岩下牧場 岩下浩徳
熊本県 阿蘇市 親牛:40頭、子牛:23頭 取材日:2023年10月31日
細やかな観察と科学的飼料管理
記者「牛の健康を考える際に特に気をつけていることはなんですか。」
岩下さん「牛たちの健康を守るため、私たちは日々細心の注意を払って観察しています。特に子牛においては、下痢の有無をチェックし、成牛ではその活力や行動パターンを注意深く観察します。牛の健康は観察から始まり、最小の兆候でも見逃さないことが重要です。」 記者「牛舎や飼料について大切にしているポイントを教えてください。」 岩下さん「牛舎と飼料の質は牛の健康に直結しています。私たちは、常にカビの生えていない高品質な牧草を作ることに力を注いでいます。カビがあると牛はすぐに健康問題を抱える可能性があるため、厳格な品質管理を行っています。」 記者「こういう成分はしっかり取るように気を付けてるとかはありますか?」 岩下さん「はい、私たちは成牛には特別に計算された配合飼料を提供し、牛の子には彼ら専用に配合された飼料を与えます。これには鉄分などの重要な栄養素も含まれています。また、昔、カリウム欠乏になった牛にリン与えた方がいいと獣医さんから言われ使っていた時期もありました。しかし、これは長続きせず、目に見える効果も確認できなかったため、現在は具合が悪い時は獣医の診察を頼りにしています。健康管理は常に進化していますね。」 ストレスフリーな放牧の秘訣
記者「牛がストレスを感じないようにするためにどのような工夫をしていますか?」
岩下さん「牛たちがストレスを感じないよう、私たちは環境の広さに特に気を使っています。狭い環境はストレスの大きな原因になるため、牛たちはほとんどの時間を広大な放牧場で過ごしています。餌は専用スタンチョンで与え、食べ終わると再び自由に放牧されます。このようにして牛たちは自然に近い環境で自由に過ごすことができます。」 記者「放牧によるメリットは何ですか?」 岩下さん「放牧には多くのメリットがあります。すべての牛を自然に近い環境で育てることで、敷料の交換手間が減少し、発情の発見も早くなります。育成ステージに関わらず、牛たちを自然環境で育てることで、彼らの健康が促進されるのです。」 記者「放牧におけるデメリットはありますか?」 岩下さん「放牧には確かにデメリットもあります。特に広い範囲での放牧では事故のリスクが増えます。私たちは目の届く範囲内で牛たちを見守りますが、範囲外では気づかない事故が起こる可能性があるため、常に警戒しています。」 記者「牛の成長に合わせた環境の変化について教えてください。」 岩下さん「牛の成長に合わせた環境の変化は例えば、早期離乳を行い、出産後約3日で牛舎に移し、75日間ミルクを与えた後、再び放牧します。早期離乳は病気の早期発見に役立ちます。親牛と一緒だと発見が遅れることがあるため、この方法を採用しています。」 365日の献身
記者「岩下さんの座右の銘は何ですか?」
岩下さん「私の座右の銘は「健康第一」です。畜産農家としての日々は、子牛の市場への出荷に向けた細心の管理が必要で、健康であることは必要不可欠です。いつでも作業の滞りがないよう様々な工夫を行いながら体を動かし臨機応変に行動し、絶え間ない努力が求められます。」 記者「プライベートな時間を作る工夫について教えてください。」 岩下さん「若い頃は親が管理していたので遊びに行く時間もありましたが、今では全て自分で管理する必要があります。そこでアルバイトを雇い、標準化された作業体制を整えることで、牛の管理を他人に任せられる環境を作りました。これにより、旅行や孫の顔を見に行くなどのプライベートな時間を持つことができます。」 記者「牛の管理において特に重要な点は何ですか?」 岩下さん「牛の管理では、時間通りの行動が極めて重要です。時間通りに餌をやることで牛のストレスを減らし、種付けなどの作業もスムーズに行えます。この規則正しい管理が、牛の健康と生産性の向上に直結しています。」 記者「牛舎の問題点やトマト栽培への転換についてはどうですか?」 岩下さん「牛舎の建設費用の高騰は大きな問題です。そのため、収益の安定化のためにトマト栽培を始めました。野菜の値段の変動や収益の不安定さを経験した後、トマト栽培は牛の飼育だけでは不十分な収入を補う重要な副業となっています。」 トマト
岩下さんの牧場は周囲の農家の間でも有名なトマトハウスを運営しています。
トマトは育てやすく収益も安定しやすいそうです。 牛飼い以外の様々なトライアンドエラーを繰り返し収益の安定を追求してきたとおっしゃっていました。
Writer_Y.Eguchi
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