新堀牧場 新堀文夫
熊本県 球磨郡 親牛:8頭、子牛:7頭 取材日:2023年11月16日
受精卵移植と緻密な飼料管理
記者「受精卵移植の導入はいつから始められたのですか?」
新堀さん「受精卵移植は令和4年の夏から始めました。技術の進歩は目覚ましく、今年に入ってから1頭の子牛が誕生しました。8月10日現在、その子牛は見事に成長しています。この技術は少し難しい部分もありましたが、全国的に有名な種牛を用いていますから、成果は大変期待できます。」 記者「 畜産情報の主な情報源はどこにありますか?」 新堀さん「私たちの情報源としては、「養牛の友」や「北国からの和牛だより」といった専門誌を利用しています。これらの誌面には最新の畜産技術や事例が豊富に掲載されており、私たちの業務には欠かせない情報源となっています。」 記者「受精卵移植のプロセスについてもう少し詳しく教えていただけますか?」 新堀さん「もちろんです。受精卵移植は専門の獣医に依頼して行います。発情から1週間後に移植を実施し、黄体の状態が悪い場合は先に治療を行います。実は移植は、発情から6日目から8日目の間に行うのが私たちの独自の方法です。この細かい工夫が、高い成功率をもたらしています。」 記者「飼料の管理方法について、独自の工夫があると伺いましたが、その詳細を教えてください。」 新堀さん「飼料の管理には特に力を入れています。1頭1頭に合わせた濃厚飼料の与え方を実践しており、妊娠や月齢に応じて飼料を調整します。例えば、下痢をする牛にはビオスリーAを与えるなど、細かな注意を払っています。軟便時は迅速に獣医を呼びます。また、飼料の量はバケツや計量カップで正確に測り、牛の名前とグラム数を壁に記録することで、各牛の健康管理を徹底しています。この方法は約50年の歴史があり、以前は赤牛を扱っていた時代からの伝統です。」 50年の歴史を持つ畜産の記録
記者「 牛一頭一頭の成長記録をどのようにして把握しているのですか?」
新堀さん「各牛の成長状態を細かくメモすることで、その発育状態や月齢に応じた成長を把握しています。5か月までは体高、6か月以降は胸囲を測り、体重も定期的に確認。この細かい記録が、異常を早期に発見し治療に繋げる鍵となっています。10か月で120cmに達した牛もおり、300キロ以上を目指しています。これらの測定を50年間続けることで、顕著な成果を上げています。」 記者「 経済的な面での畜産業の課題はありますか?」 新堀さん「経済的な面では、最近ミルク代の高騰が大きな課題となっています。この影響で経営にも苦労している部分があります。ただ、問題のある牛に対しても最適なケアを施すことで、健康状態を保ち生産性を高める努力をしています。」 記者「特に優れた繁殖能力を持つ牛はいますか?」 新堀さん「実は、サキという牛が非常に優れた繁殖力を持っています。彼女は毎年子牛を産み、今年で8産目を迎える予定です。サキの子牛はその質の高さから高値で売れることが多く、彼女の貢献は計り知れません。」 記者「畜産業における観察力の重要性について教えてください。」 新堀さん「畜産業において、観察力は非常に重要です。日々の観察により、異常や病気の早期発見が可能になります。例えば、牛の食欲の変化や行動の変化など、些細なサインにも敏感である必要があります。この観察力によって早期治療に繋げ、牛たちの健康を守ることができるのです。」 牧場の黄金律 - 観察力と飼料管理の秘訣
記者「年間の牛の販売価格について、平均的な数字を教えていただけますか?」
新堀さん「今年1年間で見ると、私たちの牛は平均して約70万円で販売されています。特に5月と7月には、82万円で売れた例もあります。これは牛の体重が平均で350kgということもあり、質の高い牛を育てている結果だと自負しています。」 記者「牛を大きく育てる秘訣は何ですか?」 新堀さん「私たちの秘訣は、濃厚飼料を惜しまずにたっぷりと食べさせることです。しかし、経営的な圧迫を避けるために、飼料は無駄なく計量して与えています。1頭1頭の食べる量を観察し、体調や成長状態に応じて調整することで、最適な育成を実現しています。」 記者「牛の健康管理において特に気を付けていることは何ですか?」 新堀さん「牛の健康管理では、「観察力」が何よりも重要です。体調が悪い牛の餌は適宜減らし、回復傾向にあれば元に戻します。主な健康問題は下痢で、獣医と密に連携しながら対処しています。特に小さい子牛の下痢は見逃さないようにし、早期治療を心がけています。」 記者「飼料の管理において特に注意している点はありますか?」 新堀さん「飼料の管理では、無駄なく効率的に与えることに注力しています。1頭1頭の食べる量を正確に観察し、その牛の成長段階や健康状態に合わせて飼料量を調整しています。これにより、牛一頭一頭が健康的に成長し、経済的な効率も上げています。観察力を駆使して、最適な飼料管理を行っているのです。」 畜産用メジャー
50年以上使用しているこのメジャーで正確に牛の胸囲を測ります。
胸囲のサイズに応じて雄雌それぞれの目安体重が記載されているため、測定を通して牛の生育状況を把握し、市場までに目標体重に合わせていくのだそうです。
Writer_Y.Eguchi
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