澤田牧場 澤田年男
佐賀県 東松浦郡 親牛:45頭、子牛:25頭 取材日:2024年2月22日
細やかな変化を読み解く技術
記者「澤田さんが古河畜産での研修で得た畜産テクニックについて教えてください。」
澤田さん「古河畜産での研修期間は約2年間にわたりました。この間、様々な畜産テクニックを習得しました。特に、牛の体調や状況に応じて柔軟に対応することの重要性を学びました。例えば、天候の変化や牛の健康状態を見極め、その都度、最適な飼育方法を適用することが重要だと実感しています。この経験を通じて、私は牛たち一頭一頭に対する深い理解と愛情を持つようになり、それが今の私の飼育技術の土台となっています。」 記者「臨機応変に対応した経験とは例えばどのようなことがありますか?」 澤田さん「特に印象深いのは、子牛の病気に対処した経験です。ある時、いつもと違う様子の子牛がおり、普段からの観察があってこそ異変に気付けました。獣医と相談の結果、実際には初めに思っていた病気とは異なる病気であることが判明しました。」 記者「具体的にはどういう病気だったのですか?」 澤田さん「子牛が経験した病気には、下痢や紐の怪我などがありました。また、見た目では分かりにくい内部の状態、例えば臍帯炎という病気にも対処しました。臍帯炎では、特定の部位に液体が溜まる状態になっており、エコー検査などで発見します。これらの経験から、目に見えない病気や異常にも迅速に気付き、対応できる能力が養われたと感じています。」 記者「それ以外にも普段気づかないようなことに気づけた経験はありますか?」 澤田さん「一例として、分娩間近の親牛が尻尾を立てて餌を食べる、という特殊な行動をしたことがあります。初めは何気ない変化に思えましたが、これが分娩に関連する重要なサインであることに気付きました。実際に調べてみると、お腹の中で子牛が死んでいる状態でした。」 古河さん流畜産の継承
記者「澤田さんが一番尊敬し、真似したいと思う牛の育て方をしている方はいますか?」
澤田さん「私が一番尊敬しているのは、研修を受けた先でお世話になった古河さんです。彼の管理方法は徹底しており、牛舎も牛も常に清潔に保たれています。古河さんの仕事ぶりは常に先を見据えており、その管理の厳密さと先見の明から多くを学びました。」 記者「古河さんの管理方法で、特に印象に残っているポイントはありますか?」 澤田さん「古河さんの場合、細部にわたる管理の徹底さが際立っています。牛舎の清潔さはもちろん、牛一頭一頭への細やかな注意とケアが、他の農家と一線を画しています。この徹底した管理体制こそが、彼の成功の秘訣であり、私もこの点を見習い、自分の飼育方法に取り入れています。」 記者「自分の牛について点数をつけるなら何点ですか?」 澤田さん「私の牛たちはまだ完璧とは言えず、70点程度だと思います。繁殖成績を見ると、一年一産を守れているものの、まだまだ改善の余地があります。私の農場もまだ新しく、始めてから3年目になりますが、日々改善を重ねている最中です。」 記者「役立つアイテムなどあれば教えてください。」 澤田さん「夏場の暑さ対策で、簡易ミストを導入しています。これは簡易型で、タイマー設定により一定間隔で動作します。価格も手頃で、熱中症対策に非常に効果的です。去年の夏、新しく建てた子牛舎に設置し、その効果を実感しました。」 記者「添加剤についてはどうですか?」 澤田さん「私は、あまり変わったものは使っておらず、一般的な添加剤を使用しています。特にネッカリッチという製品を愛用しており、ミルク上がりの改善に役立っています。ネッカリッチを使うことで、離乳後の子牛の健康状態が格段に向上しています。」 目標設定と経営のリアリティ
記者「新規就農者へのメッセージはありますか?」
澤田さん「私自身も新規就農からスタートしましたが、明確な目標設定は常に心がけています。日々、週単位、月単位の具体的な計画を立て、リアルな経費計算を行うことが非常に重要です。経費計算は細かく、リアルに行い、計画に基づいて実践することで、赤字になるリスクを最小限に抑えることができます。」 記者「その計算方法について具体的に教えてもらえますか?」 澤田さん「具体的な計算方法としては、子牛一頭あたりにかかる費用、餌の量、様々な経費を日単位で把握することが大切です。これにより、現実的な経営計画が立てられ、早期に問題点を発見し対処できます。また、単に数字上の計画だけでなく、実際に赤字にならないよう具体的な対策を考えることも必要です。」 記者「新規就農者に向けて、他に重要なポイントはありますか?」 澤田さん「はい、一人で全てを成し遂げようとせず、支援者や協力者を持つことの重要性を強調したいです。私自身、家族や地域の先輩農家など、多くの人々の支援を受けています。畜産業は特に、協力者がいなければ成功が難しいと感じています。」 記者「最後に、澤田さんの座右の銘を教えてください。」 澤田さん「私の座右の銘は、「牛に恩返し、牛で恩返し」です。これは、日々の丁寧な管理と愛情をもって育てた牛を通じて、私を支えてくれたすべての人々への恩返しを意味します。牛を立派に育て、それを通じて地域や関係者に貢献することが、私の目指す経営の形です。」 ネッカリッチ
離乳直後の子牛が軟便で困っていたそうですがこれをミネラルと一緒に摂取するようになって糞の締まりがよくなったそうです。
簡易ミスト
夏場の暑熱対策として先輩の農家が使っているのを見て導入を決めました。簡易型ではありますが価格の割に性能がいいそうです。タイマー設定により一定間隔で動作します。
Writer_T.Shimomuro
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株式会社いのうえ畜産 井上匡実
佐賀県 唐津市 親牛:130頭、子牛:60頭 取材日:2024年2月20日
質高き牛肉への細やかなる道
記者「井上さんの牧場は大規模ながらも、質の高さとその安定性で業界内外から高い評価を受けていると聞きました。このレベルを維持するための秘訣は何ですか?」
井上さん「実際には日々の努力の積み重ねですね。特に、生後4、5ヶ月までの丁寧な育て方が大きな違いを生んでいます。病気の予防と健康管理にも細心の注意を払い、エサの質にもこだわっています。全体として、一頭一頭の牛に寄り添ったケアを心がけていることが、質の高さと安定性を保つ秘訣だと思います。」 記者「井上さんが牛の育て方に自己評価をつけるとしたら、100点満点中何点ですか?」 井上さん「うーん、自分では満点を出すことは難しいですね。常に改善の余地を見つけ、より良い方法を模索しています。しかし、現在の取り組みには自信を持っており、70点程度はつけられるかなと。」 記者「具体的にどのような課題に直面しているのですか?」 井上さん「最大の課題は、やはり個体差による成長のばらつきですね。それに伴う病気のリスク管理も大きな課題の一つです。また、良質な飼料を確保し、それを各牛の体調や成長段階に合わせて適切に供給することも、日々の大切な仕事の一つです。これらの課題に対処するために、飼料の配合を最適化し、健康管理に更に力を入れています。」 記者「今後の計画や目標はありますか?」 井上さん「今後は、牛の健康管理と粗飼料のさらなる質の向上に注力していく予定です。特に、母牛の栄養管理を改善することで、生まれてくる子牛の健康状態をより良くすることが目標です。」 畜産の未来を切り拓く健康牛育成法
記者「井上さんの牧場でおすすめのアイテムについて教えてください。」
井上さん「私たちの牧場では、ニュートリトップを哺乳時の子牛のミルクに混ぜて使用しています。このアイテムの特徴は、オオバコ粉末が含まれていて、子牛の便をプルプルの状態にしてくれるんです。それにより、白痢の発生も少なくなったように感じています。」 記者「そのニュートリトップはどのようにして知ったのですか?」 井上さん「獣医さんからの紹介です。その獣医さんの推薦があってニュートリトップ以外にもくみあい飼料育成用を今後使用してみたいとも考えています。信頼できる専門家の意見は、私たちの牧場運営にとって非常に価値があります。」 記者「井上さんにとって畜産における師匠や目標にしている人はいますか?」 井上さん「はい、それは武雄にいる大塚博史さんですね。実は年下なのですが、畜産に関する様々な相談に乗ってもらっています。大塚さんは飼料計算とそれによる効果に関する知見が非常に豊富で、まるで魔法のように自在に牛の調子をコントロールできるんです。私もそんな技術を身につけたいと思っています。」 記者「今後、牧場で実践したい新しい試みはありますか?」 井上さん「はい、大塚さんから学んだ飼料計算の知識を活用し、さらに効率的かつ効果的な飼料管理を実践していきたいです。子牛の成長をより良くサポートできるよう、ニュートリトップやくみあい飼料育成用を含めた新しい飼料の試みを積極的に取り入れていく予定です。それにより、健康で強い牛を育て上げることができればと考えています。」 覚悟が拓く、畜産業の新たな地平
記者「新規就農者に向けて、何かメッセージをお願いします。」
井上さん「新規で畜産業に挑む方々には、何よりも覚悟を持って仕事に取り組むことの大切さを伝えたいです。私自身、規模拡大を目指していた時期がありましたが、市場の浮き沈みに翻弄され、結局タイミングを逃してしまいました。その時、自分にはまだ覚悟が足りなかったと痛感しました。」 記者「覚悟とはどのようなものだと思いますか?」 井上さん「覚悟とは、どんな困難があっても乗り越えていく決意のことです。そして、計画や悩みに時間を費やすよりも、行動を起こすことを優先する姿勢が重要です。思い立ったら即行動、それが成功への近道です。」 記者「最後に、井上さんの座右の銘を教えてください。」 井上さん「私の座右の銘は『覚悟』です。覚悟があれば何でも乗り越えられる、何でも達成できると信じています。この言葉を胸に、日々の業務に取り組んでいます。」 ニュートリトップ
フランスのメーカーが開発したもので、軟便対策として使われています。
成分のオオバコ粉末が下痢をプルプルの便に変え、状態を整えるサポートをするそうです。
Writer_Y.Eguchi
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