石井牧場 石井崇雄
熊本県 球磨郡 親牛:31頭、子牛20頭 取材日:2024年1月10日
世代を超えて受け継がれる牧場技術記者「石井さんの牧場では、ご両親から受け継がれた特別な技術などはありますか?」 石井さん「私たちの牧場では、牛の飼育において人間中心ではなく、牛の健康と快適性を最優先に考えています。例えば、餌の与え方一つをとっても、牛の発情周期や健康状態に合わせた細かい調整を行っており、これは両親から受け継いだ知識のおかげです。また、牛の病気の早期発見にも力を入れており、細かな観察を欠かしません。」 記者「その餌やりの方法について、具体的なポイントを教えていただけますか?」 石井さん「特に重要なのは、発情が弱い牛に対してはタンパク質を多めに与えることです。また、定期的にビタミン剤を投与し、必要に応じて外に連れ出して日光浴させることもあります。これにより、牛の足腰を強くし、健康状態を保つことができます。自然な日光浴によって、牛が自らビタミンを生成することも促進しています。」 記者「餌に含まれるタンパク質について、具体的にどのようなものを使用していますか?」 石井さん「私たちの牧場では、タンパク質が豊富な子牛の餌を主に使用しています。牛によって必要なタンパク量は異なるため、それぞれのニーズに合わせて量を調整しています。餌の種類によっては少なめに与えるなど、微調整を行っています。」 記者「牛舎の消毒にも特に力を入れていると伺いました。消毒方法についてのポイントはありますか?」 石井さん「牛舎の消毒は非常に重要で、私たちは両親から受け継いだ方法を基に行っています。主にはウイルスや病原菌を防ぐために、消毒液の選定と濃度調整に注意を払っています。誤った消毒方法は逆効果になるリスクがあるため、濃度や使用方法は厳密に守っています。週に1回の消毒を行い、冬場は2週間に1回のペースで行っています。」 牛の健康と快適性への道
記者「石井さん、牛舎に点数をつけるとしたら、どのような評価になりますか?」
石井さん「正直に言うと、私の牛舎はまだまだ改善の余地がありますね。おそらく40点くらいでしょうか。理由としては、私たちは牛にストレスを与えない環境を目指しているのですが、現在の施設ではまだその理想に達していないんです。特に、牛を年齢や性別に応じて分けて飼育することが難しく、それがストレスの原因になっていることが大きいですね。」 記者「その40点という評価を60点に向上させるためには、どのような改善が必要だとお考えですか?」 石井さん「まず、牛舎のスペースを拡大し、オスとメス、また年齢に応じて区分けできる環境を整えたいですね。牛は本能的に階層を作る動物なので、同じスペースに異なるグループが混在すると、特にメスや若い牛がストレスを受けやすいんです。ただ、スペースや資金の問題で、これが簡単ではありません。」 記者「牛の健康状態で、特に気になることや困っていることはありますか?」 石井さん「はい、最近特に気になるのは、発情の兆候が見えにくくなっていることですね。昔に比べて、牛の行動が少なくなっており、発情のサインを見逃しやすくなっています。これは筋力の低下や栄養不足が原因かもしれません。そのため、栄養補助や適切な運動を取り入れることを考えています。」 記者「それに対してどのような対策を講じていますか?」 石井さん「私たちは、牛の栄養管理を見直しています。添加剤の使用を慎重に行い、必要最低限に抑えるようにしています。また、子牛の健康管理も重視しており、ワクチンや特定の病気に効く薬の投与を調整しています。結果として、病気の発生率は減少してきています。牛の健康状態を改善するためには、適切な栄養管理と環境整備が欠かせません。」 牧場経営の試行錯誤
記者「新規就農者に向けて、石井さんが体験を通して伝えたいメッセージは何ですか?」
石井さん「新規就農者の皆さんには、まず、焦らず少しずつ牛を増やしていくことをお勧めします。牧場経営は大変な仕事ですから、自分の体調管理もしっかりと行いながら、自分の限界を知ることが重要です。無理をしてはいけません。自分と牛のコンディションを常に最適な状態に保つことが、長期的な成功の鍵となります。」 記者「新規就農者が直面する困難や挑戦について、石井さん自身が経験されたことはありますか?」 石井さん「はい、多くの挑戦がありました。特に牛の管理方法や病気の対処に関しては、学んだ知識を実際に適用する過程で多くの困難に直面しました。それぞれの牛が異なるため、一つの方法が全てに当てはまるわけではありません。病気の原因を見極め、適切な治療法を見つけ出すことは、特に初めのうちは非常に難しいです。」 記者「そのような困難を乗り越えるためには、どのようなことが大切だと思いますか?」 石井さん「大切なのは、試行錯誤を恐れずに挑戦し続けることです。失敗してもそれを学びの機会と捉え、次に活かすことが重要です。また、他の農家さんの方法を学び、自分の状況に合った部分を取り入れることも大切です。最初は戸惑うかもしれませんが、経験を積むことで見極めの力が養われます。」 バイミルク
普段のエサでは足りないビタミンやミネラルを摂取することを目的に使用し始めたそうです。
使用し始めて発情がわかりやすくなったと話していました。
Writer_Y.Eguchi
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