市原牧場 市原伸博
熊本県 阿蘇市 親牛:20頭、子牛:16頭 取材日:2023年10月30日
一年一産の誓い
記者「「一年一産」という座右の銘を持っている市原さんですが、この方法が一般的に難しいとされる理由は何でしょうか?」
市原さん「一年一産は確かに難易度が高いんです。子牛の健康管理が非常に重要で、早期授乳後の種付けタイミングも重要です。特に阿蘇地域では放牧地が広く、自然豊かな環境で健康管理を徹底しています。放牧によって牛の健康を育むことが、一年一産を成功させる秘訣ですね。」 記者「 健康な牛を育てるために、特に気を付けている点はありますか?」 市原さん「牛の健康管理には非常に気を使っています。放牧以外でも、家で飼う牛には日々の健康観察が不可欠です。食欲や行動パターン、体調の微細な変化にも敏感に対応しています。また、良質な粗飼料を与えることも重要です。健康な牛を育てるためには、細部にわたる観察と適切な飼料が鍵ですね。」 記者「 下痢をした牛に対して、具体的にどのような対応をされていますか?」 市原さん「下痢をする牛には特に注意を払っています。まず、子牛は隔離し、2メートル四方の区画に入れて管理します。離乳後は特に、毎日便の状態をチェックし、異常があればすぐに対応します。ミルクの量も一頭一頭適切に調整し、大きさや健康状態に応じて適切なケアを行っています。一頭一頭の牛に合わせた細やかなケアが、健康な成長を促します。」 記者「牛飼いを始めたきっかけは何ですか?」 市原さん「私が牛飼いを始めたきっかけは、家業の継承です。当時はほとんどの家庭が農業を営んでおり、特に長男は農業を継ぐのが一般的でした。私の家も牛飼いをしていたので、自然とこの道を選びました。阿蘇では米作りと畜産が主流で、多くの家庭がこの組み合わせを行っています。牛飼いとしての技術と経験を活かし、畜産と農業の両方に取り組んでいます。」 畜産業界での歩み
記者「もし畜産以外の仕事を選んでいたら、どのような職業に就いていたと思いますか?」
市原さん「畜産以外の仕事に就いていたら、多分米作りをしていたでしょう。私にとって他の仕事を考えることはほとんどありませんでした。私の世代では、農業が主な仕事で、勤めると言えば警察官などが一般的でしたが、私はそういった道を考えたことはありません。牛飼いの仕事は毎日が違い、厳しさもありますが、それがまた楽しいんですよ。」 記者「他の畜産農家にはいわゆる「師匠」のような存在がいることがありますが、市原さんにはそのような方はいましたか?」 市原さん「私には特定の「師匠」と呼べる人はいませんでした。畜産部会の役員としていろんな部会で経験を積んできましたが、基本的には自分で考え、自分で行動してきました。小さい頃から牛を見て育ててきたので、その経験が今の私の基盤です。畜産関係の視察や研修には参加しましたが、最終的には自分に合った方法を見つけ、それを実践してきました。」 記者「 市原さんが独自に開発し、成功したと感じる飼育方法はありますか?」 市原さん「私が試して成功したと感じる方法は、特にないですね。常に学びながら進めています。例えば、飼料の添加剤を特定の牛に与えてその反応を見たり、子牛の餌の管理方法を調整したりしています。効率化も常に考えています。牛の放牧や飼料の管理など、日々の業務を効率よく行うための工夫を重ねています。畜産は簡単な仕事ではなく、経験と知識が必要です。」 記者「畜産業界での成功をどのように捉えていますか?そのためにどのような取り組みをしていますか?」 市原さん「畜産業での成功は、日々の小さな工夫や改善によって成り立っています。例えば、放牧地の管理を工夫して、初めて放牧する牛や特別な管理が必要な牛を適切にケアしたり、ミルクを飲ませる方法を改善するなどです。放牧場の設計や牛の健康管理において、自分で考え、試し、改善することが重要です。畜産業は常に変化し、それに合わせた取り組みが成功への鍵ですね。」 市原牧場の賢明な管理術
記者「市原さんの牧場では、受胎率を上げるために特別な方法を取り入れていますか?」
市原さん「ええ、受胎率向上のためには、濃厚飼料と粗飼料のバランスが肝心です。特に、妊娠した牛や種付け前の牛には栄養管理が重要。妊娠した牛には栄養豊富な濃厚飼料を多めに、未受胎の牛には適量を与えます。また、発情周期を正確に把握し、90日以内に種付けすることが我々の基本方針です。」 記者「具体的に、どのように飼料を配合していますか?」 市原さん「配合飼料の価格が高騰しているので、慎重に飼料を調整しています。妊娠している牛は栄養が必須なので、濃厚飼料の比率を高めます。受胎していない牛は、適度に管理しないと問題が生じます。牛の健康状態と発情サインを細かく観察し、適切なタイミングで種付けを行うことが、私たちの日々の仕事です。」 記者「獣医師の関与はどのように行われているのですか?」 市原さん「獣医師との連携は非常に重要です。出産後60日から90日経過した牛は特に注意が必要。卵巣の状態や子宮の健康をチェックし、万が一の病気や異常を見逃さないようにしています。具体的には、60日経過しても発情しない場合は、速やかに獣医師に診てもらいます。」 記者「新規就農者に向けて何かアドバイスはありますか?」 市原さん「今の農業環境は厳しいですから、資金計画の立案が不可欠です。特に流動資産の管理は重要。私たちの牧場でも、息子が継いだ際には、しっかりと計画を立てることの重要性を伝えました。流動資産とは、年によって変わるものですから、リスク管理が欠かせません。例えば、野菜などの価格は年ごとに変動するため、資金計画をしっかり立て、リスクに対応できるようにすることが重要です。」 アソード
土を食べる牛は鉄分が不足している可能性が高く、不足しがちな鉄ミネラルを効率的に摂取できるため興味があるとのこと。
下痢対策のために現在様子を見ながら牛に与えているそうです。
Writer_Y.Eguchi
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