宮﨑牧場
熊本県阿蘇郡 親牛:18頭、子牛:11頭 取材日:2023年8月25日
はじめに
健康は、人にとっても家畜にとっても、最も重要なテーマの一つです。では、健康を最優先にした畜産業はどのような姿をしているのでしょうか?その答えを探るために、今回は宮﨑牧場の宮﨑和成さんを取材しました。こちらでは、「健康第一」を一貫したテーマとして、動物たちの生活全体に落とし込んでいます。この記事では、その農家で「健康第一」という心を通して伺える3つのプライドについて紹介していきます。
柔軟な心、健康な家畜
ーー宮﨑さんの大事にされている「健康第一」についてどのようなことを意識されているか教えていただけますか?
健康第一は私たちの牧場の最も大切なテーマです。畜産業は環境や市場、そして動物自体の健康に非常に影響を受けるため、柔軟性が必要です。より良い意見を採用し、自分の考えに固執しないことが、実は最も大切な健康維持の一環だと私は考えています。獣医の山辺先生の指示にきちんと従うようにしていますし、最新の研究や他の成功している畜産農家からのアドバイスも積極的に取り入れます。 観察の力
ーー自分よがりの考えに固執せずに柔軟に正しいと思う情報を取り入れるということですね。実際に日々の仕事の中ではどのようなことを行っていますか?
早期離乳と日々の牛舎観察は、私たちの「健康第一」の方針において中心的な役割を果たしています。早期離乳を行うことで、1頭当たりのスペースを広くとることができます。牛のストレスの1つの要因としては1頭当たりのスペースの狭さが原因といわれています。それを広くする工夫をすることで牛たちの健康状態をよくすることができます。それに敷料の交換の頻度も下がります。親子で一緒にいると3日に1回のペースで交換する必要がありますが、親子を分けると7日~10日ほどに1回のペースになります。きれいな状態を長く保つことで牛たちにストレスを与えないような環境作りができるのです。また、ほかにも日々の牛舎観察を通じて、動物たちの微細な変化に気付くよう細心の注意を払うようにしています。例えば下痢をしているかはもちろん、動きの緩慢さ、餌の食べ具合、牛同士のいじめなど様々な面で日々気づきを持つよう心がけています。 未来の健康は強健性から
ーーそのほかに宮﨑さんならではのこだわりなどあれば教えていただけますか?
牛たちの強健性は、健康第一というコンセプトに欠かせない要素です。強健性とは、環境への適応能力のことであり、これが高いほど家畜はストレスに強く、病気になりにくいです。実は牛をセリで買ってくる際に良い血統で選んできたとしてもいざ牧場に迎えたら病気になりやすかったり、下痢をしたりと結構大変だったりします。そういう牛は強健性が低かったりすることが多いんです。買ってきた牛とは10年は付き合っていくので強健性が低いと環境に適応できずに死んでしまうことも起きてしまいます。ですのでセリで牛を選ぶ際の判断基準がとても大事になってきます。うちの牧場では「穏やかさ」を基準に選ぶようにしています。事故が起きた際には精神的ダメージも大きいので自分の牧場にあった牛を正しく選ぶということを心がけています。 編集後記
この取材を通じて、宮﨑さんの牧場で実践されている「健康第一」の理念の深さと具体性に驚かされました。柔軟な心で獣医の山辺先生の指示を積極的に取り入れたり、正しいと思う考えを柔軟に取り入れる姿勢など、「一人よがりにならない考え方」が印象的でした。また、セリで自分の牧場に迎え入れた後の飼育まで考えるなど、事故や病気で牛をなくしてしまった経験を糧に考えている姿もとても重要な教訓を与えていると感じました。
ビタコーゲン
食欲がない牛にこれを使って食欲の増進をしているそうです。ビタコーゲンを使うと食いが良くなってくれるので助かっているようです。
Writer_T.Shimomuro
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