田さん「確かに、追加哺乳には経済的なコストや時間の投資が必要です。毎日の追加哺乳は妻と私の仕事量を増やし、牧場全体の手間も増加します。しかし、この手間は必要不可欠な時間の投資だと思っていて、子牛が離乳後に見せる成長の速度や、骨格のしっかりした健康な牛に成長していることがこの手法の価値を証明しています。」 ブラシ一つから始まる物語
記者「ご自身の牛の育て方に点数をつけるなら、何点ですか?」
徳田さん「私たちの育て方は80点ぐらいかなと思います。牛たちの健康管理には自信があります。ですが、環境面ではまだ改善の余地があり、50点程度です。特に、牛たちがストレスなく過ごせる環境作りには、もっと力を入れていきたいと考えています。理想は、2〜3ヶ月は親子1頭ずつスペースを分けて飼ってあげるような環境がベストです。ですが、スペースの制限があるため、現実は1ヶ月経つと親も子も一緒に群れで飼っています。」 記者「種付けの成功率はどうですか?また、その改善にはどのような取り組みをされていますか?」 徳田さん「分娩間隔は初年度に比べて大幅に改善しています。主に餌の量、濃厚飼料の配合、餌のやり方などを見直しました。私の受精技術も向上し、牛たちのストレスを減らすことができたのではないかと思います。」 記者「牧場の運営において、今後の展望を教えてください。」 徳田さん「今後は牛舎のスペースと環境の改善に注力していきたいと考えています。現在の牛舎はおじさんが手作りしたもので、最大50頭までの規模で運営を考えています。新しい牛舎を建てるには大きな費用がかかりますが、安定した経営と最適な投資で、より良い環境を作り上げたいと思います。」 記者「おすすめのアイテムや道具は何かありますか?」 徳田さん「私の一番のおすすめはこのブラシですね。空いた時間には常に子牛をブラッシングしています。これはただのお手入れ以上の意味があって、牛が人に慣れる大切な方法です。この触れ合いによって、牛たちはストレスを感じにくくなり、健やかに成長します。特に子牛が生まれてから6か月間は、私たちが常にそばで世話をすることで、牛たちの心理的な安定に大きく寄与しています。また、最近はアソードという阿蘇の赤土を試しています。まだ使用して2、3日目ですが、これからの効果が楽しみです。特に子牛の下痢や毛ヅヤの改善が見られると嬉しいですね。他にも飼料の選択にも気を使っています。私たちの場合、wcsをメインで使用していますが、牛たちの体型や体調を見ながら、もう少しボリュームを加えたり、消化吸収を良くするための工夫をしています。全体的に、牛たちが健康に育つように、日々のケアには細心の注意を払っています。」 愛情と謙虚さの育て方:徳田牧場の哲学
記者「尊敬する人や師匠についてお聞かせください。」
徳田さん「親戚のおじさんが私の師匠ですね。名前は控えさせていただきますが、彼はこの牧場を現在の規模まで成長させた人物です。特に彼の牛への接し方、愛情を持って世話をする姿勢は、私にとって大きな影響を与えました。」 記者「おじさんの考え方を取り入れた具体的な方法はありますか?」 徳田さん「はい、例えば名前を呼びながら撫でるという接し方です。この方法は人間に対する牛のストレスを減らすのに非常に効果的です。私もこの方法を取り入れて、牛たちと深い信頼関係を築いています。」 記者「今後の目標について教えてください。」 徳田さん「具体的な目標というよりは、規模拡大よりも質の高い牧場経営を目指しています。息子が帰ってきたときに、この牧場を引き継げるような環境を作りたいと考えています。そのためにも、人との関係を大切にし、受けた恩は忘れずに、腰を低く持ち続けることが大事だと思っています。」 記者「座右の銘はありますか?」 徳田さん「"受けた恩は石に刻め、施した恩は水に流せ"、ですね。牧場を始めた当初、多くの方々からの支援を受けました。その恩は忘れず、常に感謝の気持ちを持ち続け、謙虚な姿勢で仕事に取り組んでいます。畜産業を続けていく上で、人との関わりが最も重要だと、日々感じています。」 ブラシ
牛のブラッシングはただのお手入れだけではなく、牛が人に慣れるための大切なふれあいなのだそうです。
特に子牛は最初の育て方がとても大切で心理的に安心させストレスを和らげてあげる効果があるのだそうです。 アソード
WCSをしっかり食べてもなかなか体が大きくならないことで悩んでいた時にアソードと出会いました。
鉄分をしっかり採ることで増体に繋がったり下痢の締まりや受胎率の改善など様々な面で喜んでいる農家がいることをと聞き興味を持ったそうです。金額もお手頃だったため導入のハードルが低かったと話していました。
Writer_T.Shimomuro
山本牧場 山本文彦
佐賀県 唐津市 親牛:70頭 子牛:45頭 取材日:2024年1月22日
品質向上への道のり
記者「山本さんの牛に点数をつけるならどのくらいですか?理由も含めて教えてください。」
山本さん「私は迷わず100点をあげたいですね。ただ、完璧ではないので80点くらいかなとも思います。どんなに頑張っても、まだまだ改善の余地はあるものですから。食事や管理方法に工夫を凝らしていますが、飼料の量を増やしたり、より良い環境を整えたりと、常に改善の余地を模索しています。特に出産前の管理や分娩室の利用など、細かな配慮が結果に大きく影響していると思います。」 記者「出生率を上げるためにはどういうことをしていますか?」 山本さん「出生率の向上は私たちの大きな目標です。出生率を上げるためには、まず、牛たちが健康であることが重要です。お産室に入った分娩前の牛は増飼を行いします。通常は1.5kgほど濃厚飼料を与えるのですが増飼している間は3kgの濃厚飼料とヘイキューブを朝晩で1kgずつ、粗飼料を普段量与えます。この増飼の分の濃厚飼料は子牛の分を当てていますね。そうすることでしっかりとたんぱくを摂取できるため出生率がかなり変わってきます。それに生まれた子牛に虚弱な牛が少ない気がします。また、子牛の発情も早くなっているように感じます。」 記者「今後の目標は何ですか?」 山本さん「私たちの目標は出生率をさらに向上させることです。現在、出生率は7割程度ですが、これを9割に近づけたいと考えています。また、子牛の初期育成にも力を入れており、ミルクの量を増やしたり、哺乳期間を調整することで、より健康で元気な子牛を育て上げることを目指しています。」 記者「オススメの商品や道具などはありますか?」 山本さん「アソードという阿蘇の土はすごくいいです。先ほども話したように出生率を上げていくことが私たちの直近の目標なのですがそれをかなえてくれる可能性を感じています。食べさせてすぐ子牛の下痢が黒く締まりだして、毛ヅヤも良くなり元気さが以前と全然違います。ミルクに溶けない部分が懸念材料でしたが微粉タイプの”ミルキーアソード”を紹介いただき詰まりや沈殿問題も解決ししっかりと健康状態のサポートができているように思いますね。」 未来へ繋ぐ牧畜の技
記者「目標とする方や師匠について教えてください。」
山本さん「私が牧畜業界に足を踏み入れてから、数多くの先輩方に支えられてきました。特に、古河さんや井上さんのような方々は大きな目標です。彼らの経営手法や技術の進歩には常に目を見張るものがあり、そのレベルに近づきたいと心から思っています。」 記者「古河さんのすごいところは何ですか?」 山本さん「古河さんの経営は、機械化を積極的に取り入れながらも、牛一頭一頭に目を行き届かせるというバランスが素晴らしいです。最新技術を駆使して健康管理を徹底しており、その結果が生産性の向上に直結しています。彼のように、技術と人間の目の両方で牛の管理を行う姿勢は、私たちも見習うべきだと感じています。」 記者「井上さんの方はどういったところがすごいですか?」 山本さん「井上さんは、大規模な経営をされていて、その規模の大きさだけではなく、質の高さにも定評があります。従業員さんたちとの協力体制もしっかりと構築されており、高い生産性と品質を保つことに成功しています。井上さんのように、大規模でも質を落とさず、効率的に運営することは、私たちにとっても大きな目標です。」 記者「目標にする二人から学ぶべき点は何だと思いますか?」 山本さん「二人から学ぶべきは、最新技術の導入と人の目による細やかな管理の重要性です。機械化を進めつつも、牛一頭一頭への愛情を忘れず、健康管理に細心の注意を払う。このバランスを保つことが、高品質な牛を育て、生産性を高める鍵だと教えられています。」 一生懸命の精神で牧畜業に革新を
記者「新規参入者へのメッセージをお願いします。」
山本さん「牧畜業に新しく参入する方へのアドバイスですが、最初に言いたいのは、恐れずに大胆な投資をすることの大切さです。私も最初は大きな借金をして機械化や施設の整備に投資しました。ただし、借金は必ず返済計画を立て、返せる範囲で行うべきです。また、牛舎の建設に際しては、将来の運用を考えて、効率的で働きやすい設計を心掛けました。」 記者「投資のポイントはどこにあると思いますか?」 山本さん「投資のポイントは、建物よりも牛にあります。良い牛に投資することが、将来の利益に直結します。初期に導入する牛の質が、その後の牧場の基盤を決めますから、良質な血統の牛を選ぶことが大切です。私たちは、外部からの導入を最小限に抑え、自家繁殖で品質を保っています。」 記者「経営を続ける上で大切にしていることは何ですか?」 山本さん「経営を続ける上で一番大切にしているのは、一生懸命に取り組む姿勢です。全てにおいて、命を懸けるほどの情熱を持って挑むこと。また、牛に対する投資は、牛自身が最も良いリターンをもたらしてくれるという信念を持っています。借金は牛で返す、これが私たちの座右の銘です。」 記者「家族経営の中での工夫はありますか?」 山本さん「家族経営の中での工夫としては、お互いの労働負担を分散させることです。息子が加わってくれたことで、家族それぞれが休息を取れるようにシフトを組んでいます。お互いに協力し合うことで、長期間にわたって持続可能な経営を目指しています。」 アソード
サンプルで使ったら牛の下痢が締まり、黒い糞になったとのことです。微粉タイプもあり、ミルクに混ぜても沈殿があまりせず子牛が元気になっていくのが目に見えて実感したそうです。
Writer_T.Shimomuro
甲斐照久牧場 甲斐照久
熊本県 阿蘇市 親牛:200頭、子牛:100頭 取材日:2024年1月18日
賢い資金戦略
記者「甲斐さんが耕畜連携を取り組み始めたきっかけは何でしたか?」
甲斐さん「耕畜連携は、農作業の効率化を目指して始めました。最初はただ単に作業を楽にしようと思ったんですが、田んぼの作業は思った以上に厳しく、経費もかかって大変でした。しかし、この連携により、畜産農家としての経済的な安定性も見込めるようになり、一歩ずつ前進しています。」 記者「連携の中で特に工夫された点はありますか?」 甲斐さん「はい、工夫した点はいくつかあります。特に、機械の導入は大きな変化でした。しかし、機械も故障することがあり、その対応には頭を悩ませました。そのため、息子と相談し、購入時には保険のような形で定期預金を活用して、何かあった時に備えるようにしました。」 記者「定期預金についてもう少し詳しく教えてください。」 甲斐さん「定期預金は、いうなれば保険のようなものです。不測の事態に備え、大きな支出が必要な時はこれを活用します。例えば、1,000万円を定期にしておけば、必要な時にはその資金を使って対応できるわけです。これにより、経済的な安定性を確保し、家族全員で経済的なリスクを管理しています。」 記者「この取り組みから、今後の展望や意気込みを教えてください。」 甲斐さん「厳しい状況は続いていますが、この取り組みにより少しずつでも前に進んでいます。経済的な余裕を持ちながら、資材費や燃料費の高騰にも対応していかなければなりません。定期預金をうまく活用して、農業経営の安定性を高め、家族みんなで支え合いながら、持続可能な農業を目指しています。」 毎日が点数アップへの努力
記者「甲斐さん、自分の牛の育て方に点数をつけるなら、いくつになりますか?」
甲斐さん「点数は、正直に言って60点ぐらいかなと思います。毎日の努力はしているんですが、牛の健康管理や環境の整備にはまだまだ改善の余地があります。特に、牛たちが元気に成長してくれるよう、常に気を使っています。それでも、予期せぬ問題は起きますからね。」 記者「60点ということですが、そこから100点に近づくために、どのようなことに取り組みたいと考えていますか?」 甲斐さん「やはり、牛たちの健康管理が最優先ですね。早期発見、早期治療を徹底し、牛たちが常に最適な状態でいられるようにしたいですね。この近辺で事故が少ない農家たちが早期発見するために工夫していることとして餌を敷物にして寝床に敷いてあげるという方法をしています。のこくずを敷くよりも下痢の状態を見やすくなり下痢の発見がしやすくなるんです。」 記者「具体的に、牛の飼育で現在直面している問題はありますか?」 甲斐さん「直近で毎月30頭の子牛が生まれており手が回らなくなっています。加えて、繁忙期には身体的な負担も大きい。それに、牛たちの健康管理を徹底することで、死亡率を下げる努力も怠ってはならないと感じています。」 記者「今後の方針について教えてください。」 甲斐さん「今後は、牛の飼育方法を見直し、もっと効率的で持続可能な方法を取り入れたいです。例えば、受精卵移植に取り組んでいます。これにより、より健康な子牛を育て、全体的な飼育環境の改善を図っています。また、保険への加入や労働環境の改善も重視していきます。結局、牛たちの健康が最優先ですから、そのために必要な投資は惜しまないつもりです。」 一筋にまっすぐ
記者「甲斐さんの畜産における師匠や尊敬する人物について教えてください。」
甲斐さん「師匠ですか。私の場合は、特定の一人の師匠というより、多くの人から学んできました。農業は日々学びですからね。ただ、特に影響を受けたのは、高森町の宇藤さんですね。彼は牛温計などがない時代から、この仕事に情熱を注いでいました。キャンピングカーで牛舎のそばに寝泊まりして分娩を待つなど、その献身的な姿勢には本当に敬服します。」 記者「宇藤さんのような献身的な姿勢は、甲斐さんにどのような影響を与えていますか?」 甲斐さん「彼のように、全力を尽くして取り組む姿勢に私も大変刺激を受けております。牛の飼育はただの仕事ではなく、情熱を持って取り組む生き方。それが私たちのモットーです。それに、彼は”取る銭捨てずの精神”も強くしっかり収益を上げていく姿はさすがだなと思っています」 記者「甲斐さんにとって、畜産とは何でしょうか?また、座右の銘があれば教えてください。」 甲斐さん「酪農は、ただの職業ではなく、一つの生き方ですね。全てをこの仕事に注ぎ、正直に、一筋に、まっすぐに進んでいく。それが私の信念です。ですから、座右の銘は「一筋」です。これからも、この心持ちを忘れずに、日々の仕事に取り組んでいきたいと思います。」 FELLA
バタフライというパーツを取り付けて稲刈りをすると通常よりも早く稲刈りが終わって助かっているそうです。人手が足りない農家としては時短できておすすめです。
Writer_Y.Eguchi
石井牧場 石井崇雄
熊本県 球磨郡 親牛:31頭、子牛20頭 取材日:2024年1月10日
世代を超えて受け継がれる牧場技術記者「石井さんの牧場では、ご両親から受け継がれた特別な技術などはありますか?」 石井さん「私たちの牧場では、牛の飼育において人間中心ではなく、牛の健康と快適性を最優先に考えています。例えば、餌の与え方一つをとっても、牛の発情周期や健康状態に合わせた細かい調整を行っており、これは両親から受け継いだ知識のおかげです。また、牛の病気の早期発見にも力を入れており、細かな観察を欠かしません。」 記者「その餌やりの方法について、具体的なポイントを教えていただけますか?」 石井さん「特に重要なのは、発情が弱い牛に対してはタンパク質を多めに与えることです。また、定期的にビタミン剤を投与し、必要に応じて外に連れ出して日光浴させることもあります。これにより、牛の足腰を強くし、健康状態を保つことができます。自然な日光浴によって、牛が自らビタミンを生成することも促進しています。」 記者「餌に含まれるタンパク質について、具体的にどのようなものを使用していますか?」 石井さん「私たちの牧場では、タンパク質が豊富な子牛の餌を主に使用しています。牛によって必要なタンパク量は異なるため、それぞれのニーズに合わせて量を調整しています。餌の種類によっては少なめに与えるなど、微調整を行っています。」 記者「牛舎の消毒にも特に力を入れていると伺いました。消毒方法についてのポイントはありますか?」 石井さん「牛舎の消毒は非常に重要で、私たちは両親から受け継いだ方法を基に行っています。主にはウイルスや病原菌を防ぐために、消毒液の選定と濃度調整に注意を払っています。誤った消毒方法は逆効果になるリスクがあるため、濃度や使用方法は厳密に守っています。週に1回の消毒を行い、冬場は2週間に1回のペースで行っています。」 牛の健康と快適性への道
記者「石井さん、牛舎に点数をつけるとしたら、どのような評価になりますか?」
石井さん「正直に言うと、私の牛舎はまだまだ改善の余地がありますね。おそらく40点くらいでしょうか。理由としては、私たちは牛にストレスを与えない環境を目指しているのですが、現在の施設ではまだその理想に達していないんです。特に、牛を年齢や性別に応じて分けて飼育することが難しく、それがストレスの原因になっていることが大きいですね。」 記者「その40点という評価を60点に向上させるためには、どのような改善が必要だとお考えですか?」 石井さん「まず、牛舎のスペースを拡大し、オスとメス、また年齢に応じて区分けできる環境を整えたいですね。牛は本能的に階層を作る動物なので、同じスペースに異なるグループが混在すると、特にメスや若い牛がストレスを受けやすいんです。ただ、スペースや資金の問題で、これが簡単ではありません。」 記者「牛の健康状態で、特に気になることや困っていることはありますか?」 石井さん「はい、最近特に気になるのは、発情の兆候が見えにくくなっていることですね。昔に比べて、牛の行動が少なくなっており、発情のサインを見逃しやすくなっています。これは筋力の低下や栄養不足が原因かもしれません。そのため、栄養補助や適切な運動を取り入れることを考えています。」 記者「それに対してどのような対策を講じていますか?」 石井さん「私たちは、牛の栄養管理を見直しています。添加剤の使用を慎重に行い、必要最低限に抑えるようにしています。また、子牛の健康管理も重視しており、ワクチンや特定の病気に効く薬の投与を調整しています。結果として、病気の発生率は減少してきています。牛の健康状態を改善するためには、適切な栄養管理と環境整備が欠かせません。」 牧場経営の試行錯誤
記者「新規就農者に向けて、石井さんが体験を通して伝えたいメッセージは何ですか?」
石井さん「新規就農者の皆さんには、まず、焦らず少しずつ牛を増やしていくことをお勧めします。牧場経営は大変な仕事ですから、自分の体調管理もしっかりと行いながら、自分の限界を知ることが重要です。無理をしてはいけません。自分と牛のコンディションを常に最適な状態に保つことが、長期的な成功の鍵となります。」 記者「新規就農者が直面する困難や挑戦について、石井さん自身が経験されたことはありますか?」 石井さん「はい、多くの挑戦がありました。特に牛の管理方法や病気の対処に関しては、学んだ知識を実際に適用する過程で多くの困難に直面しました。それぞれの牛が異なるため、一つの方法が全てに当てはまるわけではありません。病気の原因を見極め、適切な治療法を見つけ出すことは、特に初めのうちは非常に難しいです。」 記者「そのような困難を乗り越えるためには、どのようなことが大切だと思いますか?」 石井さん「大切なのは、試行錯誤を恐れずに挑戦し続けることです。失敗してもそれを学びの機会と捉え、次に活かすことが重要です。また、他の農家さんの方法を学び、自分の状況に合った部分を取り入れることも大切です。最初は戸惑うかもしれませんが、経験を積むことで見極めの力が養われます。」 バイミルク
普段のエサでは足りないビタミンやミネラルを摂取することを目的に使用し始めたそうです。
使用し始めて発情がわかりやすくなったと話していました。
Writer_Y.Eguchi
井牧場 井靖征
熊本県 阿蘇市 親牛:5頭、子牛:3頭 取材日:2024年1月9日
半煮えの秘密
記者「井さんの牧場で他の人が知らないような特別な技術や工夫をお持ちですか?」
井さん「はい、実はうちの牧場では子牛の餌の「半煮え」調理法があります。これは親父から受け継いだもので、主にとうきび、麦、ふすまなどを混ぜ合わせて、沸騰したお湯をかけ、冷却してから子牛に与えるんです。この方法を使うと、子牛の成長が早く、通常よりも20%早く仕上がるんですよ。」 記者「「半煮え」とはどのような状態を指すのですか?」 井さん「半煮えとは、餌を部分的に煮ることを意味しています。この方法では餌の栄養素が最大限に引き出され、子牛にとって非常に消化しやすくなります。他の農家はこの手法をあまり使わないんですが、手間をかける価値はあると私は確信しています。」 記者「その半煮え餌を与えると、牛にどのような変化が見られるのですか?」 井さん「半煮え餌を食べると、子牛は目に見えて成長します。特に、毛艶が良くなる、発情が早く来る、体が大きくなるなどの効果があります。これは栄養の吸収が効率的になるためで、私たちの技術によって子牛の健康と成長が格段に向上するんです。」 記者「それ以外に井さんの牧場で行う特殊な作業はどのようなものがありますか?」 井さん「牛の角切りですかね。角切りについては、放牧する牛に限って行っています。放牧中の牛同士での争いを避けるためですね。しかし、放牧しない牛は角を切らないことが多いです。角を切る時は専門家を呼んで手伝ってもらっていますが、牛にとってはかなりのストレスです。血が出るので、強めに包帯で巻いて処置しています。翌日には止まっているので包帯を解いてあげるというのがうち牧場のやり方です。」 牧場の誇り:80点の挑戦と献身
記者「井さんの牧場に点数をつけるなら、何点になるでしょうか?」
井さん「うちの牧場は80点ぐらいでしょうか。実は何年か放牧をしていなかった結果、ダニの問題が自然に解消されました。放牧しないと1年でダニがいなくなるんですね。それに、私たちの飼育方法も牧場の評価に一役買っています。」 記者「残りの20点を上乗せするためには、どういった改善が必要ですか?」 井さん「プラス20点を目指すためには、私たちの飼育方法をさらに改善する必要があります。現在、私たちは限られた人手で最善を尽くしていますが、より大規模な飼育には挑戦していません。今後は、飼料の管理方法や放牧の改良に取り組んでいくことで、さらなる高評価を目指したいと思います。」 記者「井さんが尊敬している畜産業界の大先輩や師匠はいますか?」 井さん「はい、この近くに鶴吉さんという大先輩がいて、私は彼を非常に尊敬しています。彼は質の高い牛を育てることに専念しており、自分の時間も大切にしながら牛の放牧や飼育に取り組んでいます。また、牛の塩分不足を補うためにも力を入れており、その献身的な姿勢は私たちにとって大きな刺激になっています。」 牛に愛を、農家に希望を
記者「新規就農者の方へのメッセージをお願いします。」
井さん「新規就農者の皆さんへ、畜産は一歩一歩の努力が必要な仕事です。私も若い頃、親の後を継ぎ、一流の牛を育てる夢を追い求めました。最終的には、自分の努力が実を結び、優秀な種牛を作ることができました。成功の秘訣は、常に牛に愛情を注ぐことです。言葉をかけ、愛情を持って丁寧に育てる。これが、良質な牛を育てるための鍵です。」 記者「それでは、井さんの座右の銘は何ですか?」 井さん「私の座右の銘は「毎日愛情を注ぐこと」です。畜産業において、牛に対する愛情は非常に大切です。愛情を持って育てられた牛は、その質が高まり、結果として優れた成績を残すことができます。私が"鶴重川"という種牛の育成に成功したのも牛に対する愛情無くしては成し遂げられなかったでしょう。愛情を注ぐことが、最終的には牛の品質を高め、私たちの仕事においても大きな価値を生むのです。」 アソード
アソードのサンプルを使ってみて毛ツヤがよくなりやわらかい毛肌になったそうです。
また、牛の食欲も上がり食いがよくなったと話していました。
Writer_Y.Eguchi
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