山戸牧場 大和将大
熊本県 阿蘇郡 親牛:50頭、子牛:30頭 取材日:2023年12月19日
自然循環型農業の躍進
記者「牛飼いを始めた理由は何ですか?」
山戸さん「私が牛飼いになったのは、自分の企業を立ち上げたいという強い志があったからです。家族が以前から赤牛を10頭ほど飼っていたことも影響しました。研修先で赤牛の飼育方法に感銘を受け、その効率的で賢い管理方法に憧れを抱いたんです。赤牛の魅力に取りつかれ、自分なりの方法で飼育に取り組むことを決意しました。」 記者「研修先で感銘を受けた赤牛の飼育方法について具体的に教えてください。」 山戸さん「研修先で見た赤牛の飼育方法は、まさに革新的でした。年間を通じて放牧を行い、種牛が子牛を産み、その子牛を育てるサイクルが驚くほど効率的。このサイクルにより、コストを抑えつつも、高い生産性を実現しているんです。自然のままに育てる素晴らしいシステムで、私もいつかこのやり方を実現していきたいと思っています。」 記者「牧場の現状と、今後の目標について教えてください。」 山戸さん「現在の牧場の状態は、私の理想にはまだ半分程度しか達していません。しかし、子牛の管理や個体管理に力を入れており、日々改善しています。目標は、放牧をメインにした自然な飼育方法で、牛たちをより健康的に育てること。山の草を食べて育つ牛を目指し、放牧の管理を徹底しています。」 記者「最近の農業技術やデータ管理の取り組みについて聞かせてください。」 山戸さん「近年、私たちは最新の農業技術を取り入れています。特に、牛の行動や体調を24時間監視する機械を導入しました。この機械により、牛の健康状態をリアルタイムで把握でき、早期治療が可能になっています。さらに、牛の便の状態を毎日確認し、健康管理を徹底しています。これらの技術により、牛たちの健康が以前よりも大幅に改善しています。」 寒風を越え、健康を育む
記者「最近、牛の体調に関して困っていることはありますか?また、どのような対策を講じていますか?」
山戸さん「最近は、牛の便の状態に特に注意を払っています。便の状態は牛の健康を反映する重要な指標で、下痢などの問題があると、牛の体重増加に影響します。対策として、配合飼料の量を調整していますが、便の状態を良く保つことはなかなか難しい課題です。この問題を解決するために、飼料の質や量をさらに細かく調整し、牛の健康管理を徹底しています。」 記者「競りでの成績はどうですか?牛の販売価格について教えてください。」 山戸さん「競りでの成績は平均的ですが、まだ理想には達していません。最近の競りでは、48万円から55万円の間で牛を販売していますが、品評会で上位に入るほどの牛を育てるのは難しい状況です。私たちは、より良い成績を目指して、牛の飼育方法を改善し続けています。より高い品質の牛を育て、競りでの価格をさらに上げることが今後の目標です。」 記者「牛の健康管理で特に重視している点は何ですか?」 山戸さん「牛の健康管理で最も重視しているのは、生後初期の管理です。生まれたばかりの子牛は非常に弱く、最初の1週間が非常に重要です。哺乳期間の3ヶ月も大切にしており、この期間中に健康的な成長を促進します。初期の管理を適切に行うことで、風邪を引きにくい丈夫な牛を育てることが目標です。基礎代謝が高く、強い体質の牛を育てることに重点を置いています。」 記者「冬の阿蘇は特別冷え込む印象があるのですが、地域の気候は牛の健康にどのような影響を与えていますか?」 山戸さん「当地域の冬の寒さは牛にとっては厳しい環境ですが、風を遮断し、適切な温度管理を行うことで、牛が寒さに強い体質を持つようにしています。ヒーターを使う期間を限定し、自然な環境で牛を育てることにより、丈夫で健康的な牛を育成しています。寒さに慣れさせることで、牛の生存能力を高めることを目指しています。」 初心と徹底の牧場:新世代牛飼いの挑戦
記者「牛飼いとしての師匠や、影響を受けた方について教えてください。」
山戸さん「最初の師匠は東海大学の今川先生で、研究室での指導教員でした。大学の先生はどちらかというと生徒に寄り添うイメージではないのですが、今川先生は一人ひとりに向き合って真剣に話を聞いてくれる尊敬できるような先生でした。今川先生が赤牛飼育の道を教えてくれ、研修先を紹介してくださいました。研修では、中川さんに多くを学びました。彼はアメリカで研究されていた方で、その大規模な農業のアプローチに驚きました。日本の常識とは異なる視点を得て、牛飼いとしての目標を新たに定めることができました。」 記者「新規参入者に向けたアドバイスはありますか?」 山戸さん「新規参入者へのアドバイスとしては、理論と実践は大きく異なるということです。どれだけ勉強しても、現場の状況は常に変わります。最初の数年は特に苦労しますが、経験を積むことが重要です。理論だけではなく、自分の牧場に合った方法を見つけることが大切です。また、経済的な挑戦も多いですが、それを乗り越えた時に大きな成果が得られます。」 記者「座右の銘や、心に留めている言葉があれば教えてください。」 山戸さん「私の座右の銘は「初心忘るべからず」です。どんなに時が経っても、初心を大切にすることが重要です。また、日々の仕事において「凡事徹底」を心掛けています。どんな小さなことでも徹底的に行うことが、結果につながると信じています。初めての気持ちを忘れず、細かいことにもこだわりを持って、日々の牧場経営に取り組んでいます。」 アソード
周辺の農家が使っていて以前から興味があったそうです。
下痢対策と、鉄分などの微量要素を十分補給し基礎代謝を高めることを目的に使用しています。
Writer_Y.Eguchi
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北里牧場 北里孝博
熊本県 阿蘇市 親牛:30頭、子牛:22頭 取材日:2023年12月18日
土と汗の中で育む命
記者「北里さんの牛の育て方の工夫やこだわりについて教えてください。」
北里さん「ええ、私たちの育て方には確かに特別な工夫があります。一番大事なのは、餌の与え方ですね。うちでは、子牛を親に付けていて母乳で育てるんですが、母乳の栄養は時間が経つとどんどんなくなっていくんですよね。ということは栄養の摂取は餌からになってきます。小さな頃からしっかりと餌を食べさせ、早期に栄養をたっぷりと摂取させます。これによって、牛たちは健康的に、そして迅速に成長します。早めに餌を与え始めれば乳離れも抵抗がないように感じています。」 記者「その餌を与えるタイミングや方法についてもう少し詳しく教えていただけますか?」 北里さん「親付けで飼育する農家では通常は3ヶ月くらい親に付けるのですが、うちでは生後70日程度で親から離し餌を与えます。その切り替えがうまくいくように生後20日くらいから昼だけ親から離したりして親離れの抵抗をなくしています。うちではこのやり方は牛たちの成長を加速させる秘訣の一つですね。また、天候や季節の変化に敏感になり早期発見することで、牛たちが健康を保つよう細心の注意を払っています。」 記者「では、北里さんの牧場に点数をつけるとしたら、どのように評価しますか?」 北里さん「正直に言えば50点くらいでしょうか。理由としては、牛たちが健康に成長しているという点で高評価です。しかし、育成の過程で常に完璧とは言えません。全ての牛が期待通りに成長するわけではないので、そこにはまだ改善の余地があります。オスとメスの牛それぞれに合わせた最適な飼育方法を模索しており、より良い結果を目指して努力を続けています。」 記者「さらなる改善のために現在取り組んでいることはありますか?」 北里さん「確かに改善のために色々と試行錯誤しています。最近では、さまざまな添加剤を使って牛の健康と成長を促進しています。ただし、添加剤の使用は慎重に行い、牛の健康にとって最適なものを選ぶよう心がけています。さらに、飼育方法の改善や環境の調整も継続しており、牛たちの成長をより良い方向に導くためには何が必要か、常に考えています。牛たちの成長を80%、90%向上させるためには、継続的な改善と試みが不可欠なのです。」" 試行錯誤の中の成長と発見
記者「牛の調子に関して困っていることはありますか?」
北里さん「そうですね、最近は発情の出にくさと受胎率の低下に頭を悩ませています。これにはいくつかの要因が考えられるんです。例えば、餌の与え方や気候の変化が影響している可能性があります。牛の健康状態や外部要因なども影響しているかもしれません。この問題を解決するために、牛の飼育環境を見直したりと、さまざまな試みをしています。」 記者「牧場を運営する上で、特に影響を受けたり、参考にしている人はいますか?」 北里さん「今はもう牛飼いを辞めた方なんですが中村さんという方がいます。彼は牛のことを非常によく理解していて、話し始めると止まらないほどです。彼からは多くを学びました。特に重要なのは、先行投資の大切さです。彼は新しい飼育方法や技術に積極的に投資してきました。その結果、牛の飼育技術が向上し、牧場の収益にも大きく貢献しています。彼の経験や知識は、私たち牧場経営にとって非常に貴重なものです。」 記者「北里さんが中村さんから学んで先行投資を行ったことなど教えてください。」 北里さん「特に重視しているのは、牛の健康管理です。例えば、様々なワクチンの投与を行って病気の予防をしたり、餌を変えて牛の調子の向上にもなりました。これらの投資は、牛の健康を維持し、生産性を向上させるために非常に重要です。中村さんの助言に従って、これらの分野に投資を行うことで、牧場の全体的なパフォーマンスが向上しました。」 「一日一歩」の力
記者「新規に牛の飼育を始める方々に向けて、何かメッセージはありますか?」
北里さん「牛の飼育を始める方には、まず牛や仕事が好きであることが重要だと思います。牛に対する情熱も大切ですが、毎日の作業にも熱意を持つことが成功の鍵です。毎日の仕事を続けることは容易ではありませんが、その中で感じる達成感や喜びを見つけることが重要です。牛に対する愛情と仕事に対する情熱があれば、困難を乗り越えていけるでしょう。」 記者「牛の飼育における楽しい部分はどのようなところですか?」 北里さん「牛の飼育においては、楽しいというよりも、感動と達成感が大きな要素です。例えば、牛が生まれたときの感動や、一日の作業が無事に終わったときの達成感は特別です。日々の作業を終えた後、家族と過ごす時間や風呂に入ってビールを飲むような日常の小さな幸せも、私にとっては大切な楽しみの一つです。このような日々の小さな喜びが、長い間仕事を続ける原動力になっています。」 記者「座右の銘や、牧場経営における哲学について教えてください。」 北里さん「私の座右の銘は「一日一歩」です。毎日少しずつでも前進することが大切だと思っています。若い頃は多くのことを同時に進められますが、年を重ねると無理はできなくなります。毎日コツコツと一歩ずつ進むことで、長期的な成功を築くことができると信じています。この座右の銘は、牛の飼育においても、そして日々の生活においても私の指針となっています。」 アソード
以前下痢に困っている際にアソードを使って下痢をしなくなったそうです。
引き続き与えることで牛の改善に努めたいと話していました。
Writer_Y.Eguchi
松岡農場 松岡隆行
熊本県 阿蘇郡 肥育牛:40頭、親牛:38頭、子牛:22頭 取材日:2023年12月11日
60点からの成長と再生
記者「農場での飼育において、自己評価を点数で表すとしたら何点ですか?」
松岡さん「農場の管理について、点数をつけるなら60点くらいですかね。去年に比べると、事故も大幅に減り、改善の兆しが見えていますからね。」 記者「その60点評価の背景には、どのような理由があり、どんな対策を行っていますか?」 松岡さん「実は昨年、私たちの牧場では事故が多発し、残念ながら多くの牛を失いました。事故の原因は子牛のひどい下痢でした。その原因の特定と対策が重要な課題となっています。それ以降、監視の強化や環境改善など、様々な対策を講じています。それもあってか、今年に入ってからは大幅に減少し、その改善が60点の理由の一つです。下痢が減った具体的な原因はまだ完全には把握できていません。ですので、その追及もしつつ安全に子牛が育つ環境作りに努めたいと思っています。」 牧場の知恵と協力の力
記者「松岡さんが参考にしている牧場とその理由について教えてください。」
松岡さん「高森町の荒牧さんの牛の育て方は私も参考にしています。彼の牛は肉も大きく、サシもしっかり入っています。彼の餌のやり方や月齢ごとの育成計画など、実際に私の牧場でも取り入れている部分が多くあります。」 記者「繁殖に関して、参考にしている方はいますか?」 松岡さん「はい、繁殖に関してはこの近くの林田さんや今村さんから多くを学んでいます。特に病気の予防方法やどんな薬を使っているのかなどについては、彼らのアドバイスが非常に役立っています。昨年病気が多かった時期はレバチオというビタミン剤を教えていただいて、それを試して改善されたということがありました。」 記者「新規就農者に向けたアドバイスはありますか?」 松岡さん「新規就農者には、周囲の人たちと協力し、経験を積むことが大切だと思います。私も最初は多くの困難に直面しましたが、先輩農家からのアドバイスや支援が大きな助けになりました。教科書や専門書も役立ちますが、実際の経験を積むことが最も重要です。」 牛舎の光:地震からの再生と成長
記者「松岡さんの牛舎は一目見てきれいに掃除されているなと感じたのですが、清潔を保つポイントは何ですか?」
松岡さん「うちの牛舎が清潔かどうかはあまり意識したことがなかったのですが、牛にストレスを与えたくないって気持ちは強いですね。やっぱり一番臭いの被害を受けるのは牛ですし、清潔な環境で育ててあげたいと思っています。」 記者「家族経営の牛舎を継ぐことにしたきっかけは何ですか?」 松岡さん「実は地震で以前の牛舎が損傷を受けた時、その再建を機に経営を継ぐことを決意しました。私は以前から週末に牛舎を手伝っており、牛に手をかけることでその成長を感じることができ、非常にやりがいを感じていました。その経験が私が牛舎を継ぐ決意を固める大きな要因となりました。」 記者「畜産業におけるやりがいについて、具体的なエピソードがあれば教えてください。」 松岡さん「畜産業のやりがいは、育てた牛が健康的に成長し、良質な肉質を得られることにあります。具体的には、私が手をかけた牛が大きく成長し、良い枝肉となることを見る時に喜びを感じますね。自分がやったことがきっかけで良くなって、またトラブルが起きて、原因を探って改善して。そんな風に色々考えながら行動して改善していくっていうところに牛飼いの面白さがあるんだと思います。」 アソード
下痢をしている牛の与えたところ糞の締まりが良くなり、牛の調子もよくなったそうです。
現在は全頭に展開し与えているそうです。
Writer_Y.Eguchi
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