伊口畜産 伊口重孝
鹿児島県大島郡和泊町 肉用牛:70頭 取材日:2021年7月14日
鹿児島県大島郡和泊町の『伊口畜産』。代表の伊口重孝さんは肉用牛繁殖経営を行う一方、人工授精師として周辺農家を回り、年間500頭の種付けを行っている。「まずは自分でやってみる」という言葉の通り、何事も積極的に取り入れ試行錯誤を繰り返すことで、洗練されたものだけが残る。伊口さんは少年のような笑顔で「おもしろいよね」と牛飼いについて語る。
①健康な母牛から、元気な子牛を産ませる哺乳期間の子牛は体調を崩しやすいので、特に手をかけて育てます。しかし、生まれてきたときから元気な子牛であれば、あまり手をかける必要はなく順調に成長するんです。そちらのほうが労力も経費も抑えることができる。そのためには母牛の健康管理が重要です。粗飼料を基本として、濃厚飼料や添加材は偶数日にのみ給与しています。 また、牛の胃の中にセンサー付きのカプセルを経口投与し、牛の体温や行動量を管理するシステムを導入しています。牛に異常があればスマートフォンに通知がくる。このような便利な機械を活用しつつ、自分の目で観察することは日々欠かしません。 ②購買者好みの牛を育てる鹿児島県内だけでも多くの市場があり、市場ごとに特色があります。沖永良部市場は二ヵ月に一度の開催、全国各地から購買者がやってきます。実は他市場と比較すると平均出荷体重は小さいんです。しかし、kg単価にすると3,000~4,000円の市場で、これは鹿児島県でトップだと思います。 沖永良部の牛は小さくても筋肉質のため、肥育農家が育てやすいそうです。繁殖農家の役割は肥育素牛の出荷までですが、出荷した牛はその後も肥育農家によって肥育されてます。つまり、肥育農家がどのような肥育素牛を求めているのかが重要です。肥育農家好みの牛をつくれば自然と高く売れるんです。 ③えらぶの牛飼い魂を継ぐ畜産業の後継者の育成は大きな問題です。和泊町では後継者育成のために小学生向けに畜産体験プログラムを行っており、魅力を伝えるため積極的に受け入れています。若い牛飼い、そして人工授精師に何かしら伝えていくことが自分の役割でもあると思います。 「○○さん(若い生産者さん)の牛、最近良くなってきている」と笑顔で語る伊口さん。沖永良部の牛飼いの繋がりの強さを感じました。
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安田畜産 安田光
鹿児島県大島郡知名町 肉用牛:70頭 取材日:2021年7月13日
農業大学卒業後、数年鹿児島で研修をするつもりだったという安田さん。しかし、ある日突然父親が他界し、家業の畜産農家を継ぐことに。初めは右も左も分からず、先輩農家さんに教えを乞い、試行錯誤を繰り返し、現在は平均して約10頭の和牛を競りに出すほどに。
今回は、そんな安田さんの成功の秘訣についてお話を伺いました。 ①沖永良部ならではの「つながり」20歳のころに父親が亡くなって、家を継ぐことになりました。小さいころからいつか継ぐだろうとは考えていましたが、予定よりもずっと早く継ぐことになったので、初めは何をしたらいいのか右も左も分からない状態でした。 いろいろな人に助けてもらって自分のことを考える余裕もなく、とにかく目の前のことに必死で取り組んで、やっと最近余裕が出てきました。自分がいろいろな先輩農家さんを訪ねて「教えてください」と言ったとき、教えてくれない人はいませんでした。えらぶの人たちには、島全体で良くしていこうという雰囲気があるのだと思います。 ②大きくなりやすい牛を育てる沖永良部市場は2か月に1回、自分は平均10頭、大体240日齢でセリに出しています。240日で出すのと260日で出すのだと短いほうが効率いいので、大きくなりやすい牛となるように人工授精も自分でやっています。学生の時に人工授精師の資格はとりましたが、大切なのは技術なので、これも沖永良部の先輩農家さんにお世話になって人工授精の技術を学びました。 また、生まれてすぐの子牛の体調が悪ければなかなか大きくならないので、餌も工夫し、下痢にならず、できるだけ早く大きくなるようなもの使うようにしています。 ③自分に合ったやり方を見つける家を継いでから最初の4、5年はいろいろやっているつもりだったけど、安値でしか売れなくてなかなかうまくいきませんでした。あの頃は本当にやめたかったですね。 自分でいろいろ試したり、育てるのか上手な人に教えてもらったりして、1つずつ試していくことで自分に合ったやり方を見つけていきました。牛の見た目や食いつきがよくなったといった感覚的なものですが、いろいろなものを使ってみています。そのなかの1つであるアソードもなんか合う気がすると思って使っていますね。 最後に
―――今後の目標はありますか? 悩みどころではありますが、親牛100頭を目指したいと思います!
Witer:市木 美帆
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